2013 Fiscal Year Research-status Report
滑膜間葉系幹細胞に着目したパールカンによる変形性膝関節症の骨棘形成制御
Project/Area Number |
24592281
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
石島 旨章 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70365576)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平澤 恵理 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50245718)
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Keywords | 変形性膝関節症 / パールカン / 骨棘 / 間葉系幹細胞 |
Research Abstract |
変形性膝関節症(膝OA)は、関節軟骨の変性と摩耗に端を発し、半月板や滑膜そして軟骨下骨にまで病変が広がり、関節軟骨の辺縁では骨棘が形成される関節疾患である。骨棘は、反応性病変として考えられ、病態や臨床的意義について関心が低かったが、近年の疫学研究から、臨床症状との関連が明らかとなった(Muraki他, Arthritis Rheum, 2011; Kinds他, J Rheumatol, 2013)。従って、骨棘の制御は膝OAの治療ターゲットになりうる可能性がある。 骨棘は、関節軟骨辺縁近傍の滑膜に存在する間葉系幹細胞(MSCs)が軟骨そして骨へと分化し発生する。本研究では、関節内で滑膜及び軟骨に発現する細胞外マトリックスの一つであるパールカンに着目し、その生物学的機能及び膝OAという疾患における機序を検討し、その制御を試みる。 マウス成長軟骨の発達後期では、軟骨肥大化ののち血管侵入がおき、骨へと置換される。昨年度は、この血管侵入の過程においてVEGFという既知の重要な因子に加え、パールカンが重要な役割を担うことを示した(Ishijima, Arikawa-Hirasawa他, Matrix Biol, 2012)。また、骨棘形成の機序解明にはマウスを用いた実験が必須であるが、従来マウス膝関節の滑膜から細胞を採取し培養する方法が確立されておらず、我々は、この条件を設定した(Futami, Ishijima, Arikawa-Hirasawa他, PLos One, 2012)。 平成25年度では滑膜パールカン欠損マウスに膝OAを誘導すると、対照マウスで認められる軟骨損傷と骨棘形成のうち、骨棘形成のみが抑制されることを示した。これにより、滑膜に発現するパールカンが膝OAの骨棘形成に重要な機能を有することが明らかとなった(Kaneko, Ishijima, Arikawa-Hirasawa他, Matrix Biol, 2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変形性膝関節症(膝OA)についての研究のなかでも、骨棘に着目した研究は少ない。パールカンは,胎生期の軟骨形成に必須であることが、遺伝子欠損マウスの解析から明らかとなり、続いてヒトでもこれが欠損した場合、重度の軟骨形成不全により胎生致死となることから、現実に疾患に深く関わることが明らかとなっていた。しかし、その機能の重要性と多機能性が故に、詳細な機能解析が進まなかった。 本研究は、膝OAというcommon diseaseにおけるパールカンの機能解析が目的であるが、平成24年度では、まず今まで依然不明であった軟骨形成後期の軟骨が骨に置換される過程で重要な事象である血管侵入において、この過程に必須の役割を担う因子の一つであるVGEFが機能するためにパールカンが必要であることを示した(Ishijima, Futami, Kaneko, Arikawa-Hirasawa他, Matrix Biol, 2012)。 また、膝OAの骨棘形成における滑膜のパールカンの機能を明らかにするためには、細胞レベルにおいて滑膜細胞を用いた実験が必要であるが、正常なマウス膝関節の滑膜を採取・培養し実験に用いる系が存在しなかった。そのため、本年度において、正常マウスの膝関節から滑膜を採取・培養し、この細胞が既知の如く増殖能が豊富で、さらに軟骨や骨、そして脂肪へと分化する多分化能を備えることを示した(Futami, Ishijima, Kaneko, Arikawa-Hirasawa他, PLos One, 2012)。 平成25年度では、滑膜パールカン欠損マウスでは骨棘形成が抑制されることを示した(Kaneko, Ishijima, Arikawa-Hirasawa他, Matrix Biol, 2013)。従って、おおむね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の成果をふまえ、次年度は滑膜から軟骨に分化する過程において、パールカンがどの程度重要な機能有しているのかを検討するため、我々が確立したマウス膝関節内の滑膜を採取し培養する方法を活用して、in vitroの実験を進める予定である。 具体的には、以下の実験を計画している。滑膜パールカン欠損及び対照マウスの両膝関節から滑膜を採取し、滑膜間葉系幹細胞(SMSCs)の初代培養細胞を獲得する。その細胞の増殖能を、増殖曲線、継代回数の限界、コロニー形成能から比較する。次に、骨、脂肪分化は平面培養にて、軟骨への分化はmicromass cultureにて行い、滑膜からの各組織への分化能について、組織学的検討を行う。さらに、SMSCsからの軟骨誘導過程のパールカン欠損による遺伝子レベルのシグナル変化を検討する。そして、FACSを用いて表面抗原(CD29,CD34,CD45,CD117,Sca-1)の表面抗原の発現パターンの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の如く、研究はおおむね順調に進んでいるが、実験に使用する物品費が予想を下回ったためわずかに次年度使用額が生じた。 今年度は、主にin vitroの実験が主になるため物品費としての支出と、成果発表の回数が増えることが予想されるため旅費の支出が増加することを予想している。
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Research Products
(1 results)