2012 Fiscal Year Research-status Report
包括的SNPアレイ解析と遺伝子発現プロファイルの統合から導いた新規膵癌治療戦略
Project/Area Number |
24592037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
廣野 誠子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60468288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
谷 眞至 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60236677)
川井 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40398459)
岡田 健一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (50407988)
宮澤 基樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (90549734)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 膵臓外科 / 網羅的遺伝子解析 |
Research Abstract |
研究の目的;膵癌は予後不良な癌腫のひとつで、その原因として早期から浸潤・転移を生じることが挙げられる。したがって、膵癌の治療戦略には早期発見法と新規膵癌治療の開発が必須であり、これまで膵癌の発癌および転移に関与する遺伝子群の研究が多くされてきたが、未だ膵癌新規治療として臨床応用できる遺伝子群の同定はほとんどない。そこで本研究は、膵癌切除凍結サンプルを用いて、包括的DNA1次構造異常解析と網羅的遺伝子発現解析を統合し、DNA構造異常により発現異常が生じる遺伝子群、すなわち真の癌遺伝子と癌抑制遺伝子を同定し、膵癌の早期診断法につながる分子マーカーと新規膵癌治療の標的分子の開発を目的とする。 平成24年度に研究実施した内容;当教室で切除した凍結膵癌組織を用いて、9μmに博切し、ヘマトキシリン染色をした後、マイクロダイセクションにて膵癌細胞を選択的に回収した。膵癌細胞から、AllPrep DNA/RNA Micro Kit (QIAGEN社)を用いてDNAとRNAを同時に抽出した。DNA解析のコントロールには各患者の血液サンプルから正常DNAを用いた。 膵癌における包括的DNA1次構造異常解析(SNP array解析):抽出した膵癌細胞および同個体の血液のDNAそれぞれ500ngを、GeneChip Mapping Array 100K (Affymetrix社)を用いてGeneChip mapping assayを行った。GeneChip Operating software (GCOS)とCopy number analysis for Affymetrix GeneChip Mapping Array Softwareを用いて膵癌特異的なAllele typeとsignal intensityを解析した。これまで10サンプルの膵癌組織の解析が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、最も時間と労力を費やす実験は、膵癌凍結組織の薄切および膵癌細胞のみを回収する作業である。これまで10サンプルの膵癌のマイクロダイセクションが終了している。また本研究では、DNAおよびRNAの網羅的遺伝子解析を行う予定であるが、両実験とも精密な操作が必要で、またQualityの高いRNAおよびDNAを用いる必要がある。これまで回収し、抽出した膵癌細胞のDNAおよびRNAは、Bioanalyzerによりその質をチェックしたが、非常に良好なQualityであった。さらに、平成24年度には、これらのDNAを用いてSNP assayを行い、膵癌特異的なDNA一次構造異常を解析できた。現時点で10サンプルの解析が終了できた。 平成25年度には、さらに10サンプルの膵癌凍結組織の薄切とマイクロダイセクションを行い、続いてRNAを用いて網羅的遺伝子発現解析を施行予定である。本研究で最も時間と労力を費やす、薄切とマイクロダイセクションの作業が終了すれば、残り実験にはそれほど時間を有さないので、平成25年度にこの作業が終了すれば、本研究を完遂できると判断している。 平成24年度には10サンプル、すなわち半分のサンプルの膵癌組織の薄切およびマイクロダイセクションが終了しており、さらにSNP assayに関しても10サンプル終了し、有力なデータを取得できており、これまでの進行具合はまずまずであると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には残り10サンプルの膵癌凍結組織を薄切し、マイクロダイセクションにて膵癌細胞のみを特異的に回収する。回収した膵癌細胞のRNAとDNAを、AllPrep DNA/RNA Micro Kit (QIAGEN社)を用いて同時に抽出し、網羅的遺伝子解析に用いる。現在、包括的膵癌DNA一次構造異常解析を目的とした、GeneChip Mapping Array (Affymetrix社)を用いたSNP assayはサンプル終了しており、残りの10サンプルにおいても本年度に行う予定である。さらに、膵癌細胞のRNAを用いた、10GeneChip Human U133 plus 2.0 array(Affymetrix社)を用いた遺伝子発現プロファイルにおいては、これら20サンプルのうち可能な限り行う予定である。 平成26年度には、膵癌組織20サンプルの網羅的遺伝子発現解析を終了し、これらのDNA一次構造異常解析とRNA発現プロファイルの解析を行う。膨大なデータの習得が洋装され、解析には時間を要することが予想され、さらに膵癌に特異的な遺伝子の同定および、臨床応用可能な遺伝子の絞り込みには、多くの文献を参照する必要がある。 上記のように同定した遺伝子群に対しては、当教室でこれまで切除した膵癌のパラフィン切片を用いて免疫染色解析によるタンパク発現解析を行い、同定した遺伝子群と膵癌の病理学的な関係や予後との関係を解析する予定である。免疫染色に関しは150サンプルを予定しており、生存期間のみならず、ジェムザールなどの化学療法の感受性などの臨床情報と併わせて解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
膵癌包括的DNA構造異常解析には、GeneChip Mapping Array (Affymetrix社)を用いるが、1検体のアレイチップは70,000円で、平成25年度には、膵癌組織10例とコントロールに用いる同一固体の血液DNA10例の解析を行う予定なので、計1,400,000円が必要であるが、平成24年度に10枚分の購入を終了しているので、700,000円を使用する予定である。また、網羅的遺伝子発現解析にはGeneChip Human U133 plus 2.0 array(Affymetrix社)を用い、DNA解析と同じ膵癌症例20例とコントロールとして正常膵管5例の検討を行う。1検体にかかるアレイチップ代は96,000円なので、計2,400,000円必要であるが、これらのチップに関しても15枚分は購入済みであるので、残り960,000円は、平成25年度と26年度併わせて購入する予定である。またこれら実験に使用する試薬のキットに関しては、平成24年度に購入を済ませているため、チップの購入のみで実験は完遂できる予定である。 また、これまでの膵癌DNA一次構造異常解析の研究実績に関して、学会発表を行う予定であり、そのための交通費と宿泊費に使用させていただく予定である。
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