2013 Fiscal Year Research-status Report
人工心肺中低頻度人工呼吸の肺保護効果の研究:臨床応用と未熟肺への基礎的アプローチ
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24592076
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
井村 肇 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40281422)
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Keywords | 人工心肺後肺障害 / サイトカイン / 国際情報交換(英国) / 肺機能 |
Research Abstract |
我々はブタ基礎実験において人工心肺中の低頻度人工呼吸(Low Frequency Ventilation:LVF法)が著明に人工心肺後の肺障害を軽減することを報告した。本研究はLFV法を臨床応用し成人開心術における肺障害予防効果とその機序解明に取り組む目的で行っている。 昨年度本研究が倫理委員会で認められ、今年度まず我々が行うのは成人開心術におけるLFV法の有用性の研究である。肺障害が重篤に見られる手術群(人工心肺約4時間の大動脈弓部置換術)と肺障害が軽度の手術群(同2時間以内の大動脈弁置換手術)に分けて研究する。評価項目はa)臨床経過(人工呼吸時間、ICU滞在時間), b)動脈血液ガス所見の変化, c)胸部X-p (無気肺、肺水腫他), d)スワンガンツカテーテルによる肺動脈圧・肺血管抵抗の術中・術後変化, e)肺動・静脈血中白血球数、乳酸値, f) 気管支粘液中のinterleukin(IL)-6, basic FGF, 補体価(C3, C4)である。 本年度は23人の患者から本研究参加への同意が得られ、19人の患者からデータを採取することができた。現在検体から各検査項目の測定とデータ解析を進行中である。上記の如く本研究は人工心肺1-2時間の軽症群と3-4時間以上の重症群に分けて研究するが、今のところ重症群は2例のみであるため、来年度は重症例を中心にデータ収集を図る予定である。 軽症群のデータ解析では、全ての症例で大きなeventや合併症なく経過し順調に人工呼吸器から離脱したが、一方で人工心肺後肺機能(血液ガス所見)は悪化し、肺動脈圧及び肺血管抵抗は上昇、気管支粘液中のC3, C4, IL-6は有意に上昇した。LFV群と非LFV群での比較は現在行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床研究を開始するに当たり、倫理委員会の許可を得るのに8か月を要したことと、気管支洗浄液の採取方法の安全性と測定上の信頼性を確保するために時間を要した。平成25年度になりようやく臨床研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はLFV法の効果はすでに基礎実験で確認していることから、今回の研究の最も中心となる目的は、臨床におけるLFV法の効果の検証である。今後も現在行っている臨床研究を推し進めて行く方針である。これと並行して乳児期にあるブタを使用して未熟肺に対するLFV法の効果を研究する基礎実験も行いたいが、現在のところ臨床研究にかかる費用が予想を上回り、1患者にかかる検査測定費用が約8万円で、軽症群と重症群をそれぞれ20-25例行うと予算を全てこれに使うこととなる。さらに気管支鏡を使った検査の維持費や学会・論文の費用を加えると基礎実験を行うには時間的にも経費面でもなかなか余裕がない状態である。又、当初の計画にも挙げた通り可能であれば小児開心術でのデータ収集も本年度以降行いたいと考えているが、予算そして基礎実験の状況を考慮して決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前記の通り初年度(平成24年)倫理委員会の承認を得るのに時間を要したこと、次年度に安全かつ信頼できる気管支粘液採取法を確立することに時間が必要であったことから研究の進行が遅れている。現在研究できた症例数は19例で内検体測定に要した経費の支払いが完了したのは3症例分に留まっている。これから残りの16例の検体測定を行う。さらに25年度の後半以降は順調に研究症例を加えており、今年度中には予定の50例に到達する見込みである。 上記のとおり本年度予定通り31症例で検体採取と測定を行えば症例あたり8万円の経費がかかるので、当初の計画通り予算を使うことになる。
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