2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592228
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
林 正徳 信州大学, 医学部, 助教 (20624703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 幸男 信州大学, 医学部附属病院, 助教 (00549488)
内山 茂晴 信州大学, 医学部, 准教授 (10242679)
加藤 博之 信州大学, 医学部, 教授 (40204490)
植村 一貴 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (50624706)
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Keywords | 腱鞘炎 / 老化 / 糖尿病 / 腱細胞 / 軟骨細胞 / 軟骨化生 / Lubricin |
Research Abstract |
平成25年度は24年度に引き続き,老化モデルマウス(SAMP6マウス)および糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)における腱とその周辺組織の組織学的解析と腱組織における遺伝子発現解析を行った. 8, 16, 24週齢のSAMP6マウス各10匹の後肢第2~4趾より長趾屈筋腱を採取,リアルタイムRCRにより各種マーカーとLubricinの発現を定量し,コントロールマウスと比較した.その結果,SAMP6マウス, コントロールマウスともに腱細胞のマーカーであるTenomodulinと腱の主要基質であるCOL1A2の発現が24週齢で有意に低下し,逆に軟骨細胞のマーカーであるSOX9,Aggrecanの発現が有意に増加していた.特に,Tenomodulin, SOX9,Aggrecanについては,コントロールマウスと比べSAMP6マウスにおいてその傾向が強かった.また,腱の滑走抵抗を減少させる働きのあるLubricinについては,SAMP6マウスにおいて24週齢で有意に発現が低下し,コントロールマウスでは逆に増加していた.以上の結果は,Lubricinノックアウトマウスを用いた先行実験の結果や,弾発指患者の腱鞘と屈筋腱に軟骨化生を認めたとする過去の報告と一致していた.また,db/dbマウスについては,現在同様の方法で遺伝子発現解析を行っている. SAMP6マウスを用いた遺伝子発現解析の結果,発現の変化が大きかったTenomodulinとAggrecanについては,引き続き免疫組織学的に解析を行った.その結果,蛋白レベルでは両者の発現に加齢に伴う明らかな変化は確認されなかった.しかし,いずれのマウスの腱組織内においてもTenomodulinとAggrecanの両方の抗体で同時に染まる細胞とTenomodulinの抗体のみで染まる細胞の少なくとも2種類が存在することが確認された.また,Alcian Blue染色を行ったところ,軟骨細胞様の比較的大きな細胞は主に屈筋腱の背側と周辺に局在し,中心部分には比較的小さな腱細胞と思われる細胞が局在していることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子発現解析については,マウスの長趾屈筋腱からのRNA抽出とリアルタイムPCRの条件の最適化にかなりの時間を要してしまったが,最終的には信頼性の高いデータが得られるようになった. 組織学的解析では,現時点で加齢に伴う明らかな変化は観察されていない.しかし,観察を行った標本数が少ないことから,今後さらに検体数や切片の枚数を増やし,より詳細に検討する必要がある.また,これまでの実験から屈筋腱組織内に少なくとも蛋白の発現パターンが異なる2種類の細胞が存在する可能性が示されており,この結果についても二重染色などを用いて,さらに詳細に調べる必要がある.またLubricinについても組織学的に発現量と局在を調べるための予備実験を行ってきたが,未だLubricinに対する最適な抗体が見つかっておらず,今後実験方法についての検討が必要である. db/dbマウスについては,マウスの死亡などによりSAMP6マウスと比較して全体的に実験が遅れてしまったが,遺伝子発現解析から組織学的解析までの実験系はSAMP6マウスの実験で既に確立されているため,引き続き同様の方法で実験を継続する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
SAMP6マウスについては,現在行っている免疫組織学的解析をできる限り早期に終了させる.また昨年,Lubricinノックアウトマウスの軟骨組織内において,軟骨細胞のアポトーシスが高率に起こるという報告がなされたことから,Lubricinの発現の低下が確認されたSAMP6マウスの腱組織内におけるアポトーシスの発生率についても検討を行う予定である.db/dbマウスについては,引き続き遺伝子発現解析を行い,その結果を基に今後解析を進める遺伝子の絞り込みを行う.変化を認めた遺伝子に対しては,免疫染色により組織内での発現の量や局在をコントロールマウスと比較する. 当初,SAMP6マウスにおける腱組織由来幹細胞の性質の変化について検討を行う予定であったが,昨年Kohlerらによって老化に伴う腱組織由来幹細胞の変化を詳細に調べた結果が報告されたことから,実験内容の重複を考慮し,幹細胞の性質に関連した一連の実験はひとまず見送ることとした.しかし,これまでの実験により,SAMP6マウスにおいてLubricinの発現量の低下が確認されていることから,Lubricinの発現量の変化が腱組織由来幹細胞の増殖や分化に与える影響については,今後可能な範囲で実験を進める予定である. SAMP6マウスについては,遺伝子発現解析から免疫組織学的解析までの結果をまとめ,日本整形外科学基礎学術集会ならびに米国のOrthopaedic Research Society(ORS)において発表し、さらに英論文として国際学術雑誌に投稿する.db/dbマウスについても順次結果をまとめ,学会発表ならびに論文作成の準備を進める予定である.
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