2013 Fiscal Year Research-status Report
新規細胞外マトリックスDACSのアストロサイトおよび神経細胞における機能解析
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24592141
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
奥田 洋明 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40453162)
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Keywords | アストロサイト / コンドロイチン硫酸 / グルタミン酸 |
Research Abstract |
我々は、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)により構成される新規の細胞外マトリックス構造を見出し、その形態からDandelion Clock-like Structure (DACS)と命名し、報告している。本研究の目的はDACSが成熟脳においてどのような機能を持つかを解明することであり、現在までの検討の結果、マウス大脳皮質において特定の一部のアストロサイトにおいてTenascin-R(TNR)が発現しており、このTNR陽性アストロサイトがDACSを構成していることが判明している。本年度の計画としては、TNR陽性アストロサイトの機能の検討を培養系を用いて行った。 DACSはアストロサイトが形成し、周囲の神経細胞を取り囲むように存在することから、周囲の神経細胞の機能を調節している可能性が考えられる。アストロサイトのシナプスにおける主な機能として、神経伝達物質であるグルタミン酸の取り込みとグリオトランスミッターの放出が知られているため、この2点について検討した。TNRの発現をsiRNAを用いてノックダウンすることにより、グルタミン酸の取り込み能の低下が認められ、また、グルタミン酸トランスポーターのGLASTの発現の低下が認められた。しかしながら、グリオトランスミッターの放出には影響は見られなかった。以上の結果を論文として報告した(Okuda et al., J Biol Chem 2013, 289:2620-2631)。 以上の結果よりTNR陽性アストロサイトはDACSを形成し、GLASTの発現を制御することにより、シナプスなどの微細環境におけるグルタミン酸のホメオスタシスの調節を行い、脳機能を正常状態に保つのに重要であることが示唆される。来年度はDACS陽性アストロサイトがどのように周囲の神経活動を感知・応答するのかに注目して解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の予定としては、TNR陽性アストロサイトの機能の解析を計画していたが、おおむね達成された。しかしながら、DACSの細胞外および膜タンパク質への関与はまだ検討中であるが、予備検討の結果、候補遺伝子が上がってきているので目的の達成に問題は無いと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定としては、DACSの神経系への影響を計画していたが、本年度の結果より、DACSが何らかの膜タンパク質を介したシグナル伝達を調節することによりGLASTの発現を制御している可能性が示唆される。そこで今後の研究計画としてはDACSが結合する膜タンパク質およびシグナル経路の同定を行う。 ①TNRと相互作用する膜タンパク質の同定 TNRはCSPGと結合して細胞外マトリックスを形成する他、カドヘリンなどの膜タンパク質と結合することが報告されている。しかしながら、アストロサイトにおいてどのような因子と相互作用しているかは不明である。そこで、抗TNR抗体またはGST融合合成タンパク質を用いた免疫沈降法により、TNRと結合する膜タンパク質を探索する。予備検討の段階であるが、現在のところ、TNRに結合する因子の一つとして、ソニックヘッジホッグ(Shh)の受容体であるPatched1との結合が免疫沈降法により認められている。 ②同定されたタンパク質の中枢神経系における局在の検討 ①で同定されたTNR結合タンパク質の中枢神経系における局在を検討する。TNRは分泌タンパク質として細胞外に放出される性質を持つことから、In-situ hybridization法と、目的タンパク質の免疫染色法を組み合わせて検討する。同定された因子の一つであるPatched1は主に発生期で機能すると考えられているが、成獣マウスの大脳皮質においてアストロサイトに発現していることを確認している。 ③細胞内シグナルの検討 ①で同定されたTNR結合膜タンパク質がどのようなシグナル経路で情報を伝達するのかを検討する。TNRのsiRNAを用いてアストロサイトの内在性TNRの発現を低下させた後、アストロサイトにおけるシグナルの変動をRT-PCRおよびウエスタンブロッティングで検討する。
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Research Products
(1 results)