2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592224
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
柳下 和慶 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (10359672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 光裕 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (90451971)
加藤 剛 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (80447490)
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Keywords | 高気圧酸素 / 筋損傷 / 筋再生 |
Research Abstract |
昨年度は、安定した筋損傷モデルである薬剤性筋損傷モデルラットを作製し、対照(無治療)群と比較することで高気圧酸素治療(HBO)の有効性を評価した。 今年度は、加圧のない酸素暴露のみ(NBO)群と加圧のみの(NBA)群を作製して、筋制御因子だけでなく成長因子の発現解析を追加して評価を行った。方法は、昨年度と同様に薬剤性筋損傷モデルを作製し、経時的に損傷筋を摘出して損傷筋組織評価を行い、筋衛星細胞数の変化を解析した。損傷ラットは無治療(NT)群、HBO群、NBO群、HBA群の4群に分け、損傷後1日目から、HBO 群には2.5気圧下にて、NBO群には大気圧下にて2時間の100%酸素曝露を、HBA 群には2.5気圧下にて2時間の空気曝露を週5回、2週間行った。損傷後1、3、5、8、15日目に損傷筋を摘出し、筋線維横断面積の測定、筋分化制御因子、成長因子の発現解析を行った。HBO群では、損傷後3日と5日目においてMyoD、Myogenin、IGF1 mRNA発現量およびMyoD陽性細胞数が、NT、NBO、HBA群より高値であった。さらに、HBO群の損傷後の再生筋線維面積は、他群に比べ有意に増大していることが確認された。また、筋電気生理学的手法を用いて損傷8日目の前脛骨筋張力を評価した。その結果、HBO群でのテタヌス刺激での張力が増強していた。 継続的な高圧・高酸素環境は、筋損傷回復促進効果を認め、HBOによる損傷組織内酸素濃度の増加が骨格筋再生に重要な筋衛星細胞の分化だけでなく筋芽細胞の成長促進をもたらし、筋張力の増大をきたすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床的には、筋挫傷患者においてHBOによって疼痛が軽減して早期に復帰することが明らかになっているが、詳細なHBOの機序について報告されていない。今年度は、損傷筋に対して圧力よりも組織酸素濃度の増大が筋衛星細胞を活性化させて筋再生を促進する可能性が示唆された。昨年度の結果と併せて論文を作成し受理された(Horie M, Yagishita K et al. Enhancement of satellite cell differentiation and functional recovery in injured skeletal muscle by hyperbaric oxygen treatment. J Appl Physiol (1985). 2014)。本研究計画によってHBO作用機序の一部が明らかとなり、本研究がおおむね順調に推進されていると考えている。しかし、本研究内で筋組織内酸素分圧の測定はされておらず、純酸素2.5気圧の環境がどの程度損傷筋内酸素分圧の増大をきたすのか明らかにする必要があると考えている。一方、研究結果から得られたHBOによる筋分化促進因子の発現増強には筋再生増殖因子の活性と密接に関わっていると考えている。よって筋損傷後の増殖活性の評価が必要になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果から、高圧・高酸素環境によってどの程度損傷筋内の組織酸素分圧を増加させるのか実際に計測する必要があると考えている。そのためには高気圧チャンバー内に組織内測定用の酸素プローベを挿入して計測できるシステムを構築する必要があると考えている。分子生物学的には、筋分化制御因子だけでなく増殖因子との関係にも注目しHBOによる筋増殖活性を評価する予定である。また、酸素濃度の増加と筋制御の関連について活性酸素やiNOSといった酸化ストレス分子について解析を進める予定である。一方、筋損傷モデルについては、薬剤性筋損傷モデルを使用しているが、同モデルでの筋再生機序の解明とともに当初の研究計画にある打撲性筋損傷モデルラットの作製についても進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物実験施設の改修があり、予定数の動物実験ができなかった。そのため組織、分子生物学的試薬の消耗品使用が少なかった。 今年後は施設の改修も終了し、動物を用いた追加実験を行い昨年度よりも多くの消耗品が必要で差額分も使用する。また、学会発表や論文作成に必要な費用が必要である。
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