2013 Fiscal Year Research-status Report
術後譫妄と覚醒意識レベル評価のためのα波に関する後頭前頭誘導脳波の同時解析
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24592313
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
林 和子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (40285276)
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Keywords | 麻酔意識制御 / alpha wave / 脳内ネットワーク / コヒーレンス / 後頭脳波 / 状態空間 / 認知症 / 譫妄 |
Research Abstract |
麻酔深度変化に伴う意識変容により、どのように時空間的に脳内機能的ネットワークが変化するかをα波を中心として調べることが、本研究の課題であった。 平成25年度には、BISモニターに加えて、脳波測定の国際標準である10-20法に則る多誘導導出の脳波計を用いて、平成24年度のBISモニターを用いた検討と同様の、前頭・後頭誘導脳波のパワースペクトラム、バイコヒーレンススペクトラム解析を実施した。その結果、10-20測定法を用いた多誘導脳波を用いた検討に置いても、BISモニターを用いた結果同様に、麻酔前には後頭部に優位なα活動が麻酔後には前頭に移行することが明らかになった。この後頭及び前頭のα活動は、バイコヒーレンスの増大を伴っており、こうしたα活動の制御に視床皮質回路が関係することが示唆された。また、麻酔深度変化に伴う脳波変化を、状態空間において解析したところ、覚醒時にはランダムな脳の電気的活動が、麻酔を深めるにつれて、より線形性を増すことが明らかになった。 更に、認知症や脳梗塞患者の麻酔深度に応じた脳内ネットワーク活動の変化を健常者に比して施行したところ、認知症や脳梗塞患者の脳波は、SEF95(spectral edge frequency 95)がより小さく、一方で RBR(relative beta ratio)が大きい状態で推移していることがわかった。SEF95が小さい、即ち周波数成分が小さいにもかかわらず、RBRがより大きい、即ち周波数のβ~δ帯域成分/α帯域成分が大きいことから、認知症症例ではα帯域成分が小さいことが推定できる。このことから、脳梗塞患者では、α spindle wave を構成する上での有効神経細胞数が少なく、機能的な脳内ネットワークが変化している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳波国際10-20測定法に則った多誘導測定の脳波計を用いた結果からも、BISモニター由来脳波の検討と同様の結果が得られたことから、意識制御における後頭及び前頭のα活動、及びα活動の制御に関する視床皮質回路の役割が、より明確となった。この成果は、論文として掲載された。 (Clin Neurophysiol 2014; 125: 194-201) また、状態空間より脳内ネットワークを検討した論文は、Clin Neurophysioに掲載が確定している(in press)。 更に、認知症や脳梗塞患者の脳波における、α spindle wave の変化、及び機能的脳内ネットワークの変化に関する検討に関しては、本年度の学会発表を予定している。 このように、研究計画に添った新しい知見を順調に得ることができ、これらの成果をまとめた論文は、麻酔科学会、米国麻酔科学会で発表し、国際ジャーナル誌に掲載された。特許申請も行い、順調に研究目的を達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24-25年度は、収集脳波を事後に解析する形で、研究を施行してきた。今後、新しい知見の臨床での利点を明確にするため、リアルタイムでの脳波解析を施行する必要がある。従って、平成26年度は、リアルタイムでの脳波取り込み解析システムを構築して、麻酔深度変化に伴う意識変容により、どのように時間空間的機能的脳内ネットワークが変化するかを、実地に検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
オンライン計測システムを次年度(平成26年度)に稼働予定であり、次年度に計測用コンピュータシステムを充実させる必要性が生じた. 麻酔深度変化に伴う意識変容により起きる脳内ネットワーク活動の変化を、リアルタイムに検証するため、脳波を取り込み直接解析するシステムを構築する。そのため、新たな脳波計測機材と脳波収集解析用の高性能コンピュータが必要である。 また、成果発表のための発会発表、論文校正等にも、使用する予定である。
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