2014 Fiscal Year Research-status Report
人工心肺中低頻度人工呼吸の肺保護効果の研究:臨床応用と未熟肺への基礎的アプローチ
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24592076
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
井村 肇 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40281422)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺障害 / 人工心肺 / 開心術 / chemical mediator / 人工呼吸 / 気管支液 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人工心肺中の低頻度人工呼吸(Low Frequency Ventilation:LVF法)を臨床応用し成人開心術における肺障害予防効果とその機序解明を目的で行っている。評価項目はa)臨床経過, b)動脈血液ガス, c)肺動脈圧・肺血管抵抗, d)肺動・静脈血中白血球数、乳酸値, e)気管支粘液中のchemical mediatorである。本年度は24人からデータを採取した。昨年度は19人からデータを採取したが気管支粘液データ測定に問題があり最終的に評価が可能であった患者数は10人であり計34人が対象となっている。人工心肺時間は147.2±46.7vs143.7±42.4(control vs LFV)と両群に差はなく肺機能を含めた術前患者背景にも有意差はなかった。両群の比較では人工心肺後のPO2/FiO2に有意差が認められた。術前と比べてControl群では人工心肺後2時間において有意にPO2/FiO2の低下を認めたのに対してLFV群では有意な低下はなく、術前を100とした同値はcontrol群では71.0±22.4に対してLFVでは91.3±26.7と有意(p<0.05)にLFVで人工心肺後PO2/FiO2は保たれていた。肺からの乳酸の排出量の比較ではLFV群で人工心肺後2時間において低い傾向がみられ(p=0.1)、LFVの肺保護効果には肺組織の虚血再還流障害軽減が関与する可能性が示唆された。気管支粘液中のchemical mediatorの変化を比較すると計20症例(control:12例、LFV:8例)では、IL-6は全体で人工心肺後に上昇する傾向(p=0.07)を示し、control群でより強い上昇傾向(contol: p=0.10, LFV: p=0.43)を示した。気管支粘液データの測定には時間を要する為、現在その評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究が遅れている最大の要因は気管支粘液におけるchemical mediator測定の困難さにある。本研究では各症例において3回(人工心肺前、直後、2時間後)気管支粘液の採取を行っているが、それぞれにおいて気管支鏡下に特殊なプロ-べを使用して粘液を採取している。一回に採取される気管支粘液量は1-18mg程度であるがなかなか採取量が安定せず、さらにそこに含まれるタンパク量(アルブミン量)も各サンプルばらつきが大きく信頼のおける検体採取が簡単ではない。Chemical mediatorの測定キットは非常に高価である為、一定量の検体が一定数が集まってからまとめて測定することになるが(その間検体は凍結保存されている)、測定後その検体に含まれるタンパク量などから漸くその検体が信頼できるものか否か、予め定めた条件と照らし合わせて判断される。こうした時間は数カ月以上になるためなかなかスムーズに評価可能な症例数が集まらないのが現状である。現在前述の如く計34例の患者から検体採取等を行っているが気管支粘液からchemical mediatorの測定ができたものは完全でないものも含めて20例に留まっている。これもこうした理由からである。当初の予定では26年度中に測定を終了し27年度は学会発表などを行うこととしていたが、27年度においても検体採取とその測定を継続して26年度と同様に20症例ほどを集める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はこれまで述べた理由から当初の予定に比べて残念ながら遅れている。しかしながら症例数は着実に増加してきており本年度も昨年程度の増加は確実に見込めると考えられることから来年度には合計で50例以上の患者数となる予定である。従ってcontrol群とLFV群を比較するに十分な数となる。 現在人工心肺時間が180分を超える人工心肺長時間症例はcontrol群で6例、LFV群で4例ある。この所謂重症肺障害症例におけるLFV効果を検討するため、各群少なくとも10例が必要と考えているが、本年度においてこれは十分に可能であると思われる。本年度は20例に対して検体収集と測定を行うのに対して、1症例9万円(気管支プロ-べ1万円、気管支粘液chemical mediator測定8万円)で少なくとも180万円を使用することとなる。
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Causes of Carryover |
これまで述べた如く気管支粘液中のchemical mediatorの測定が想定した以上に困難かつ時間が必要であったため本年度までの症例数が当初の予定には届かなかったことが本年度研究費を次年度に持ち越すことになった理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定では検体収集と測定は本年度中に終了する予定であったが、次年度も引き続きこうした作業を継続する必要がある。本年度から次年度に繰り越した金額はこれに必要であり、使用されることになる。
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