2012 Fiscal Year Research-status Report
光遺伝学的アプローチによる疼痛受容機構の解明および疼痛制御法の開発
Project/Area Number |
24592289
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
大西 英生 産業医科大学, 医学部, 講師 (20279342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疼痛 / c-fos遺伝子 / トランスジェニック動物 / 光遺伝学 / 蛍光タンパク |
Research Abstract |
遺伝子改変動物(c-fos-eGFPトランスジェニックラット)を用いて、急性疼痛ストレス負荷後に、eGFP蛍光の発現を、ニューロン活動の指標として汎用されるc-fos遺伝子産物であるFosタンパクの発現を、脊髄、視床下部、下垂体ならびに副腎皮質において観察可能かどうかを検討した。今回得られた結果は、以下の通りである。 急性疼痛ストレスとして5%ホルマリン液をc-fos-eGFPトランスジェニックラットの両側後肢に皮下注射した。その結果(1)下肢からの疼痛刺激を受容する第4腰髄レベルの脊髄後角において、eGFP蛍光を定量的に観察できた。副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を産生する視床下部室傍核の小細胞領域ならびに下垂体後葉ホルモンを産生する大細胞領域、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を産生する下垂体前葉およびコルチコステロンを産生する副腎皮質束状帯において、eGFP蛍光を認めた。 以上の結果から、急性疼痛ストレスを負荷されたc-fos-eGFPトランスジェニックラットにおいて、Fosタンパクの発現動態が、eGFP蛍光タンパクの発現によって可視化されていることが明らかになった。これまでFosタンパク発現の有無を組織内において確認するには免疫組織化学的染色法を必要としていたが、c-fos-eGFPトランスジェニックラットを使用することで、eGFP緑色蛍光として検出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画1年次においては、c-fos-eGFPトランスジェニックラットに急性疼痛ストレスを負荷し、eGFP蛍光タンパクの発現を指標にFosタンパクの発現を観察した。今回の実験で、疼痛ストレスに対するeGFP蛍光タンパクの発現には定量性があり、c-fos-eGFPトランスジェニックラットを使用することで、eGFPの緑色蛍光としてニューロン活動を評価することが可能となった。以上の実験については、おおむね順調に進展している。当初計画していたin vivoでの実験の応用については、現段階では伸展していない。原因として、蛍光・共焦点顕微鏡では、可視化できる撮影範囲(深層)のレベルに限界があることが挙げられる。これまでの実験ではラットを灌流固定後、摘出した標本を30μmの厚さの切片にして蛍光観察をしてきたが、In vivoで可視化するには、標的とする部位が表面から浅層である必要がある。今後観察する際に、可視化条件を検討・工夫が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画2年次においては、前年度に引き続き、in vivoで疼痛経路の変化を時系列に観察する方法を開発し、初年度の実験から得られた結果(急性疼痛モデルにおいて、脊髄後角・視床下部・下垂体前葉・副腎でのeGFP蛍光タンパクが増加する)を参考にし、疼痛経路(一次感覚ニューロン―脊髄―視床下部―視床―大脳皮質))である各部位をFos-eGFP蛍光タンパクを指標に観察する事を目標とする。 また、in vivoでの観察と並行し、時間的機能連関について考察するために生細胞に対するvitroでの観察を行っていく。具体的にはトランスジェニックラットから単離した視床下部の生細胞を培養し、培養した生細胞に刺激を加え、生細胞内でeGFP蛍光タンパクの動的変化を観察する技術を開発する。生細胞の蛍光イメージングを行うためには、培養方法の確立と、動的被写体に対して安定した蛍光画像所見を得るための照射・撮影条件を検討する必要がある。in vitro での生細胞に対するeGFP蛍光タンパクの局在を視覚的に確認する技術を開発することで、時間的・空間的機能連関についてさらに考察することが可能である。 3年次以降は当初の計画していた予定していた光感受性(光興奮もしくは光抑制)タンパク遺伝子を発現させた光遺伝学についても研究を進めていくことを目標とする。 本研究の成果は、日本生理学会、日本整形外科学会などの国内学会や国際学会に積極的に発表し、国際専門雑誌に英文論文として発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費については、交配のための実験動物(ラット)の購入と上記のトランスジェニックラットの飼育に必要な経費を使用する。主に使用する試薬類は、生細胞の培養時用試薬やin situハイブリダイゼーション用試薬等であり、これらに研究費を使用予定である。またin situハイブリダイゼーション用法に使用するラジオアイソトープに必要な経費を研究費から使用する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Expression of the c-fos-monomeric red fluorescent protein 1 fusion gene in the spinal cord and the hypothalamic paraventricular nucleus in transgenic rats after formalin injection.2012
Author(s)
Ishikura, T. Suzuki, H. Yoshimura, M. Ohkubo, J. Katoh, A. Ohbuchi, T. Ohno, M. Fujihara, H. Kawasaki, M. Ohnishi,H. Nakamura, T. & Ueta, Y.
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Journal Title
Brain Research
Volume: 1479
Pages: 52-61
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Expression of the c-fos-monomeric red fluorescent protein 1 fusion gene in the spinal cord and the hypothalamic paraventricular nucleus in transgenic rats after formalin injection2012
Author(s)
Toru Ishikura, Hitoshi Suzuki, Takanori Matsuura, Mitsuhiro Yoshimura, Jun-ichi Ohkubo, Motoko Ohno, Hideo Ohnishi, Toshitaka Nakamura, Hiroshi Kannan, Yoichi Ueta
Organizer
Neuroscience 2012
Place of Presentation
Ernest N. Morial Convention Center(New Orleans,USA)
Year and Date
20121013-20121017
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[Presentation] Efects of nociceptive stimulation on fos expression and behavior in mice.2012
Author(s)
Ueta, Y. Ishikura, T. Matsuura, T. Yoshimura, M. Ohkubo, J. Ohnishi, H.
Organizer
21st International behavioral neuroscience society annual meeting, Hawaii, USA.
Place of Presentation
Sheraton Keauhou Bay Kailua-Kona, Hawaii, USA.
Year and Date
20120605-20120610
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