2012 Fiscal Year Annual Research Report
局所麻酔薬のDNA脱メチル化による腫瘍細胞増殖抑制および致死機序の解明
Project/Area Number |
24592305
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
鬼塚 信 宮崎大学, 医学部, 助教 (20264393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白阪 哲朗 宮崎大学, 医学部, 准教授 (00274788)
田村 隆二 宮崎大学, 医学部, 助教 (40549060)
与那覇 哲 宮崎大学, 医学部, 助教 (70468023)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | DNA脱メチル化 / 局所麻酔薬 / リドカイン / 癌抑制遺伝子 / プロカイン |
Research Abstract |
麻酔薬や麻酔方法の違いによる癌の進行、転移、あるいは予後への影響が注目されている。研究代表者らは、局所麻酔薬が臨床使用濃度以下で悪性腫瘍細胞の増殖を抑制、細胞死を誘導することを報告した。最近、エピジェネティックな考えからDNAのメチル化と癌化との関係が注目され、DNAの脱メチル化剤は、癌抑制遺伝子の発現を増加し、細胞死を誘導する分子標的抗癌剤として臨床応用されている。一方、局所麻酔薬プロカインがDNAを脱メチル化するとの報告がある(Villar et al. Cancer Res. 2003 ; 63 : 4984-9.)。DNAのメチル化とは、DNAのシトシン塩基の5位末端の水素イオンがメチル基に置換されることであり、遺伝子の発現が抑制される。逆にメチル基が外れ脱メチル化されると遺伝子の発現が活発になる。 本研究の目的は、種々の局所麻酔薬によるDNAの脱メチル化の作用機序を解明し、局所麻酔薬により腫瘍細胞増殖抑制や細胞死を誘導することを検証し、癌患者の麻酔や術後鎮痛に局所麻酔薬を使用することの有用性を示すことである。まず、リアルタイムPCR法を用いて、リドカインなどの局所麻酔薬の暴露で腫瘍細胞においてp53、p21などの癌抑制遺伝子の発現増加を観察した。一方、メチル化DNAと特異的に結合するモノクローナル抗体を用いて、ドットプロットを行った結果、リドカインやプロカインを暴露した細胞群では、メチル化DNAが相対的に増加した。さらに、制限酵素を用いてメチル化DNAを選択的に切断処理後、定量的リアルタイムPCRで定量した結果、リドカインやプロカインを暴露した細胞群では、メチル化DNAの増加がみられた。これらの結果、リドカイン等の局所麻酔薬はDNAを脱メチル化することで、腫瘍細胞においてメチル化されて発現が抑制されているp53、p21等の癌抑制遺伝子の発現を増加し、アポトーシスを誘導しうることが考えられた。
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