2013 Fiscal Year Research-status Report
全身麻酔後の記憶学習能変化とAMPA型グルタミン酸受容体の関与に関する研究
Project/Area Number |
24592308
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
伊奈川 岳 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (60336584)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内本 一宏 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50710951)
後藤 隆久 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00256075)
高橋 琢哉 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20423824)
宮崎 智之 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30580724)
|
Keywords | 吸入麻酔薬 / 記憶学習 / 海馬 / 受動回避 / 電気生理学 / 神経可塑性 / 長期増強 |
Research Abstract |
平成25年度は、過年度に作成したプロポフォール麻酔モデルラットを用いて、海馬組織を用いたグルタミン酸受容体に対するウェスタンブロッティングを行っており、イソフルレン投与モデルと比較検討した。イソフルレン投与モデルでは、麻酔暴露7日後をピークに海馬シナプスにおけるAMPA受容体のGluA1 sub unitが増加していたが、プロポフォール投与モデルでは海馬シナプスにおけるAMPA受容体のGluA1 sub unitの優位な増加は認められなかった。プロポフォール投与モデルでは、曝露7日後には、海馬においてイソフルレン投与モデルと異なるメカニズムが働いている可能性が示唆された。 ここまでの成果は、第60回日本麻酔科学会総会および、欧州麻酔科学会2013年度総会および、米国麻酔科学会2013年度総会にて発表を行い、特に第60回日本麻酔科学会総会では、イソフルレン投与に関する成果とともに優秀演題賞を受賞した。 引き続き電気生理学的な検討を行う予定であったが、実験機器の移転に伴い測定条件の見直しを行う必要があったことと、プロポフォール麻酔モデルラットの行動学的実験と生化学的検討において有意な結果が得られなかったため、セボフルランおよびデスフルランの曝露モデルを作成して、網羅的に行動実験を開始する方針とした。まず、生後8-10週齢のSDラットを用い、セボフルランおよびデスフルランの投与条件を検討した。1.0 - 1.6MAC相当の投与濃度で、5分、30分、60分、120分の投与の後、動脈血ガス分析をおこなった。セボフルランおよびデスフルランともに、1.43MACでは30分間、1.3MACでは120分間、軽度の血圧および酸素化の低下、血中二酸化炭素濃度の上昇を認めたが、著しい影響を見られなかった。上記条件で、行動実験を開始している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画にあげた、プロポフォール麻酔モデルの生化学的検討については、一定の成果を得られている。続いてセボフルランおよびデスフルランの作成について、投与条件の検討を行い、適当な投与条件を設定することができた。抑制性回避学習(IA test)を用いて行動学的検討を進めているところである。このように、平成25年度の実験計画についてはおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、計画にあげた通り、セボフルラン麻酔モデルおよびデスフルラン麻酔モデルを追加作成し、行動学的検討(抑制性回避学習(IA test))と、生化学的な検討(海馬組織のグルタミン酸受容体の発現レベルとリン酸化レベルの変化、それらの調節蛋白の変化を、全組織および、シナプトソーム分画においてウェスタンブロッティングを用いて検討する)を行う予定である。 また、多点皿電極を用いた背側海馬における細胞外集合電位の長期増強(LTP)の測定についても、実験条件の再検討を行い、安定してLTPが得られるようになってきたので、海馬CA1領域における神経可塑性への影響を(LTPの抑制)についても検討を進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、電気生理学的検討に関する条件検討に時間がかかったため、予定の電気生理学実験に必要な多点皿電極の購入費用等の分が、次年度使用額となった。平成26年度には、繰越分も使用して、予定実験を完了する予定である。 平成26年度は、主としてウェスタンブロッティングによる生化学的な検討と、電気生理学的な検討を主に行うため、動物および抗体と試薬類、また消耗品である多点皿電極の購入のために研究費を用いる。また、効率よく本実験を遂行するための研究助手の雇用も継続するための費用も計上する。また、日本麻酔科学会および、欧州麻酔科学会と米国麻酔科学会において、成果の一部を発表予定であるため、これらにかかる費用も計上する。また、英文査読誌への発表のため、英文校正費用ならびに投稿料なども計上する。
|
Research Products
(4 results)