2013 Fiscal Year Research-status Report
脳腫瘍新生血管を治療標的としたペプチドワクチン療法確立のための効果評価法の開発
Project/Area Number |
24592172
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
植田 良 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (30317143)
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Keywords | 脳腫瘍 / ペプチドワクチン / 免疫療法 |
Research Abstract |
本研究では、申請者らが実施している悪性脳腫瘍新生血管を治療標的としたペプチドワクチン療法臨床試験被験者検体を用いて、1、血管新生抑制療法に対する反応性および抵抗性を示す腫瘍血管新生・浸潤性関連因子バイオマーカーや、2、抗腫瘍免疫ネットワークにおける正と負の調節細胞や分子について解析し、同治療の臨床的有効性との関連性を評価する。この結果に基づいて、同治療の治療効果の科学的根拠を構築するとともに、血管新生抑制療法およびがんワクチン免疫療法の反応性・抵抗性を評価する新たな方法の開発、さらに治療反応性予測を可能にして適切な患者選択を行うこと、新規改良法の提案を行うことで、同治療成績の向上に貢献することを目指す。 本年度は、被験者検体を用いた脳腫瘍血管新生・浸潤性関連因子、および免疫応答関連細胞・因子についての解析の実施と、臨床的有効性との関連性の評価を計画している。 1、脳腫瘍血管新生性関連因子であり、抗腫瘍免疫応答抑制性因子であるVEGFやVEGFR(sVEGFR1/2)の被験者血清レベルを解析した。また、同検体を用いてVEGFR発現細胞反応性の細胞傷害性T細胞(CTL)を検出し、VEGFRワクチンが、被験者体内にその特異的免疫を高頻度に(6例中6例)誘導しうることを明らかにした。 2、本ワクチン療法はこれまでに8例の再発悪性神経膠腫患者に対し施行され、重篤な有害事象なく2例の不変(stable disease: SD)が得られ、新規病変の発生を抑制する可能性が示唆されている。この2患者体内では、VEGFR発現細胞反応性CTLが高頻度に検出され、VEGFRペプチドに対する免疫応答が臨床的有効性を予測する指標となる可能性が示された。さらに、血清中のsVEGFR2値はVEGFRペプチドワクチン後に低下することが判明し、今後臨床的有効性との関連性を検討することで治療効果評価や治療反応性予測に応用しうると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の通り、本年度の目標に掲げていた計画を概ね遂行できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
1、同臨床試験患者検体を用いた脳腫瘍血管新生・浸潤性関連因子、および免疫応答関連細胞・因子についての解析の実施 脳腫瘍血管新生および浸潤性関連因子(VEGF, sVEGFR1/2, bFGF, SDF1α, MMP, 循環コラーゲンIV等)について、VEGFRワクチン臨床試験被験者検体、およびコントロールとして標準治療が施された悪性神経膠腫患者検体や標準治療に加えてbevacizumabを投与された患者検体を用いて解析する。また、免疫応答関連細胞・因子について抗腫瘍T細胞の頻度、免疫促進性分子(IFN-γ, IL2, IL12など)免疫抑制性分子・細胞(TGF-β, IL10, VEGF, PGE2, PD-L1等の分子や、制御性T細胞(CD4+FoxP3+CD25+)、腫瘍関連マクロファージ(CD68+CD163+)等の細胞)についても解析する。 2、解析した脳腫瘍血管新生・浸潤性関連因子、および免疫応答関連細胞・因子の動態と、臨床的有効性との関連性の評価 VEGFRワクチン臨床試験被験者検体における脳腫瘍血管新生および浸潤性関連因子や免疫応答関連細胞・因子の解析結果(測定値)を臨床的有効性(画像検査結果や生存期間等)との相関解析により、その重要性を明らかにする。また、標準治療が施された悪性神経膠腫患者検体における同項目の測定値とも比較し、標準治療に比した標準治療+VEGFRワクチン免疫治療の効果を評価する。 さらに、現在我々がその有効性を検証している悪性脳腫瘍新生血管を治療標的としたペプチドワクチン療法臨床効果と相関する腫瘍血管新生・浸潤性関連分子や抗腫瘍免疫調節細胞・分子を同定し、評価法が確立できた場合、本治療に対する治療反応性予測、治療効果が期待できる適切な患者選択、治療効果の早期判定に応用可能であるかどうかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
効率的な物品調達を行った結果であり、次年度の試薬・消耗品などの購入に充てる予定である。 次年度は、主に前述の同臨床試験患者検体を用いた脳腫瘍血管新生・浸潤性関連因子、および免疫応答関連細胞・因子についての解析の実施のために研究費を使用する。 具体的には、VEGFRワクチン臨床試験被験者検体保管のための費用や、その検体を用いたELISPOT法とテトラマー法、フローサイトメトリー解析、免疫組織学的解析等の実施に必要な経費として、研究費を使用する。
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