2012 Fiscal Year Research-status Report
胆道炎症によるIL-6/TGF-βクロストークから癌と周囲環境に与える変化
Project/Area Number |
24592024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 省吾 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30452436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 浩志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00572554)
永野 浩昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10294050)
丸橋 繁 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (20362725)
川本 弘一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30432470)
江口 英利 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90542118)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 胆道癌 / IL-6 / TGF-beta / 化学療法抵抗性 / 上皮間葉系転換 |
Research Abstract |
数ある悪性腫瘍のなかでも、胆道癌は治療中に常に胆道炎症を伴うことを特徴としている。本研究では胆道癌における臨床的特徴を解析するとともに、炎症に伴う癌細胞および周囲環境の形質変化を検討することを目的とした。最終年度に実施した研究の具体的内容としては、胆道癌に作用する代表的な炎症性サイトカインであるIL-6とTGF-betaに着目し、この2分子の相互作用ならびに癌細胞の形質転換に関する検討を行った。研究者らは、この2分子の相互作用の検討からIL-6/TGF-betaクロストークを証明するとともに、化学療法抵抗性と上皮間葉系転換に着目し、IL-6/TGF-betaクロストークとの関連性を検討した。さらに、胆道癌における進展形式と化学療法に関する研究を通じて、癌先進部や転移巣における上記2分子の発現ならびに上皮間葉系転換に関して検討した。その結果、胆道癌細胞株におけるIL-6/TGF-betaクロストークが化学療法抵抗性や上皮間葉系転換を誘導し、癌先進部や転移巣で再現されていることを明らかにした。本研究の意義は、胆道炎症が癌細胞に与える影響の一つとして、化学療法抵抗性を考慮すべきであることを明らかにしたことであり、胆道癌の治療経過中における胆道炎症コントロールがいかに重要な意味を持つかを明らかにしたことにある。本研究結果は、胆道癌における治療法の方向性を決定する上で、重要性を持つと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究の主要仮説であるIL-6/TGF-betaクロストークを証明し、化学療法抵抗性と上皮間葉系転換との関連性を示した。今後はメカニズム解析と癌周囲環境への影響に関して研究を進める必要があるが、次年度でメカニズム解析に関する研究を達成可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、メカニズム解析と治療への応用の可能性の検討を中心に研究を遂行する。本年度は研究の主要仮説であるIL-6/TGF-betaクロストークを証明し、化学療法抵抗性と上皮間葉系転換に影響することを明らかにした。今後は、他の癌の形質であるアポトーシス、転移浸潤能、癌幹細胞化への影響を検討するとともに、両分子以下の既知のシグナル経路を参考に、上記の癌悪性化につながる形質を誘導する経路を解明する。その際に、既知のシグナル経路に加えて、ヒストン/転写因子/non-cordingRNA系に関する検討も開始する。 合わせて、癌周囲環境への影響に関しても、Preliminaryな研究を開始する。現時点における癌周囲環境としてはCancer associated fibroblast (CAF)が有名であるが、胆道癌における上記クロストークは炎症を主体としているため、炎症性疾患で認められるTreg/Th17バランスにも影響すると考えられる。分化誘導、細胞培養のほか、切除標本などを用いて、その影響とメカニズムを明らかにする。 胆道炎症は現時点では治療経過中不可避の現象であるため、本研究の最終目的は、メカニズムを明らかにすることによる治療への応用の可能性を検討することである。上記メカニズムの解明が終了次第、治療への応用の可能性の検討を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度では、IL-6/TGF-betaクロストークを証明し、IL-6, TGF-betaを作用させた場合の化学療法抵抗性と上皮間葉系転換への影響を明らかにしたため、研究計画のうち、以下のものを次年度に行う予定である。 【転移浸潤能/アポトーシスへの影響の検討】IL-6, TGF-betaを作用させた場合の転移浸潤能、アポトーシスへの影響を検討する。【転移浸潤能/アポトーシス/薬剤感受性/上皮間葉系転換のシグナル伝達経路の解明】 また、シグナル伝達経路を解明するために、IL-6, TGF-betaの下流であるSTAT, Akt, MAPK, smadに関してInhibition assayを行う。該当する阻害剤はCommercialなものを使用し、siRNAを利用したInhibitionで確認する。 【癌幹細胞化への影響と、ヒストン/転写因子/non-cordingRNA系への作用】Flow cytometryでCD133分画、SP分画の変化、転写因子としてsnail, nanog, OCT4の発現、non-cording RNAとしてlincRNA-RoR, miRNA-302, 369の発現を、ヒストン制御として、JMJD1A, JARID2に関して検討する。このうち、miRNA-302, 369の発現が幹細胞に重要であることは、当教室から報告された(Miyoshi N, et al. Cell Stem Cell 2011)。また、上記シグナルはいずれもヒストン制御蛋白に影響を与えるとこから、ヒストン/転写因子/non-cordingRNA系の鍵となることも容易に想定されるため、上記シグナル制御も適宜行う。
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