2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592192
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
松山 幸弘 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20312316)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 質量分析顕微鏡法 / MALDI / プロスタグランディン / LC-MS/MS |
Research Abstract |
正常および損傷脊髄における脂質の変化を、MALDI法を用いた質量分析顕微鏡法(Imaging Mass Spectrometry)で解析した。まず、正常脊髄におけるリン脂質、フォスファチジルコリン(PC)の分布を可視化した。これにより、同じリン脂質の分子種であっても含有する脂肪酸の違いでそれぞれ特異な分布を示していることが分かった。例えば、PC(diacyl-16:0/22:6)は脊髄灰白質の特に前角に発現が強くみられた。また、PC(diacyl-16:0/16:0)は後角に強発現部位があり、後角細胞の層構造に一致していた。これらのようにリン脂質は細胞特異的に産生されていること示された。 次に、脊髄損傷後の変化を正常脊髄と比較することで、時期特異的に増加または減少しているリン脂質を同定し、可視化することができた。例えば、アラキドン酸含有PCは脊髄損傷部を中心に脊髄損傷後1週で著明に増加し、その後減少していた。脊髄損傷後の炎症の状態を反映すると考えられた。また、ドコサヘキサエン酸含有PCは、脊髄損傷後1日より脊髄損傷の中心部より減少し、その後不可逆的に減少した。脊髄損傷における神経細胞の不可逆的脱失の状態を局在まで評価可能であった。 さらに、アラキドン酸含有PC変化の変化に注目し、プロスタグランディンの脊髄損傷後の経時的変化を定量した。これにより、各種プロスタグランディンはそれぞれ時期特異的な増減を示し、脊髄損傷における急性炎症から慢性炎症への変化を反映するものと考えられた。例えば、プロスタグランディンE2は急性期の増加し、プロスタグランディンD2は亜急性期から増加しているなどの時期特異的変化を示せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊髄損傷による脂質の変化は、その時期、局在まで示せた。また、プロスタグランディンの定量での炎症の評価も可能であった。これは、質量分析顕微鏡法がマトリックスの作成方法などを含め、確立してきたことにより、脂質のイオン化、画像化が安定してできたことがある。また、プロスタグランディンの定量が、LC-MS/MSで可能となったため、各種プロスタグランディンが測定できたことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
脂質の研究に関しては、炎症を抑制する薬剤を投与することで、脊髄損傷後のリン脂質の変化がどのように異なるかを質量分析顕微鏡法に加え、免疫染色での組織評価、定量的評価を進めていき。脊髄損傷治療への応用について評価する。 また、プロスタグランディンは脊髄でのLC-MS/MSで定量し、変化を評価したが、臨床的応用も考慮し、脳脊髄液や血液中の変化についても実験する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究二年度目としては昨年に引き続き、 実験動物の購入費とその管理費、他試薬等の消耗品 800000 実験に関する技術補佐員の人件費 500000 研究成果発表のための学会参加旅費交通費 200000、 合計 1500000を予定している。
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