2012 Fiscal Year Research-status Report
椎間板線維輪組織由来の前駆細胞の分離と組織再生への応用
Project/Area Number |
24592212
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中井 知子 東海大学, 医学部, 特定研究員 (20624589)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流、香港 / 国際情報交換、スイス / 国際情報交換、ドイツ |
Research Abstract |
変性椎間板への細胞移植療法として髄核由来の培養細胞を再挿入する臨床研究が実施されているが、近年ヒト線維輪細胞についても、in vitroで多分化能を示すとの報告があり(FengらJ Bone Joint Surg Am 2010)、椎間板再生医療の細胞資源として期待される。 本研究ではマウス線維輪由来培養細胞中に再生力に富む前駆細胞が存在すると仮定し、表面マーカーにより、その分離同定を試みる。三年間の研究計画からなる初年度の実績としては、C57BL/6マウス尾椎線維輪由来細胞(mAF)の培養法を確立し、mAFが間葉系三系統の多分化能を有することをin vitro にて確認した。また主に間葉系幹細胞に特徴的な細胞表面マーカーを解析し、培養過程での経時変化を記録すると共に、予測される前駆細胞マーカーにて培養細胞のソーティングを実施し、得られた細胞の間葉系への多分化能を調査した。 加えて、組織より細胞を分離した直後の初期の表面マーカー発現の解析や、これに基づくソーティングを実現するために、酵素処理法を改良し、10匹のマウス尾椎より分離した細胞を集めてソーティングに供することが可能となった。従来、コラーゲン繊維が緻密な層状構造を成す線維輪組織から、細胞を障害なくバラバラにすることは困難であった。そのため、フローサイトメーターを詰まらせずに実施するには、微細な組織塊や複数の細胞からなる集団を初代培養に持ち込み、一週後に培養皿から回収した細胞を解析するしかなかった。しかし今回、酵素処理法を改良し、障害なく単細胞集団を得ることで、培養前の初期のソーティングを可能にした。 さらに、培養後の細胞の回収には、培養皿からの剥離困難、及び細胞間の強固な付着が、カルシウム依存性の接着であることが予測され、EDATを含む独自の酵素混合液を用いた良好な剥離分散法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度、我々は髄核由来の培養細胞に特定の細胞表面マーカーで分離可能な髄核前駆細胞が存在することを解明し論文発表を行った(Nat Commun. 2012)。これに続き、C57BL/6マウスの尾椎線維輪由来の細胞より、細胞表面マーカーで前駆細胞を分離し再生医療への応用を目指す。今年度はマーカー調査のため、i)からiii)を繰り返した。 i.表面マーカーで前駆細胞を識別する。ii. 表面マーカーで前駆細胞を分離する。iii.分離した前駆細胞を三次元培養で増殖、分化させECMを評価する。iv.最終的に、免疫不全マウスへの移植、評価をする。 具体的には、mAF におけるCD24, CD56, CD73, CD90, CD105, CD140a CD146,CD271, NG2及び、STRO-1 の発現を調査した。ソーティングの実施例を以下に示す。 ① CD105 (Endoglin) 及びCD146 (melanoma cell adhesion molecule)の二重染色により培養細胞をソートし4分画を得た。ソーティング後は脂肪への分化能は消失していた。CD146陽性群は三次元で二週間培養後、タイプI及びタイプIIコラーゲン陽性、アグリカン陰性を示し、線維輪特有のECM発現と考えられた。 ②組織より酵素処理直後の細胞を、CD105 及びNG2 (melanoma chondroitin sulfate proteoglycan) によりソートし4分画を得た。いずれも三系統の分化能を示した。CD105+NG2+集団は、三週で4000倍を超える増殖率を示し、メチルセルロース培地に1000個播種すると70個の球状コロニーが観察され、コロニー形成率はソート前の約二倍であり、幹・前駆細胞の存在が期待された。 以上の基礎的データを得られたため、おおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ひき続き、C57BL/6マウスの尾椎線維輪由来の細胞より、細胞表面マーカーで前駆細胞を分離し再生医療への応用を目指す。 現時点で検討している、表面マーカーが線維輪固有の分化や表現型発現と、どのように関連しているのかを確認する。また、培養細胞より線維輪固有の表現型を誘導できる培養条件の検討を行い、サイトカインの添加等も含めて、増殖培地と分化誘導培地を確立する。現在解析しているマーカーでは、陰性分画にも多分化能が観察されたので、分化段階としてはより未分化な細胞を限定的に選択できるマーカーを検索し、それによってソートした細胞が、分化誘導で効率よく線維輪方向へ分化することを実証する。 三次元培養において、スキャフォールドの導入を試みる。高分子素材のmAFとの適合性を考慮しつつ、良好な組織構築を行いうる素材を導入する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基礎的データを取るための実験を繰り返したため、学会発表が実施できず旅費を使用しなかった。次年度には国内外での学会発表、論文発表を行っていく予定である。現在、整形外科基礎学術集会には、抄録を一件登録し審査中である。
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[Journal Article] Exhaustion of nucleus pulposus progenitor cells with ageing and degeneration of the intervertebral disc.2012
Author(s)
Sakai D, Nakamura Y, Nakai T, Mishima T, Kato S, Grad S, Alini M, Risbud MV, Chan D, Cheah KS, Yamamura K, Masuda K, Okano H, Ando K, Mochida J.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 3
Pages: 1-11
DOI
Peer Reviewed