2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
島津 元秀 東京医科大学, 医学部, 教授 (70124948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
砂村 眞琴 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (10201584)
杉本 昌弘 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30458963)
糸井 隆夫 東京医科大学, 医学部, 准教授 (60338796)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メタボローム解析 / 唾液 / 膵癌 / 早期診断 |
Research Abstract |
【目的】血液を用いた膵癌の早期診断には、膵酵素およびCA19-9、DUPAN-2、SPAN-1などの腫瘍マーカーが活用されている。他のオミックスより表現系に近い特徴があり、このメタボロミクスを癌診断に応用し膵癌の早期診断法を確立する取り組みを進めている。【方法】膵癌31例、慢性膵炎7例、嚢胞性膵腫瘍5例、胆道癌10例、その他膵胆道系疾患の血液サンプルを使用した。また対象として20例の健常者血液を用いた。CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置)を用い主要な代謝物の大部分であるイオン性物質を網羅的に解析した。同時に血清腫瘍マーカー(CA19-9、SPAN-1、DUPAN-2、CEA)を測定した。【結果】CE-TOFMSにより、血中から約450の代謝産物を検出し、その内150物質を同定した。膵癌患者と健常者間で統計的有意差を認めた代謝産物は27物質で、膵癌で上昇したのは5物質であった。Span-1、CA19-9ではfalse negativeとなる症例が認められたが、これら腫瘍マーカーに特徴的な代謝産物を組み合わせることにより、false negative症例を減らすことが可能となった。慢性膵炎と膵癌との比較では、CA19-9、SPAN-1とDUPAN-2とを組み合わせて解析したがAUCは0.9517にとどまった。一方、ある代謝物質と一つの腫瘍マーカーとを組み合わせたところAUCは1となり、ほぼ100%膵癌との鑑別が可能であった。【結語】血液をサンプルとしたCE-TOFMSを基盤としたメタボローム解析により膵癌に特徴的な代謝産物を抽出した。さらに膵癌と慢性膵炎との鑑別が腫瘍マーカーと組み合わせることにより可能となった。CE-TOFMSは極めて低容量(10μL)の検体で低濃度の代謝産物を高い解像度で安定して網羅的に一斉に検出・定量することが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
膵癌患者の血液を用い以下のような結果が既に得られた。すなわち、CE-TOFMSにより、血中から約450の代謝産物を検出し、その内150物質を同定した。膵癌患者と健常者間で統計的有意差を認めた代謝産物は27物質で、膵癌で上昇したのは5物質であった。Span-1、CA19-9ではfalse negativeとなる症例が認められたが、これら腫瘍マーカーに特徴的な代謝産物を組み合わせることにより、false negative症例を減らすことが可能となった。慢性膵炎と膵癌との比較では、CA19-9、SPAN-1とDUPAN-2とを組み合わせて解析したがAUCは0.9517にとどまった。一方、ある代謝物質と一つの腫瘍マーカーとを組み合わせたところAUCは1となり、ほぼ100%膵癌との鑑別が可能であった。これらの結果からメタボローム解析から癌を診断するという本プロジェクトの仮設が実現可能であることが証明された。 既に膵癌患者から血液のみならず唾液も採取しており、唾液サンプルを用いて代謝物を網羅的に解析するメタボローム解析により、血液同様に膵癌診断が可能かの検討を開始している。順調にプロジェクトが進行し、唾液を用いた解析結果の一部が明らかになっている。膵癌(n=24)と健常者(n=10)の唾液の代謝プロファイルを比較検討した。唾液中から多数のピークが確認でき、標準物質のライブラリーとの比較により227種類の代謝物を同定することができた。主成分分析の結果、健常者7名の代謝プロファイルは極めて類似しており、膵癌患者の唾液は、健常者と大きく変動していることが明らかとなった。 以上のように、唾液を用いた膵癌診断の可能性は極めて高いと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) メタボローム解析による検討:唾液および血液のメタボローム解析から両者の代謝産物の違いを比較検討する。さらに健常者および膵良性疾患の患者から得られたメタボローム解析データとの違いを分析し、消化器癌に特徴的な代謝産物を同定する。 (2) 組織を用いたメタボローム解析:唾液・血液から得られた特徴的な代謝産物が癌組織においても同様に増加ないしは減少しているかを確認する。これら代謝産物の産生過程に注目し、酵素などの代謝産物を増加もしくは減少させる役割を担う蛋白を同定する。 (3) 診断マーカーの有用性の評価:唾液メタボローム解析から得られた診断用マーカーの有用性を確認するために、検体情報をブラインドとしてメタボローム解析を行い、提案された診断システムの正診率を評価する。唾液のみならず、血液や膵液・胆汁なども用いて、マーカーの有用性を評価する。正診率が有意差を持って高率であれば、このメタボローム解析の代謝産物に関して特許を申請する。同様の検討を研究グループに属していない医療機関にサンプルの提供を求め、提案された診断用マーカーの有用性を再評価する。 (4) 他の癌との比較検討:膵癌のバイオマーカーが明らかとなってきているが、肺癌や乳癌などの消化器癌以外の癌とバイオマーカーが異なるのか、という疑問が生じている。また、消化器癌であっても大腸癌や胃癌とマーカーが異なるのか、という問題を明らかにすることが重要である。これらの問題を明らかにするため、肺癌、乳癌、大腸癌症例におけるメタボローム解析を同様に行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費の大部分は、本研究を遂行するために必要な唾液および血液採取に用いる器材、そしてメタボローム解析に用いる試薬である。実験に用いる機器は既に実験施設に整っており、新たに購入する必要はない。癌細胞培養に必要な培養容器、培養液や試薬、マイクロアレイ解析に用いる試薬やキットなどの消耗品の購入が必要となる。
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Research Products
(6 results)