2013 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌における合成レチノイドの核内レセプター制御による分化誘導作用の解明
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24591987
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
中山 善文 産業医科大学, 医学部, 准教授 (50279337)
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Keywords | 合成レチノイド / TAC-101 / ATRA / Am80 / 核内レセプター / 大腸癌 |
Research Abstract |
TAC-101、ATRA、Am80投与によって、大腸癌細胞における核内レセプターを含めた分化誘導関連遺伝子などがどのように変化するかをマイクロアレイ法で解析した。大腸癌細胞株DLD-1の遺伝子変化が期待できる72時間暴露での最適濃度は、TAC-101が10μM、ATRAが10μM、Am80が1μMであった。これらの濃度で各薬剤の72時間暴露を行いtotal RNAを抽出した。マイクロアレイ解析はヒト全遺伝子型DNAチップ(ヒト25k ver 2.10)を用いた2色法で、Dye-Swapを行った。RNA サンプルの品質チェックも問題なし。約25000の遺伝子を網羅的に検討し、Log2Ratio≧1.0またはLog2Ratio≦-1.0の変化を示したものを抽出した。 TAC-101群で増加したものは35個、減少したものは11個であった。ATRA群で増加したものは58個、減少したものは、41個であった。Am80群で増加したものは40個、減少したものは4個であった。核内レセプター226個の中で、TAC-101群とATRA群ともにNR6A1のみが増加し、Am80群ではTAF4Bのみが増加していた。 TAC-101群とATRA群で大きく増加した遺伝子58個について増加した遺伝子において、共通遺伝子が31個あり、TAC-101特異的遺伝子が4個、ATRA特異的遺伝子が27個という結果であった。また、TAC-101群とATRA群で大きく減少した遺伝子41個において、共通遺伝子が4個あり、TAC-101特異的遺伝子が6個、ATRA特異的遺伝子が37個であった。TAC-101群とAm80群で共通して増加した遺伝子は23個あり、TAC-101特異的遺伝子が12個、Am80特異的遺伝子が17個であった。また、共通して減少した遺伝子は2個あり、TAC-101特異的遺伝子が8個、Am80特異的遺伝子が2個であった。 TAC-101、ATRA、Am80のマイクロアレイ解析の比較の結果、共通して変化した遺伝子と特異的に変化した遺伝子が存在することから、共通の作用メカニズムと特異的な作用メカニズムが存在する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合成レチノイドのTAC-101、ATRA、AM80投与によって、大腸癌細胞における核内レセプターを含めた分化誘導関連遺伝子などがどのように変化するかをマイクロアレイ法で解析するための濃度決定と時間決定の準備が滞りなくできた。 DLD-1細胞にTAC-101が10μM、ATRAが10μM、ATM80が1μMで72時間暴露を行いtotal RNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析はヒト全遺伝子型DNAチップ(ヒト25k ver 2.10)を用いた2色法で、Dye-Swapを行った。約25000の遺伝子を網羅的に検討し、Log2Ratio≧1.0またはLog2Ratio≦-1.0の変化を示したものを抽出した。TAC-101群で増加したものは35個、減少したものは11個であった。ATRA群で増加したものは58個、減少したものは、41個であった。Am80群で増加したものは40個、減少したものは4個であった。核内レセプター226個の中で、TAC-101群とATRA群ともにNR6A1のみが増加し、Am80群ではTAF4Bのみが増加していた。核内レセプター226個の中で、TAC-101群とATRA群ともにNR6A1 (Nuclear receptor subfamily 6 group A member 1) (Germ cell nuclear factor)(GCNF)(hGCNF)(Retinoid receptor-related testis-specific receptor)(RTR)(hRTR)のみが増加し、Am80群ではTAF4B (Transcription initiation factor TFIID subunit 4B)のみが増加していた。 マイクロアレイ解析で以上の結果を得たことは有意義なことであり、本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
TAC -101、ATRA、Am80投与によって変化した遺伝子の詳細を文献的に調べ、これらの薬剤による制癌作用に関連している因子を絞り込んでいく。関連している分野としては細胞増殖制御、血管新生制御、分化誘導関連、核内レセプター関連、接着分子関連など、多くの遺伝子があるが、薬剤の特性から考えて、特に、分化誘導関連、核内レセプター関連、細胞増殖制御について絞り込んでいく予定です。これらの検討から絞り込んだ因子について、大腸癌の切除標本で免疫染色する予定です。また、TAC-101を投与し、ラットの肝転移抑制実験によって得られた肝転移巣とラット発癌抑制実験によって得られた大腸に対しても、免疫染色を行っていく。これらを行うことにより、マイクロアレイ解析から判ったTAC-101投与によって変化した遺伝子が、vivoにおいてどのように蛋白レベルで変化したかを調べていく。特に、TAC-101に特異的に変化した遺伝子の中で、細胞増殖関連遺伝子のPPAR-g、接着分子関連遺伝子のSIAE、時計遺伝のDEC1、接着分子関連遺伝子のSIAE、核内レセプター関連遺伝子のRPRD2、NPIP1、NR6A1などについて調べていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マイクロアレイ解析の結果の解析に時間がかかり、vivoでの実験の準備に時間がかかったため。 TAC-101、ATRA、Am80投与によって変化した遺伝子の詳細を文献的に調べ、これらの薬剤による制癌作用に関連している因子を絞り込んでいく。薬剤の特性から考えて、特に、分化誘導関連、核内レセプター関連、細胞増殖制御について絞り込んでいく。 我々が作製したラット大腸癌肝転移モデルにおいて、TAC-101投与により肝転移が抑制されることが示されており、マイクロアレイ解析によって抽出された遺伝子の抗体を使用し、TAC-101投与群と非投与群における肝転移巣および肝臓の免疫染色を行う予定です。同様に、我々が作製したラット大腸発癌モデルにおいて、TAC-101投与により大腸発癌が抑制されることが示されており、マイクロアレイ解析によって抽出された遺伝子の抗体を使用し、TAC-101投与群と非投与群における肝転移巣および肝臓の免疫染色を行う予定です。
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Research Products
(1 results)