2012 Fiscal Year Research-status Report
軟骨細胞核酸修復酵素APエンドヌクレアーゼ活性と軟骨変性機序の解析
Project/Area Number |
24592286
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
油井 直子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (20266696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
唐澤 里江 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50434410)
遊道 和雄 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60272928)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 軟骨細胞 / 変性 / APEX2 / 変形性関節症 |
Research Abstract |
変形性関節症(Osteoarthritis, OA)の発症に関与する機械的ストレスに対する軟骨細胞応答や防御機構、軟骨変性の機序については未だ不明な点が多い。最近我々は、軟骨変性・異化の誘導因子に応答したDNA修復酵素APEX2の発現が、正常軟骨細胞ではみられず、OA患者由来軟骨細胞のみにおいて上昇していることを見出した。近年のDNA修復酵素に関する報告では、DNA塩基グアニン酸化体に対する防御因子DNA修復酵素の発現低下が、筋萎縮性側索硬化症やアルツハイマー病の神経細胞において確認されており、神経変性疾患の病因・病態との関連が示唆されている。さらに、神経以外の組織の変性疾患における当該因子の病態への関与も報告されている。そこで、このAPEX2に関する研究成果や先行研究をもとに、関節軟骨の変性病態解明のために以下の検討を行ってきた。 (1)OA誘導因子に応答する軟骨細胞DNA損傷修復酵素APEX2活性の調節機構の解明 (2)OA誘導因子に応答したDNA修復酵素調節機構の変化が軟骨変性の誘因となるか否か その結果、正常軟骨とOA軟骨において、軟骨誘導異化因子( IL-1β、過酸化水素)を加えることで経時的なAPEX2の発現頻度に差が生じていることが明らかになった。また、RNA干渉法を用いたAPEX2欠損軟骨細胞を樹立したのち、この細胞をもちいて、軟骨誘導異化因子( IL-1β、過酸化水素)刺激下の軟骨細胞活性を比較検討した。さらに、自然発症のOAマウスの病理組織標本をもちいてAPEX2の免疫染色を行った。部位的な陽性細胞発現の違いや、変性度と陽性細胞発現頻度についても相関の有無を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度として、軟骨細胞のOA誘導因子ストレス負荷として軟骨誘導異化因子(炎症性サイトカインである IL-1β;)刺激下の軟骨細胞活性応答APEX2の防御機構としての発現の有無が確認でき、当初の計画どおり進捗した。また、実験で樹立したAPEX2欠損軟骨細胞において、軟骨誘導異化因子(炎症性サイトカインである IL-1β;)刺激下の軟骨細胞活性を解析して[評価項目: anabolic activity (プロテオグリカン, ), APEX2の防御的役割を検証することができた。 さらに、自然発症OAマウスの関節組織標本におけるAPEX2発現度を免疫染色により解析し、軟骨変性度(組織学的所見)とAPEX2発現度との相関についても解析を進めており、研究の達成度についてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)軟骨細胞のOA誘導因子・メカニカルストレス応答機構としてのDNA損傷修復酵素APEX2活性の検証を推進する。メカニカルストレス負荷培養実験系として、すでに確立されている静水圧下軟骨細胞培養システムおよび培養細胞・進展圧縮装置を用いる。静水圧下軟骨細胞培養システムは関節内の生理的圧力(3~5 MPa)から過大圧力(15~30 MPa以上)負荷条件下で軟骨細胞培養を行うことができ、この実験系を用いて様々な圧条件下で細胞特性を解析する(実験方法参考文献:J Bioscience Bioengineering 103(6), 578-581, 2007.)。培養細胞・進展圧縮装置は細胞に一軸方向の進展圧縮の力学的負荷を加えて培養することが可能なシステムで、進展圧縮率10%の力学的刺激を1Hzで負荷して軟骨細胞を培養する(実験方法参考文献:J Cell Sci. 118:3289-304, 2005.)。 これらの外因性ストレス負荷実験系で軟骨細胞を培養し、以下の解析を行う:DNA損傷修復酵素APEX2の発現・活性の細胞内情報伝達路の解析(ストレス刺激条件下における翻訳後修飾の網羅的プロテオミクス解析): 実験的メカニカルストレス下における軟骨細胞のDNA損傷修復酵素APEX2活性化の細胞内情報伝達路を、翻訳後修飾の網羅的解析法(プロテオミクス解析)により分析する。細胞のストレス応答系は細胞内情報伝達経路によって調節されている。我々は、RNA干渉法を用いたAPEX2欠損軟骨細胞および遺伝子導入によるAPEX2過剰発現軟骨細胞を樹立し、各種ストレス条件下におけるこれらの細胞のリン酸化翻訳後修飾の網羅的解析を比較分析し、OA誘導因子に応答した軟骨細胞DNA修復酵素APEX2の細胞内情報伝達路を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に行った実験を継続し引き継き下記の内容を行っていく。 OA誘導因子ストレス応答APEX2の防御機構としての役割の解析: 作成したAPEX2欠損軟骨細胞及びAPEX2過剰発現細胞において、軟骨誘導異化因子(実験的メカニカルストレス, IL-β;)刺激下の軟骨細胞活性を解析して[評価項目: anabolic activity (プロテオグリカン, II型コラーゲン産生能), catabolic activity(軟骨基質分解酵素MMPs, アポトーシス)]、APEX2の防御的役割を検証する。 OA患者関節軟骨組織におけるストレス応答APEX2発現度と軟骨変性度との関連:OA患者から同意を得て採取し関節組織標本におけるAPEX2発現度を免疫染色により解析し、軟骨変性度(組織学的所見)や臨床所見等の臨床的背景との関連を分析する。軟骨細胞のOA誘導因子・メカニカルストレス応答機構としてのDNA損傷修復酵素APEX2活性の検証:メカニカルストレス負荷培養実験系として、すでに確立されている静水圧下軟骨細胞培養システムおよび培養細胞・進展圧縮装置を用いる。静水圧下軟骨細胞培養システムは関節内の生理的圧力(3~5 MPa)から過大圧力(15~30 MPa以上)負荷条件下で軟骨細胞培養を行うことができ、この実験系を用いて様々な圧条件下で細胞特性を解析する(実験方法参考文献:J Bioscience Bioengineering 103(6), 578-581, 2007.)。培養細胞・進展圧縮装置は細胞に一軸方向の進展圧縮の力学的負荷を加えて培養することが可能なシステムで、進展圧縮率10%の力学的刺激を1Hzで負荷して軟骨細胞を培養する(実験方法参考文献:J Cell Sci. 118:3289-304, 2005.)。
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