2013 Fiscal Year Research-status Report
トラニラストによる腹壁外デスモイド腫瘍の進展制御のメカニズムの解明
Project/Area Number |
24592223
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠田 裕介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80456110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 博隆 東京大学, 医学部附属病院, 准教授(Associate Professor) (20345218)
平田 真 東京大学, 医学部附属病院, その他 (50401071)
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Keywords | 骨・軟部腫瘍学 |
Research Abstract |
デスモイド腫瘍は良性腫瘍であるが、非常に強い局所浸潤傾向を示すため、悪性腫瘍に準じた手術療法が標準的治療法とされてきた。しかし、手術療法の治療成績は決して良好とは言えず、高い局所再発率と大きな組織欠損が問題となっている。我々はデスモイド腫瘍の病態・組織像がケロイド・肥厚性瘢痕と類似していることに着目し、ケロイド治療で確率されているトラニラストを用いて、デスモイド腫瘍に対するトラニラストの有効性に関する探索的臨床研究を行っている。症例数を蓄積し、その治療有効性について検討している。また、トラニラストの作用メカニズムの検討をin vitroで行っている。トラニラスト投与によって腫瘍の縮小がみられたものと、効果がみられず増大したものの遺伝子の解析、特にデスモイド腫瘍で高頻度に変異がみられるβ-カテニンの変異について、解析をすすめた。少数ではあるが、デスモイドの効果とβ-カテニンの変異に関しては、一定の傾向はみられなかった。しかしながら、まだ少数の解析であることから、今後は数を増やして解析する予定である。また、トラニラストの作用メカニズムについて、腫瘍細胞から得られた細胞株とマウス皮膚繊維芽細胞に変異型βーカテニンを安定導入した細胞株を用いて、解析を進めていく予定である。具体的には、western blottingを用いて、βーカテニンを修飾する因子、上流因子について、トラニラスト投与による活性の変化を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
デスモイド腫瘍に対するトラニラストの有効性に関する探索的臨床試験に関しては、当初計画していたよりも症例数が増加せず、データの蓄積が思うように行えていない。また、当院に紹介されるデスモイド腫瘍の症例は、他院ですでに手術療法や放射線療法、薬物療法をうけた難治症例が多くなってきており、対象症例のかたよりが生じてきている。トラニラストのin vitroにおける治療効果についての検討は昨年度と同様に進めている。昨年度得られたデスモイド腫瘍の細胞株に加えて、本年新たに得られた臨床サンプルをインフォームドコンセントを得た上で解析に使用している。トラニラストによる抗腫瘍効果について、MTT assayによる増殖能に与える影響を調べたところ、トラニラストの濃度依存的に増殖能を抑制可能であることが確かめられた。一方で、浸潤能に関しては、トラニラスト投与によるデスモイド腫瘍細胞の遊走能に対する影響は残念ながらみられなかった。また、wnt/βーカテニンシグナルに着目し、トラニラストの作用をwestern blottingを用いて調べたところ、GSKなどのkinaseには、その活性に変化がみられなかった。また、βーカテニンの下流因子についてもreal-time PCRを用いて、細胞増殖能に関わる因子について、トラニラスト投与による影響を調べたところ、有意に発現変化を示すものはなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
デスモイド腫瘍に対するトラニラストの有効性に関する探索的臨床試験に関しては、当初計画していたよりも症例数が増加せず、データの蓄積が思うように行えていないこと、また当院に紹介されるデスモイド腫瘍の症例は、他院ですでに手術療法や放射線療法、薬物療法をうけた難治症例が多くなってきており、対象症例のかたよりが生じてきている。以上のことを解決するために、引き続き、骨軟部腫瘍の専門医に患者紹介を依頼すること、また、骨軟部腫瘍の学会でこれまでの経過を報告し、さらなる研究の発展のために、discussionしていきたいと考えている。トラニラストの作用機序を解明するためには、Wnt/βーカテニンシグナルのみに焦点をあてずに、網羅的な解析を行う予定である。これには、in vitroでトラニラスト投与前後での遺伝子発現変化をマイクロアレイを用いて調べていく。また、その結果を、gene ontology解析、パスウェイ解析、gene set enrich analysisなどの解析手段を用いて、さらなる解析を進めていく。また、臨床的にトラニラストの効果があった群と無効であった群の腫瘍細胞の遺伝子プロファイリングをマイクロアレイを用いて解析していきたい。さらに、ヌードマウスを用いたマウスのin vivoの解析を行って行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していたよりも症例数が増加しなかったために、今後のデータ蓄積、学会等での発表に必要な経費となる。 トラニラストの作用機序を解明するための解析に必要な試薬、機器類。 ヌードマウスを用いたマウスのin vivoの解析に必要な試薬、機器等。
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