2015 Fiscal Year Annual Research Report
肺高血圧における細胞外マトリックスの役割とその制御
Project/Area Number |
24592057
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
新保 秀人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70179076)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺高血圧 / 細胞外マトリックス / テネイシン |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】血管の構造を支持し、組織恒常性の維持に貢献している細胞外マトリックス(ECM)の中でも、matricellular蛋白と呼ばれる分子群が最近注目されている。テネイシンC(TNC)はmatricellular蛋白の1つで、リモデリングに重要な役割を有している可能性が示唆されている。一方、phosphodiesterase阻害薬(シロスタゾール)は、内皮細胞や平滑筋細胞の増殖,さらには新生内膜の抑制に関与するとされており、TNCを介してリモデリングも抑制する可能性が考えられる。 【目的】肺高血圧におけるTNCの役割とシロスタゾールの関与について検討する。 【方法】生食をラットに皮下注し3週間生食を経口投与した群(C群, n=7)、60mg/kgのモノクロタリン(MCT)をラットに皮下注し3週間生食を経口投与した群(M群, n=8)、さらに60mg/kgのモノクロタリンをラットに皮下注し3週間20mg/kg/dayのシロスタゾールを経口投与した群(T群, n=9)の3群を作成。3週間後、体血圧(SBP)及び肺動脈圧(PAP)を測定した後、肺を摘出、EVG染色に加えTNC抗体による免疫染色にてTNCの発現を測定した。 【結果】PAPはC群26.0±5.6mmHg、M群60.5±12.7mmHg、T群35.9±5.9mmHgといずれの群間も有意差を認めた。PAP(平均圧)はC群15.6±2.2mmHg、M群35.2±6.8mmHg、T群20.8±7.0mmHgと、C・T群間以外は有意差を認めた。さらにSBPはそれぞれ、C群で140.9±10.8mmHg、M群で136.9±8.2mmHg、T群で133.1±12.0mmHgと、いずれの群間でも有意差を認めなかった。またEVG染色にてM群では内膜及び中膜に肥厚を認めたが、T群では肥厚の程度は軽度であった。さらにTNC染色でもM群では肥厚した中膜に多くのTNC発現を認めたのに対し、T群ではTNC発現は軽度であった。 【結語】今回の検討でシロスタゾールがTNCを介して肺高血圧の進行を抑制する可能性が認められた。
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