2012 Fiscal Year Research-status Report
肝・腎臓における虚血再灌流障害に対する麻酔薬による保護効果の機序に関する研究
Project/Area Number |
24592316
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
三尾 寧 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00266686)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腎臓 / 麻酔薬 / 臓器保護 |
Research Abstract |
ラット腎臓よりミトコンドリアを過去の報告を参考にして分離した。 酸素電極を用いてミトコンドリア溶液の酸素濃度の変化を測定した。ミトコンドリア溶液中に基質を加えることにより電子伝達系が賦活化され、酸素の消費に伴いその濃度は徐々に低下し、次にADPを加えるとそれらがATPに変換され酸素濃度は急激に低下する。その後投与したADPが全てATPに変換されると酸素濃度の低下は再び緩徐となる。この酸素濃度が急激に低下する時期とその後緩徐に低下する時期における酸素濃度低下速度の比(RCR)を測定・比較項目とした。RCRはミトコンドリア呼吸によるATP産生効率を示し、その値が高いほど高いミトコンドリア機能を有することになる。 分離したミトコンドリアを一定時間低酸素に暴露、引き続き再酸素化し低酸素・再酸素化(虚血再灌流のシミュレーション)刺激の前後で上記RCRを比較した。ミトコンドリアを分離する前に摘出腎に対して揮発性吸入麻酔薬を適応した群におけるRCRは、非適応群に比べ低酸素・再酸素化刺激後の値が保持されていた。これにより、揮発性吸入麻酔薬には、ミトコンドリア機能を保持することにより腎臓に対するプレコンディショニング作用を有することが確認された。 次に、分離したミトコンドリアに低酸素・再酸素化刺激を加え、再酸素化直前に揮発性吸入麻酔薬を投与した場合にRCRがどのような影響を受けるか調査した。再酸素化時に揮発性吸入麻酔薬を投与した場合のRCRは、非投与群に比べその値が保持されており、揮発性吸入麻酔薬には腎臓に対するポストコンディショニング作用を持つことも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
安定した呼吸能の測定が可能なミトコンドリアを腎臓から分離する技術の確立に予測を上回る時間を要したため、やや遅れが生じている。 当初24年度中には、1. 腎分離ミトコンドリアに対するプレ・ポストコンディショニング作用の確認、2. プレコンディショニング作用におけるメカニズムの解明、を目的に研究を実施する予定であったが、後者については未達成である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究施行に耐えうるミトコンドリアを腎臓より分離する技術は確立することができた。また、機器は2台有しており、対照と薬剤投与群での測定をパラレルに実施することも可能であり、より効率的に研究を推進する環境が整ったと考える。 今年度は腎プレ・ポスト両コンディショニングのメカニズムをミトコンドリア機能からアプローチし解明する。 まず第一にミトコンドリアの複合体に対する薬物の作用からその機序を推察する。ミトコンドリア電子伝達系は用いる基質を変えることにより、複合体Iあるいは複合体IIから活性化することができる。心筋においてはミトコンドリアの電子伝達系複合体IIの阻害による電子伝達系の軽微な抑制が効果発現のトリガーと推測されているが腎臓では明らかになっていない。腎ミトコンドリアの電子伝達系複合体Iあるいは複合体IIから活性化した場合双方に麻酔薬を適応し、電子伝達系が抑制されるかどうかを観察する。これら腎臓ミトコンドリア複合体に対する直接作用を検証することにより、コンディショニング効果のメカニズムを解明する。 また、今年度以降は用いる薬物を麻酔薬に限らず、近年臓器保護効果を有するとされている周術期使用薬にもその適応を広げる。さらには、これまでは基本的には虚血再灌流障害に対する保護効果を検討してきたが、造影剤などの術中使用薬剤による腎障害に対するミトコンドリア保護効果の有無についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
測定機器は昨年度に保有しているため、今年度は動物、薬品、消耗品に研究費の大部分を使用する予定である。
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