2013 Fiscal Year Research-status Report
軟骨変性と軟骨再生過程における低分子量蛋白と細胞骨格の関与についての研究
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24592267
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 秀一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40294938)
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Keywords | スタチン / 低分量G蛋白 / 軟骨変性 / 軟骨再生 |
Research Abstract |
siRNAによる低分子Gタンパクの発現を抑制したモデルを用いて、軟骨変性と軟骨再生過程における低分子量G蛋白と細胞骨格・接着因子の関与についてのメカニズムの検討を行った。 低分子G蛋白の発現抑制が軟骨再生因子に与える影響を解明するため、siRNAでトランスフェクションした軟骨細胞における軟骨特異的遺伝子の発現をRT-PCRで測定を行った。また、同時にスタチンの作用との比較も行った。スタチンは、type2 collagen (COL2)、aggrecan(ACAN)、PRG4、SOX9のすべての因子の発現を有意に促進した。一方、低分子G蛋白のRhoA, Rac1, Cdc42のsiRNAを行った結果では、siRac1が有意にすべての軟骨特異的遺伝子の発現を誘導した。COL2とACANについては、siRhoAは、PRG4とSOX9の発現を亢進したが、COL2とACANの発現は抑制した。軟骨分化のマスター遺伝子であるSOX9は、siRhoA, siRac1, siCDC42のすべての低分子G蛋白のノックダウンにおいて促進されることがわかり、低分子量G蛋白の抑制により軟骨分化再生を促進することが示唆された。 続いて、低分子G蛋白の発現抑制が軟骨変性因子に与える影響を解明するため、低分子量G蛋白をノックダウンした滑膜細胞におけるIL-6とiNOSの発現をRT-PCRで測定した。スタチンは、IL6とiNOSの両方の発現を抑制した。siRAC1はスタチン同様に、iNOSの発現を抑制した。RhoAとCDC42のノックダウンはIL6の発現を促進した。引き続き、蛋白レベルでの差を見るためにウエスタンブロットもしくはELISAによる検討が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度までに保存ストックしたヒト軟骨細胞と滑膜細胞を用いて、siRNAによる低分子G蛋白のノックダウン細胞での軟骨分化マーカー、軟骨異化マーカーの発現の検討を行うことができた。本研究で使用した軟骨細胞は新鮮ヒト軟骨より採取した軟骨細胞であり、遺伝子発現にはドナー間での差が生じる。そのため、統計的に有意な結果を得るためには、多くのドナーでの検討が必要になってくる。これまで軟骨より軟骨細胞の採取や培養に関する手技は一定のプロトコールを作成することができており、また、3種類の低分子量G蛋白のsiRNAの条件検討を行い、複数回の変更を経てsiRNAの濃度や作用時間を決定し、結果として蛋白レベルでのノックダウンすることに成功している。現在までのところ、複数のドナーの軟骨細胞と滑膜細胞でsiRNAの検討を行うことができており、遺伝子発現の検討はおおむね順調に行えている。今後の実験は、これらのモデルを用いてTGFβやIL1βなどの刺激下や3次元培養などでサンプルを採取し、遺伝子発現や蛋白産生への影響を検討していけるので、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りに、現在まで達成した実験結果をさらに発展させ、本研究の目的遂行のため、詳細なメカニズム解析を効率よく行う。そのためにsiRNAモデルからのサンプル採取を効率的に行い、PCR、ウエスタンブロット、ELISAなどの機能評価のための実験を同時に行う。また、今後は低分子G蛋白の発現変化に加え、細胞骨格因子の定量をウエスタンブロットや免疫染色で確認し、siRNAによるノックダウンモデルの作成を行う。また、低分子G蛋白については、DNAプラスミドによる強発現モデルの作成も同時に行っていく。結果の考察を多方面からすぐに行い、修正すべきところがあれば、条件検討を再度行う。
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