2013 Fiscal Year Research-status Report
新規のレーザー衝撃波液体ジェットメスの心臓血管外科領域への応用開発
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24592049
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川本 俊輔 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20400244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 敦寛 東北大学, 大学病院, 助教 (10447162)
本吉 直孝 東北大学, 大学病院, 講師 (40375093)
齋木 佳克 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50372298)
中野 徹 東北大学, 大学病院, 助教 (50451571)
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Keywords | 循環器・高血圧 / 心臓血管外科学 / パルスジェットメス / 感動脈バイパス手術 |
Research Abstract |
平成24年度から、レーザー衝撃波液体ジェットメス(パルスジェットメス)の冠動脈バイパス術への応用に関する研究実験を行っている。これにより、バイパスに用いる内胸動脈を熱損傷なく採取でき、通常困難な心筋内走行の冠動脈をより安全に露出できる可能性がある。平成24年度にはブタへの試用を行い、実際の使用感覚を確かめ、内胸動脈の剥離・冠動脈の露出を行った。これにより、パルスジェットメスの心臓血管外科領域への応用がある程度可能であることを確かめた上で、採取組織の強度の測定等を開始した。 平成25年度に入っても内胸動脈の剥離実験を定期的に続け、内胸動脈及びその周囲組織、冠動脈、心筋といった組織を摘出して強度を調べ、パルスジェットメスの出力・圧力に対する組織選択性の根拠を求めた。組織の強度は卓上プランチャーによる複数回の組織破断強度を求め、組織ごとの値をn=5以上で平均化して差を比較した。また25年度には、電気メスのみで採取した内胸動脈とパルスジェットメスで採取した内胸動脈を病理組織学的に検討したが、若干の差はみられたものの、どちらも内膜・中膜レベルの差はみられなかった。また、内胸動脈と周囲組織との結合の強度や特徴を調べるために、両組織の引きはがしの強度を調べる実験を行ったが、血管の分枝による影響等があり、有意な所見は得られなかった。 安全性に関しては、距離・出力を変化させながら内胸動脈にジェットを当て、どれくらいの時間で穿孔が生じるかを計測し、どの程度の噴射が許容されるかの目途をつけた。 冠動脈の露出に関しては、ブタにおいて心筋内走行する冠動脈自体が少なく、条件を得ることが難しかったが、側壁枝について露出・病理組織学的評価を施行し得た。 デバイスの出力設定に関しては対象とする組織や手技における最適な領域を把握しつつあり、形態の工夫に関してはノズルの先端の形状を変化させた検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度には、ブタの内胸動脈および冠動脈への試用を継続して行い、感触を確かめる段階から、毎回一定の効果を持って手技を行えるようになり、具体的な応用のイメージを持つことができた。しかし、冠動脈の露出に関してはなかなか心筋内走行の条件が整わず、実際の露出自体は可能であったが、更なる検証を繰り返し、操作の可能性を確かめる必要性はある。また、採取した内胸動脈・露出した冠動脈の病理組織学的検討を加えることで、組織学的レベルにおいても明らかな損傷なく手技が行い得るものであることが確認された。潜在的にどの程度の損傷能力があるかは損傷実験によりある程度の目安を持つことができている。更に、内胸動脈・冠動脈・各々の周囲組織の強度の違いを確認することで、一定の出力下における組織選択性・細血管の温存能力の根拠を得ることができている。まだ確認すべきことはあるが、現時点で一定の知見が得られており、慢性期実験動物モデルにおけるパルスジェットメスを用いた血管剥離・吻合実験を行い得る段階に近づくことができ、概ね計画に沿った研究の進展が得られていると判断できる。デバイスの出力設定(レーザーの設定出力)や水量の最適化も条件を変化させて行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
パルスジェットメスの心臓血管外科領域への応用のまず第一のゴールは冠動脈バイパス術への応用であり、既存デバイスと同等以上のグラフト採取能力・通常困難である心筋内走行の冠動脈の安全な露出に対する有効性を確かめることを目的としている。平成24年度、25年度のブタを用いた実験により基礎的なデータを蓄積することはできたので、今後はこれを慢性実験モデルに応用し、臨床応用への前段階として、安全性・効果・問題点の見極めをしていきたい。それに先立ち、内胸動脈の採取に関しては、電気メスで採取したものとの比較を行ったが、現在もっとも用いられている機器は超音波メスとの比較を行うことも考慮している。心筋内走行の冠動脈露出に関しては、さらに数例の試行を行い、可能性を評価していく。その際、より安定した剥離を行うために、臨床でも用いられる固定具(心臓そのものを拍動下に固定するものや、露出冠動脈部を選択的に固定するもの)をより積極的に用いることを検討し、少ない条件の中での確実な評価を行っていく。また、熱損傷がないというパルスジェットメスの利点と表裏一体の点として、凝固能力がないという側面があり、これに対して現在はクリップを用いて細血管を切離したり、適宜電気メスを併用して内胸動脈の採取を行っているが、電気メスと一体型のデバイスの開発も医工連携を基盤として進めていきたい。慢性動物実験に関しては、吻合後の内膜肥厚を評価した経験のあるビーグル犬の大腿動静脈を用いた吻合モデルを考えているが、常に最適なモデルの検討・開発も視野に入れて実験を行い、臨床応用への道を模索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ計画通りの実験を行っているが、ブタは他科と共同で部位を分けて使用しているため、その分の経費は削減された。麻酔薬をはじめとした薬品に関しても同様である。実験器具も共用・貸借できるものは有効利用している。しかしながら、まだブタで行う実験も残っており、予定頭数に達していないことと、ビーグル犬を用いた慢性実験を始めていないこともあり、次年度使用額が発生している。ノズル部品試作に関しても現在のところ数種の改変にとどまっている。 ブタの使用は、超音波メスを用いた内胸動脈の剥離や心筋内走行の冠動脈の露出の再現に関して引き続き必要である。その上で、ビーグル犬を用いた吻合の慢性実験を行うため、実験用動物代および飼育代が発生するので、当初の予定額が必要になってくる。更なるノズルの改良や電気メスとパルスジェットメスを合体させたデバイスの開発が望まれており、また、心拍動下での冠動脈の露出には心臓そのものや冠動脈近辺の心外膜を固定する装置も必要であり、開発費・器材の代金が必要になる。超音波メスも、再利用等が困難であれば、ハンドピースの部分は購入して使用する。他、縫合糸や薬品類、学会参加費用等で次年度分と合わせて使用する。
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