2012 Fiscal Year Research-status Report
放射線脳障害を規定する因子の同定と、それを元にしたテーラーメイド照射の構築
Project/Area Number |
24592179
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
井内 俊彦 千葉県がんセンター(研究所), 医療局脳神経外科, 部長 (80370881)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 神経膠腫 / 放射線治療 / 脳白質障害 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
放射線障害を規定する因子として、平成24年度は腫瘍側因子の抽出を行った。初回治療として放射線治療が施行されていた66例の神経膠腫(星状膠細胞腫1例・退形成星状膠細胞腫10例・神経膠芽腫44例・乏突起膠腫2例・退形成乏突起膠腫9例)を対象に、当院で開発した 5,400 の神経由来遺伝子の発現を解析可能な cDNA chip を用いた網羅的遺伝子発現解析で、遺伝子発現プロファイルを確認した。白質障害の程度は NCI-CTC の規定に従い、Grade II 以上の白質障害が画像上出現するまでの時間を無白質障害生存期間とした。遺伝子発現や臨床的因子(性別・年齢・KPS・組織学的診断・悪性度・照射野・照射線量・化学療法)と、無白質障害生存期間との関連を Cox の比例ハザードモデルを用いて解析、白質障害を規定する因子を抽出した。その結果、臨床因子としては照射時年齢(p=0.006)・照射線量(p=0.005)が白質障害出現との相関を示し、chip 上に乗った5,400遺伝子のうち29遺伝子の発現が白質障害の出現と相関した。これら遺伝子を機能的に分類すると、転写因子(2)、翻訳因子(3)、蛋白調節(4)、移送因子(3)、細胞分裂サイクル(2)、シグナル伝達(1)、糖分解(1)、免疫応答(1)、抜くラーソーム集合(1)、未知(11) だった。これら29遺伝子の発現に基づき白質障害高危険群と低危険群に分類すると、白質障害出現に関して高危険群は低危険群に比し3.7倍危険が高かった(p=0.007)。さらに多変量解析によって、この遺伝子発現に基づくリスク分類が、白質障害に関する独立した予測因子であることが証明された(相対危険率:5.2、p=0.0001)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白質障害に関して、臨床因子の抽出に加えて、腫瘍側因子の抽出とその意義について検証を行うことができた。さらに、今後施行を予定している宿主側因子の抽出に備えて、血液中の遺伝子を用いた遺伝子解析の施行に関して院内の倫理審査委員会の承認を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度行った腫瘍側因子に加えて、本年度からは宿主側因子の抽出とその意義に関する検証を行う。 倫理審査委員会の承認も得、具体的な解析に入る予定である。それに際し、まず、限られた症例で次世代シーケンサーを用いてゲノム解析を行って、白質障害に関与が疑われる遺伝子変化(SNPなど)の候補をあげることを、今年度の目標とする。その結果に基づき、より多くの症例を対象に候補遺伝子変化に焦点をあてた遺伝子解析を来年度に行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次世代シーケンサーを用いたゲノム解析を行い、白質障害に関与する遺伝子パターンの候補を明らかにする。そのため、次世代シーケンサー用として1症例に月チップ代10万・試薬代5万円。今年度は10例の解析を目指す。また、解析によって抽出された遺伝子に対象を絞って、SNP 解析を症例を増やして施行する予定で、それに約20万円の試薬代を予定する。これらの解析の結果を公表するため、学会参加旅費として約20万円を計上する。
|
Research Products
(5 results)