2012 Fiscal Year Research-status Report
滑膜間葉系幹細胞に着目したパールカンによる変形性膝関節症の骨棘形成制御
Project/Area Number |
24592281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
石島 旨章 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70365576)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平澤 恵理 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50245718)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 変形性膝関節症 / パールカン / 骨棘 |
Research Abstract |
変形性膝関節症(膝OA)における骨棘は、関節軟骨の変性と摩耗に伴う反応性病変として考えられ、その病態や臨床的意義について関心が低かったが、近年の疫学研究の成果より、臨床症状との関連が明らかとなってきた(Muraki他, Arthritis Rheum, 2011; Kinds他, J Rheumatol, 2013)。しかし、その病態機序の大部分が不明であり、制御は不可能である。 膝OAにおける骨棘は、関節軟骨辺縁近傍の滑膜に存在する間葉系幹細胞(MSCs)が軟骨そして骨へと分化し発生する。本研究では、関節内で滑膜にも軟骨にも発現する細胞外マトリックスの一つであるパールカンに着目し、その生物学的機能を明らかにしたのち、膝OAという疾患における機序も検討し、その制御を試みる。 マウス成長軟骨の発達後期では、軟骨の肥大化ののち血管侵入がおき、軟骨が骨へと置換される。本年度は、この血管侵入の過程において既知の重要な因子であるVEGFのみでは不十分であり、パールカンが重要な役割を担うことを示した(Ishijima, Futami, Kaneko, Arikawa-Hirasawa他, Matrix Biol, 2012)。また、骨棘形成の機序解明にはマウスを用いた実験が必須であるが、従来マウス膝関節の滑膜から細胞を採取し培養する方法が確立されていなかった。我々は、マウス膝関節の滑膜から増殖能と多分化能を備えた間葉系細胞(mSMCs)を分離及び培養するための条件を設定した(Futami, Ishijima, Kaneko, Arikawa-Hirasawa他, PLos One, 2012)。 これらを基に、平成25年度では滑膜パールカン欠損マウスを用いたin vivoの実験を行うことで、滑膜に発現するパールカンが膝OAの骨棘形成に重要な機能を有することを明らかとすることを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変形性膝関節症(膝OA)についての研究のなかでも、骨棘に着目した研究は少ない。パールカンは,胎生期の軟骨形成に必須であることが、遺伝子欠損マウスの解析から明らかとなり、続いてヒトでもこれが欠損した場合、重度の軟骨形成不全により胎生致死となることから、現実に疾患に深く関わることが明らかとなっていた。しかし、その機能の重要性と多機能性が故に、詳細な機能解析が進まなかった。 本研究は、膝OAというcommon diseaseにおけるパールカンの機能解析が目的であるが、平成24年度では、まず今まで依然不明であった軟骨形成後期の軟骨が骨に置換される過程で重要な事象である血管侵入において、この過程に必須の役割を担う因子の一つであるVGEFが機能するためにパールカンが必要であることを示した(Ishijima, Futami, Kaneko, Arikawa-Hirasawa他, Matrix Biol, 2012)。 また、膝OAの骨棘形成における滑膜のパールカンの機能を明らかにするためには、細胞レベルにおいて滑膜細胞を用いた実験が必要であるが、正常なマウス膝関節の滑膜を採取・培養し実験に用いる系が存在しなかった。そのため、本年度において、正常マウスの膝関節から滑膜を採取・培養し、この細胞が既知の如く増殖能が豊富で、さらに軟骨や骨、そして脂肪へと分化する多分化能を備えることを示した(Futami, Ishijima, Kaneko, Arikawa-Hirasawa他, PLos One, 2012)。 本年度の成果は以上であり、当初の予定の滑膜パールカン欠損マウスを用いた骨棘形成実験について論文にまで仕上げることはできなかった。しかし、実験は順調に進んであり、また仮説を裏付ける成果も得られつつあることから、おおむね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の成果をふまえ、次年度は本研究計画の本論である、滑膜に発現するパールカンが、膝OAにおいて骨棘形成に機能しているのか否か、さらに機能している場合にはその機序について研究を推進する。まず主にマウスを用いたin vivoの実験を、当初の計画に沿った方法で進める。 具体的には、軟骨にのみパールカンを発現し、滑膜にはパールカンを発現しない滑膜パールカン欠損マウスに膝OAモデルを作成し、コントロールマウスとの比較から、滑膜に発現するパールカンのOA骨棘形成における機能を明らかにする。滑膜パールカン欠損マウスとコントロールマウスに,下記二つのOAモデル(各群 n=10)を行う。一つは、[1] 内側側副靭帯切離と内側半月板除去による関節不安定性によるOAモデル(Osteoarthritis Cartilage 2005)であり、もう一つは、[2] 膝関節内へのTGF-β注射によるOAモデル(Osteoarthritis Cartilage 2007)である。 解析は、術後1・2・4・8週後の組織学的解析を行い、滑膜に発現するパールカンの有無により、OA発症及びその進行の相違を検討する。具体的には、組織学的なOA評価法[亀倉(Osteoarthritis Cartilage 2005)や、OARSI(Osteoarthritis Research Society International)]に従い、関節軟骨の変性と摩耗、滑膜炎そして骨棘形成の程度を評価する。 関節軟骨の評価には、HE染色、サフラニン-O染色、パールカン、II型コラーゲン、X型コラーゲン等などの免疫学的組織染色を行う。また、滑膜炎の評価は、HE染色にて行う。骨棘形成の評価は、HE染色、サフラニン-O染色、パールカンやII型コラーゲン、X型コラーゲンやVEGF、PCNA、リン酸化smad2などの免疫学的組織染色により行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、上記の主にin vivoの実験を実施するのに必要な試薬や物品購入に必要である。 具体的には、各種組織標本の作製や、それを用いた免疫学的染色に用いる抗体などを購入する必要がある。また、将来的には得られた結果の裏付けにin vitroの実験も必要であり、これに必要な物品購入もひつようである。マウスを用いて仮説を証明するものであり、その維持にも費用を要する。 さらに、得られたデータを解析するためのコンピューターやソフト、そしてデータ解析に用いる統計処理用ソフトの購入も計画している。 また、成果発表や関連情報の収集の目的に関連学会への出席を予定しており、これに必要な費用にも用いる計画である。そして成果を英文論文に仕上げるための過程に、英文校正や投稿にかかる費用が生じこれに研究費を用いる予定である。 また、実験やデータ処理に予定以上に時間がかかる場合には、実験補助員を必要とする可能性もあり、その謝礼として研究費を用いる可能性も現時点では考えられる。
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Research Products
(2 results)