2013 Fiscal Year Research-status Report
胃癌腹膜播種性転移に対するドラッグデリバリーシステムの開発
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24591941
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小濱 和貴 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (50322649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 義治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60273455)
田畑 泰彦 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (50211371)
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / ゼラチン / 徐放剤 |
Research Abstract |
本研究は、抗癌剤腹腔内投与におけるdrug delivery systemの開発を主な目的としている。3年間の予定で計画が立てられ、最終的には臨床応用へ向けた製剤の最適化を目標としている。Drug delivery systemの開発にかかわる基礎実験・実験デザインおよび結果の解析・解釈は、研究分担者である京都大学再生医科学研究所教授1人(田畑)と京都大学消化管外科教授1人(坂井)および大学院生1人(郡司周太郎)と協力して行った。平成24年度の本研究では、抗癌剤腹腔内投与におけるDrug delivery systemの開発にかかわる基礎実験の実施にあたり、『gelatin microsphere-CDDP (GM-CDDP)』を作製し、その最適化を行った。さらにマウスを用いた腹腔内投与実験でその薬物動態を検討し、その徐放性を確認した。また、腎臓組織での抗がん剤濃度が低い点、低い血中濃度と高い局所濃度が得られる点、などの有用性を確認した。動物モデルとしてマウス大腸がん細胞株を用いた腹膜播種モデルの作製も24年度中に終了した。 今年度は、マウスの腹膜播種モデルを用いてgelatin microsphere(GM)に膨潤させた抗癌剤の効果を検討した。具体的には、GM-CDDPおよびfree-CDDPを実験動物に投与し、抗腫瘍効果(マウス腹腔内腫瘍重量の変化)や有害事象の程度(血液検査による腎機能障害や骨髄抑制の評価)を比較した。その結果、我々が作製・最適化したgelatin microsphereの担体を用いたGM-CDDPは、free-CDDPと比較して抗腫瘍効果に遜色がなかった。さらにGM-CDDPの方がfree-CDDPよりも腎機能障害が少なく、体重減少の改善効果も確認でき、有害事象の低減につながることが示された。 上記の成果を米国の外科系医学雑誌“Surgery”に投稿し、original articleとして掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度達成できた点は、おもに以下の2点である。①Gelatin microsphere (GM)を担体とするCDDPの徐放剤を用いて、腹膜播種モデルに投与し、抗腫瘍効果がfree CDDPと遜色ないことを確認した。②腎機能低下や体重減少といった、CDDP投与による有害事象を軽減し、この徐放剤の有用性を確認できた。 当該研究の助成金交付申請書に述べられた「研究の目的」を、3年間で達成するという観点からみれば、おおむね順調に経過していると考えている。ただ、これまで大腸癌細胞を用いた実験が主であったので、今後は胃癌やそのほかの癌腫に対する実験も必要であろうと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はこれまでに、DDSとしてのGM-CDDP(徐放剤)を作製し、そのマウスにおける薬物動態も検討して、製剤としての最適化を行った。また、マウスモデルを作製し、それを使って詳細な抗腫瘍効果・有害事象軽減効果を検討して、その有用性を動物実験レベルで確認した。 今後の方策としては、①胃癌や他の癌腫で同様の効果が得られるのか、評価する ②大腸がんや胃癌などで標準治療が無効であった腹膜播種患者に対する(第1・2相)臨床試験の実施に向けて、この担体や徐放剤の安全性をさらに検討していく ③より腫瘍選択性の高いActive targetingを検討する、などを今後の研究課題として、研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
GM-CDDPを用いて、腹膜播種モデルマウスに対する抗腫瘍効果と有害事象軽減効果を検討するにあたり、実験動物の購入・管理、試薬や薬剤の購入に関して効率的な運用を図ったことで、当初予定よりも使用した額を抑えることができた。そのため上記の次年度使用額をして、平成26年度に予定している研究・実験に対して使用することとした。 今後も引き続き、マウスを用いた抗腫瘍効果の実験ならびに有害事象・安全性に関する詳細な検証実験が必要である。そのための動物購入費や飼育費、プラチナ血中濃度の測定費などが、引き続いて必要である。また、GM以外に有望な担体がないかどうか検討したり、癌特異的抗原や受容体に対する抗体を用いて新たな製剤を作製したりしていく必要がある。そのための薬剤費なども必要である。これらは、「次年度使用額」を含めて、翌年度以降に請求する研究費と合わせて研究を遂行していく必要がある。
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