2013 Fiscal Year Research-status Report
肝・腎臓における虚血再灌流障害に対する麻酔薬による保護効果の機序に関する研究
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24592316
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
三尾 寧 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00266686)
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Keywords | 腎臓 / 虚血再灌流障害 / 麻酔薬 / 臓器保護 |
Research Abstract |
昨年度の研究から揮発性吸入麻酔薬には腎臓における虚血に対して、プレ・ポスト両コンディショニング作用を持つことが明らかになった。今年度はミトコンドリアの複合体に対する揮発性吸入麻酔薬の作用からコンディショニング効果のメカニズムの検討を行った。 ラット腎臓よりミトコンドリアを過去の報告を参考にして分離した。ミトコンドリア溶液に各種基質とADPを加えることにより電子伝達系が賦活化され、酸素の消費に伴い溶液中の酸素濃度は徐々に低下する。この酸素濃度の低下を電極を用いて測定し、ミトコンドリア機能の評価因子とした。 ミトコンドリア電子伝達系をピルビン酸・リンゴ酸を用いて賦活化すると複合体Iから、コハク酸を用いると複合体IIから、それぞれ電子伝達系を活性化することができる。腎臓単離ミトコンドリアに揮発性吸入麻酔薬を適応し、ピルビン酸・リンゴ酸あるいはコハク酸を用いて電子伝達系を賦活化させた。複合体Iから電子伝達系を活性化した場合はミトコンドリア機能は低下したが、複合体IIから活性化した場合は変化がなかった。これより、揮発性吸入麻酔薬は複合体Iを抑制することにより、電子のリークを生じさせコンディショニング効果を発現していることが推測できた。 また、今年度は麻酔薬に限らず、臓器保護効果を有するとされている周術期使用薬も研究対象薬として使用した。造影剤を多用する血管内手術の増加が背景にあるため、造影剤による腎障害(造影剤腎症)に対して保護効果を有するとされるニコランジルの腎臓ミトコンドリア保護効果の有無について検討した。しかしながら全腎から単離したミトコンドリアの造影剤による機能低下に対し、ニコランジルの保護作用は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
造影剤腎症に対する腎臓ミトコンドリア保護作用が、一般的に腎保護効果を有するとされるコランジルにおいては確認できなかった。分離方法等プロトコールの見直しを行っていたため、やや遅れが生じている。また腎臓と同様に、虚血再灌流障害時における揮発性吸入麻酔薬によるコンディショニング効果についての研究を、肝臓ミトコンドリアを用いて開始した。しかしながら、その単離方法の確立に時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、造影剤腎症におけるニコランジルの腎ミトコンドリア保護効果の有無について検討する。造影剤腎症は腎髄質の機能を低下させることにより発症するとされている。昨年度は全腎ミトコンドリアを用いて実験を行ったため、今年度は髄質ミトコンドリアを選択的に単離し、研究を推進する。 同時に、腎臓と同じく移植対象臓器である肝臓に対して、揮発性吸入麻酔薬がプレ・ポストコンディショニング効果を有するか否か検討する。肝臓ミトコンドリアの単離方法はまだ十分には確立されていないが、早急に確立させる。揮発性吸入麻酔薬が肝臓に対するプレ・ポスト両コンディショニング効果を有する場合は、腎臓と同様にそのメカニズムを肝臓ミトコンドリアに与える影響から考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
仮説に基いた予想された結果が得られず、多方面からプロトコール等の見直しを行い、実際の研究がやや停滞した。また新たに肝臓を研究対象臓器として追加したが、実験使用に耐えうる安定した肝臓ミトコンドリアの単離方法の確立に難渋した。 予想した結果が得られなかったこと、ならびに測定に適した肝臓ミトコンドリアを安定して単離できなかったことに関し、効果的と思われる方策を検討した。今年度は積極的に研究を行い、主に動物・薬品・消耗品に研究費を使用する予定である。
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