2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト膵癌幹細胞と微小環境の相互作用機構の解明に関する研究
Project/Area Number |
24592025
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
堀 裕一 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (80248004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 一也 神戸大学, 保健学研究科, 研究員 (50335353)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / 膵臓癌 |
Research Abstract |
膵癌はわが国で癌死亡率の第5位にあり、早期診断が困難で極めて予後不良の疾患で、発見時には多くの症例で遠隔転移や癌性胸腹膜炎を伴っている。「21世紀に残された難治性癌」とも呼ばれる。既存の抗がん剤にも反応するが、長期投与により抵抗性を獲得するため、新規治療法の開発は喫緊の課題である。本研究の全体構想は膵癌幹細胞とその微小環境を標的とした新規治療法の開発を目指すことである。われわれはこれまで、マウス正常膵臓組織細胞やヒト膵癌組織内の一部の細胞が汎幹細胞マーカー(CD133)を発現していることを明らかにした(Hori et al. Stem Cells, 2008)(Shimizu et al. Pancreas, 2009)(Hashimoto et al. Pathobiology, 2011)。さらに、既存の抗がん剤に対して耐性を示した進行膵癌患者から20種類のCD133陽性膵癌幹細胞株の樹立にも成功している(投稿中)。本研究ではわれわれが樹立した初代膵癌幹細胞株を用いて、ニッチと考えられる間質細胞(マウス由来細胞あるいは膵癌患者由来細胞)との相互作用に着目した培養系を確立し、癌幹細胞の増殖機構や転移能獲得機構を分子レベルで明らかにし、癌幹細胞を標的とする新規治療法の開発をめざす。具体的には間質細胞とCD133陽性膵癌幹細胞の接着が、(1)癌幹細胞の細胞周期をどのように調節するのか、(2)ニッチの構成細胞は癌幹細胞により、どのような作用を受けてニッチを形成するのかを、分子レベルで解明する予定である。さらに、この結果をもとに、ヒト膵癌患者由来feeder細胞の樹立にも着手し、癌患者自身の生体内で起こる微小環境を再構築し、創薬につなげたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. CD133陽性膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により発現調節をうける因子の同定 マウスのstroma細胞やヒトの間葉細胞との共培養により、樹立したCD133陽性膵癌幹細胞株は膵管状腺癌に類似したコロニーを形成することを確認した(CD133陽性腺管の形成、粘液産生能、コロニー内の不均一性など)。また、予備実験の結果、膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により基底膜の主成分であるラミニンの発現誘導を遺伝子発現や蛋白発現で確認している。 2. CD133陽性膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により分泌される増殖因子の同定 CD133陽性膵癌幹細胞株とマウスstroma細胞あるいはヒト間葉細胞との共培養により培養液中に膵癌幹細胞株を増殖させる因子が分泌されることを認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から、今後の研究推進方策として、 1. CD133陽性膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により発現調節をうける因子の同定 われわれが樹立した膵癌幹細胞株は、in vitroやin vivoにおいて依然として抗がん剤に対する反応を呈することが明らかになっている。抗がん剤投与により変化する遺伝子を網羅的に解析するため、DNA chipをおこなう。その結果、同定された因子について、免疫染色、RT-PCR、in situ hybridizationにより、発現を確認する。 2. CD133陽性膵癌幹細胞株とfeeder細胞の接着により分泌される増殖因子の同定 培養により得られた培養液内の分泌因子を同定するため、ELISA法により、同定する。候補因子が明らかになれば、免疫染色やウェスタンブロット法により確認する。また、中和抗体やshRNA導入によって阻害効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)