2012 Fiscal Year Research-status Report
長管骨の長径成長を促進する新規因子の発見と骨再生治療への応用
Project/Area Number |
24592264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Tokushima National Hospital |
Principal Investigator |
高田 信二郎 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, その他 (20284292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 夏生 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00157984)
佐藤 紀 徳島大学, 大学病院, その他 (00448333)
高橋 光彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (10372715)
江西 哲也 徳島大学, 大学病院, 助教 (20467806)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 骨・軟骨代謝学 |
Research Abstract |
申請者は、成長期ラット大腿骨骨幹部の骨膜を全周性に切除することにより、その長径が過成長する動物実験モデルを確立した。この度の研究は、成長軟骨板における内軟骨性骨化の新規活性因子を見出すものである。 実験動物は、週齢8週雄Wistarラットを用いた。全身麻酔の後、右大腿骨骨幹部骨膜を全周性に切除し(骨膜切除群)、左大腿骨は非侵襲として対照群とした。以後、4週間の自由飼育を行ったのち安楽死させ、両側大腿骨を摘出した。 骨膜切除後4週後の大腿骨長径は、骨膜切除群39.4±1.3 mm、対照群38.5±0.8 mmと、骨膜切除群は対照群に比べて有意に長径が長かった(p=0.0086)。直径1 mmのスクリュー1本を大腿骨骨幹部中央に刺入固定して、そのスクリューと大腿骨の遠位端あるいは近位端からの距離を経時的に測定すると、スクリューと遠位端までの距離の変化率は、骨膜切除群133.7±5.7%、対照群127.9±3.5%と、骨膜切除群は対照群に比べて有意に高かった(p=0.0197)。 骨形態計測法で測定した長径成長速度は、骨膜切除群92.3±5.3 μm/day、対照群54.4±4.6 μm/dayと、骨膜切除群は対照群に比べて有意に高い値を示した(p<0.0001)。 組織学的解析では、骨膜切除群は対照群に比べて、成長軟骨板幅が有意に増していた(p<0.05)。さらに、骨膜切除群における肥大軟骨細胞数は対照群に比べて有意に多く(p<0.05)、さらに肥大軟骨細胞層幅も骨膜切除減は対照群に比べて有意に拡大していた(p<0.05)。TRAP染色では、骨膜切除群は対照群と比較して、破骨細胞数が有意に多かった(p<0.05)。ALP染色で染色した骨芽細胞数は、骨膜切除群は対照群に比べて有意に多数を占めた(p<0.05)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成長期ラット大腿骨骨幹部骨膜の全周性切除が、成長軟骨板における内軟骨性骨化におよぼす影響は、骨膜切除後4週間を経由したラットにおいて骨形態計測を実施した。その結果、長径成長速度をはじめとする各測定値において、骨膜切除群は対照群に比べて有意な変化をもたらすことがわかった。 さらに、大腿骨骨幹部骨膜の全周性切除でもたらさせる長径過成長は、大腿骨近位成長軟骨板と同遠位成長軟骨板のいずれの関わりが大きいかを解析した。その方法は、骨膜切除群と対照群の大腿骨骨幹部に直径1 mmのスクリューを刺入固定したのち、2週毎、ソフテックス撮影を実施して、大腿骨近位端あるいは大腿骨遠位端とスクリューとの各距離を測定した。その結果、骨膜全周性切除がもたらす長径過成長は、大腿骨遠位成長軟骨板は同近位成長軟骨板に比べて大きいことが明らかになった。 組織学的解析では、大腿骨遠位成長軟骨板近傍の1次および2次海綿骨におけるTRAP染色を用いた破骨細胞数、ALP染色を用いた骨芽細胞数とを測定した。その結果、骨膜切除群の大腿骨近位成長軟骨板近傍の1次および2次海綿骨における破骨細胞数と骨芽細胞数は、対照群に比べて、いずれも有意に多かった(p<0.05)。 現在、組織学的解析は、免疫組織化学的解析として内軟骨性骨化に関わるタンパク質であるRunx2、Cbfa1、PTH-rP、IHH、VEGF、X型コラーゲン、ペリオスチンの各々について染色条件設定を進めながら、これら蛋白の成長軟骨板、海綿骨、皮質骨、残存骨膜、骨格筋組織における分布について解析を進めている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の研究を実施する。 【実験1】内軟骨性骨化に関わる遺伝子産物の解析と、肥大軟骨細胞におけるX型コラーゲン、骨膜におけるペリオスチンの検出を実施する。内軟骨性骨化に関わるタンパク質であるRunx2、Cbfb、PTH-rP、IHH、VEGFの局在や、肥大軟骨細胞におけるX型コラーゲンとペリオスチンの検出は、免疫組織化学的解析の手法を用いる。 【実験2】成長軟骨板、海綿骨、皮質骨、残存骨膜、骨格筋組織に対して、DNAマイクロアレイ法を応用する。本実験では、長管骨長径の過成長に関わる既知の遺伝子発現の変化と、未知の新しい遺伝子発現を捉える。 【実験3】電子顕微鏡を用いた成長軟骨板の各軟骨細胞層における微細構造を解析する。骨膜切除群の成長軟骨板における各軟骨細胞層において、その微細構造(粗面小胞体、ミトコンドリアなど)の変化を、対照群との間で比較する。その形態変化から、小胞体ストレスの有無など、細胞機能の変化を明らかにする。 【実験4】in situ hybridization法を用いた内軟骨性骨化に関わる遺伝子群発現の解析を行う。軟骨細胞の成熟と分化とに関わる遺伝子群であるRunx2、Cbfb、PTH-rP、IHH、VEGFのmRNAの発現を、in situ hybridizationを用いて解析する。 【実験5】プロテオーム解析を用いた内軟骨性骨化に関わる新規タンパク質の解析を行う。成長軟骨板、骨、残存骨膜、骨格筋組織に対して、二次元電気泳動法を応用してタンパク質を分離する。個々のタンパク質の同定には、質量分析計を用いる。さらに、イメージング質量分析計を用いて、組織切片上で質量解析を実施して、未知の遺伝子産物をin vitro イメージングとして見出す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成25年度)使用額(B-A)は、1,006,320円である。 その使用内訳は、消耗品として実験動物300,000円、試薬506,320円である。成果発表は、外国旅費(アメリカ合衆国)200,000円である。 これらの研究費は、平成25年度交付の研究費に加え、上記、「今後の研究の推進方策」で記述した研究を進める。
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Research Products
(5 results)