2012 Fiscal Year Research-status Report
小児虐待による頭部外傷の事故によるものとの鑑別方法に関する研究
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24592182
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター) |
Principal Investigator |
山崎 麻美 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (10359309)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 虐待 / 頭部外傷 / 画像診断 |
Research Abstract |
小児虐待による頭部外傷(abusive head trauma:AHT)は重症で予後が悪く、医学的治療に成功しても、社会的対応を誤ると子供を死亡させてしまう。児童相談所に通報すべきかを迷うことも多い。臓器移植法改訂に伴い、臓器提供のドナーが虐待の被害者でないかどうか鑑別することも必要である。児童相談所や警察あるいは検察からも、医学的見解を求められることがある。医学的見解は、それらの決定に与える影響が大きく、児、親、家族の将来に大きく関与する。臨床像について画像所見を中心に6型に分類し、臨床所見、虐待対応との関係を検討し画像所見で事故と虐待をどこまで鑑別できるかを検討した。 2000年以降現在までに、経験したAHTおよびそれが疑われる89例を対象とした。89例の内訳は男児59例、女児30例、受傷時年齢1ヵ月から5歳8ヶ月で、74例(83%)は1歳以下であった。頭蓋内損傷を6型に分類した。I型:脳挫傷を伴う広範囲の損傷、II型は急性硬膜下血腫と脳ヘルニアを主体とするもの。 III型:薄い硬膜下血腫に脳浮腫を主体とするもの,いわゆる乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome; SBS)にあたる。IV型は慢性硬膜下血腫に急性出血を合併するもの。V型は小さな硬膜下血腫。VI型はその他で多発性骨折、くも膜下出血を呈するものである。それぞれの例数と平均月齢はI型;7例、II型は9例、III型30例、IV型は8例、V型;23例、VI型は12例であった。予後に関しては、不明5例を除いて、全体で死亡例が15例、不良例が21例、良好48例であった。死亡例および不良例がそれぞれI型;85%、II型は56%、III型60%,IV型は50%,V型0%、VI型は25%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
症例は89例あり、当初目標とした100例には本年度中に到達できる。これらは症例分析の基礎資料となるデータを内包している。2006年の厚生労働省雇用均等・児童家庭局のデータによると、虐待で死亡した子ども死因の21.8%が頭部外傷である と言われており、Minns RA らの2005 年の奏での調査によるデータによれば、虐待による頭部外傷の予後は、死亡率 19%で生存者の65%が何らかな神経系の障害を65%に様々な程度の視力障害 を後遺し、正常に回復するのは22%といわれている。89例のうち、不明の5例を除いた84例のうち、15例(18%)が死亡し、生存者(69例)の21例(30%)が重篤な後遺症を残している。これらの対象群は、これまでの諸外国のデータにも合致するものであり、対象群としては分析に値する。 また方法として画像解析について、有効な分類方法が構築できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これらの事例が、捜査段階あるいは裁判の経過、あるいは児童相談所のプロフェッショナルの職員が調査を行った経過で、明らかになったと判断できる頭部外傷の受傷機転について、画像診断と照らし合わせ、検討する作業が必要になる。特にIII型、IV型、V型で虐待と事故の鑑別が難しい。放射線科医や小児科医あるいは頭部外傷の専門家である小児脳神経外科医とそれらを中心に症例の検討を行い、鑑別点の抽出などの作業を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.上記のための症例検討会を東京、大阪を中心に3回ほど開催する。 2.その内容をまとめて、発表する。 3.市民講座を開き、虐待による小児頭部外傷SBSのメカニズムについて、啓発を行い、予防について考えていく。
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