2013 Fiscal Year Research-status Report
脳虚血のメタボローム解析:脳虚血前後代謝変化の包括的解析によるバイオマーカー探索
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24592126
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
細田 弘吉 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90403261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 淳二 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00594508)
甲村 英二 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30225388)
内橋 義人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80605999)
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Keywords | 脳虚血 / 脳梗塞 / メタボロミクス / 頚動脈狭窄症 / 一過性脳虚血 |
Research Abstract |
I. 頚動脈狭窄症患者における虚血性脳血管イベントの有無による代謝変化 頚動脈狭窄症例で1年以内に虚血性脳血管イベント(脳梗塞と一過性脳虚血)のあった群となかった群で内頚動脈剥離術中に内頚静脈血と末梢血を採取し,水溶性代謝物を抽出してガスクロマトグラフ質量分析装置でメタボローム解析を行った.主成分分析等の多変量解析を行い両群の代謝物が異なるパターンを呈することを見出し,Ascorbic acid,Gluconic acid,Glycerol,Histidine,Lactic acid,Methionine,p-Hydroxybenzoic acid,Valineの8つの代謝物により,虚血性脳血管イベントの有無を高精度に予測するモデルを作成した.これらの代謝物は虚血性脳血管イベントのバイオマーカー候補と考えられた. II.ラット中大脳動脈閉塞モデルを用いた脳梗塞急性期代謝変化 ラット中大脳動脈閉塞による急性梗塞群と対照群の頚静脈血を収集し,ガスクロマトグラフ質量分析装置でメタボローム解析を行った.このデータを多因子分析で解析し,両群で特に異なる変化を示す30代謝物が同定された. III. ヒト脳梗塞急性期のメタボローム解析 2013年度より新たに,発症後24時間以内の脳梗塞症例と対照群(未破裂脳動脈瘤を含む)の末梢血を採取し,上記と同様にメタボローム解析を行うために症例を集積中である.この解析により,脳梗塞急性期の新たなバイオマーカーを同定する予定である.また,対照群の中の未破裂脳動脈瘤症例を用いて320列CT angiograpyの有効性を検討し,論文として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 脳虚血に特異的な代謝産物の同定とそれによるバイオマーカーと脳虚血治療薬の開発:研究実績の概要に記載したように,過去1年以内に一過性脳虚血もしくは症候性脳梗塞をきたしたことのある患者とこれまで全く症候をきたしたことのない患者とを区別できる8つの代謝物を同定することができた.また,この8つの代謝物を用いた予測モデルは内頚静脈血だけでなく,末梢血を用いた場合でも高い精度で,脳虚血イベントの有無を判別することが出来た.これらの結果をまとめた論文を現在投稿準備中であり,2年目の進展としては順調と考える. 2 脳虚血後再灌流障害に特異的な代謝物の同定とそれによるバイオマーカーと治療薬の開発:再灌流障害に対する研究はラット中大脳動脈閉塞モデルにより行う予定であり,研究実績の概要に記載したように,まず脳虚血2時間の時点で変化する30代謝物を確認したところである.さらに虚血バイオマーカーを絞り込んだ上で,次のステップとして再灌流実験に進む予定である. 3 頚動脈の不安定プラークに特異的な代謝産物の同定とそれによるバイオマーカーと治療薬の開発:頸動脈内膜剥離術を行う患者のプラークのサンプルを収集中であるが,上 述のごとく,脳虚血に特異的な代謝物の同定に有望な結果が見えてきた収集したプラークも40例近くとなり,解析対象として十分な数となってきている. 4 2013年度より新たにヒト脳梗塞急性期のメタボローム解析として発症後24時間以内の脳梗塞症例と対照群(未破裂脳動脈瘤を含む)の末梢血を採取し,上記と同様にメタボローム解析を行うために症例を集積中である.この解析により,脳梗塞急性期の新たなバイオマーカーを同定する予定である.また,対照群の中の未破裂脳動脈瘤症例を用いて320列CT angiograpyの有効性を検討し,その結果を論文として発表することが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
1 脳虚血に特異的な代謝産物の同定と,それによるバイオマーカーと脳虚血治療薬の開発:過去1 年以内に一過性脳虚血もしくは症候性脳梗塞をきたしたことのある患者とこ れまで全く症候をきたしたことのない患者とを区別できる8つの代謝物を同定することができた.また,その結果を検証することも出来た.現在収集しているサンプルには,頚動脈内膜剥離術中の内頚動脈遮断後の血液も含まれており,脳虚血後の代謝変化のメタボロミクス解析を進める予定である. 2 ラット中大脳動脈閉塞モデルの頚静脈血で同定した脳虚血時に変動する30代謝物について,脳組織サンプルを同時に採取してメタボローム解析を行うことにより,さらにバイオマーカーとしての代謝物を絞り込む予定である. 3 脳虚血後再灌流障害に特異的な代謝物の同定とそれによるバイオマーカーと治療薬の開発:2で述べた如く,ラット中大脳動脈閉塞モデルの脳梗塞超急性期における代謝変化をさらに同定してから,再灌流障害の際の代謝変化を調べる予定である. 4 2013年度より新たに,ヒト脳梗塞急性期のメタボローム解析として発症後24時間以内の脳梗塞症例と対照群(未破裂脳動脈瘤を含む)の末梢血を採取し,上記と同様にメタボローム解析を行うために症例を集積中であるが,これを継続して本年度後半からは,解析を行う予定である.この際に上記ラット中大脳動脈閉塞モデルの結果はポジティブコントロールとして用いる.この解析により,ヒトの脳梗塞急性期の新たなバイオマーカーを同定する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ガスクロマトグラフ質量分析装置使用料は,検体1本につき1万円であり,ある程度数をまとめて解析するために,解析の時期によって,使用料の支払い日が次の年度になることがあり,今回も年度末まで検体を蓄積し,2014年度春に解析する予定で,その使用料として繰り越したものが次年度使用額となっている. また,数をまとめるために,ラットの購入時期や試薬や実験器具の購入時期も調整しており,そのために繰り越したものが次年度使用額となっている. 上述したように,2014年度春にまとめてメタボローム解析を行う予定であり,その次年度使用額はそれに要する費用として使用する.
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[Journal Article] Utility of 320- detector row ct for diagnosis and therapeutic strategy for paraclinoid and intracavernous aneurysms.2014
Author(s)
Inoue, S., Hosoda, K., Fujita, A., Ohno, Y., Fujii, M., Sugimura, K., and Kohmura, E.
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Journal Title
Acta Neurochir (Wien)
Volume: 156
Pages: 505-514
DOI
Peer Reviewed
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