2014 Fiscal Year Research-status Report
肝・腎臓における虚血再灌流障害に対する麻酔薬による保護効果の機序に関する研究
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24592316
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
三尾 寧 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00266686)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 虚血再灌流障害 / 麻酔薬 / 臓器保護 / 腎臓 / 肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
<腎保護作用に関して> 昨年度の研究では、麻酔薬に限らず、臓器保護作用を有するとされている周術期使用薬も研究対象役として使用した。血管内治療手術の増加により、造影剤による腎障害(造影剤腎症)が問題になっており、一部臨床研究では造影剤腎症に対するニコランジルの保護効果が報告されているがその機序は明らかでない。ニコランジルは心臓においてはミトコンドリアに作用し臓器保護効果を示している。造影剤腎症は腎髄質に障害を与えるため、腎髄質よりミトコンドリアを分離しミトコンドリア呼吸能を指標としてニコランジルの造影剤腎症に対する保護効果を検証した。しかしながらニコランジルには腎髄質ミトコンドリアの機能低下に対し保護効果は認められなかった。 <肝保護作用に関して> 昨年度の研究では、心臓・腎臓と同様の方法では、研究使用に耐えうるミトコンドリアの単離を行うことができなかった。今年度は複数の動物から得た肝臓を用い、破砕・遠心分離の回数を増加させることにより、ほぼ安定した肝臓ミトコンドリアを分離することが可能となった。このミトコンドリアを用い、低酸素による肝ミトコンドリア機能の低下に対する揮発性吸入麻酔薬の保護効果を検証した。揮発性吸入麻酔薬は低酸素による肝ミトコンドリア呼吸能の低下を一部防止する効果を有することが推測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
<腎保護作用に関して> 造影剤腎症発症のメカニズムから、腎髄質ミトコンドリアに焦点を当てれば、ニコランジルの保護効果が観察できると考えて実験を行ったが、髄質からミトコンドリアを分離する技術の確立に時間を要し、得られた結果も仮説を外れるものであったため遅延を生じた。 <肝保護作用に関して> 文献に記載された通常の分離方法では、脂肪成分が多く含まれたミトコンドリアしか分離できず、実験に適した分離法の確立に難渋したためやや遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
<腎保護作用に関して> より臨床的な見地から研究を推進するために、昨年度までは造影剤腎症に対する周術期併用薬の保護作用について検討したが、仮説に近い結果は得られなかった。昨年度までに一般的に広く使用されているセボフルランの虚血に対する腎保護効果は確認されている。今後は、腎虚血に暴露される危険のある場合に使用する麻酔薬の選択の一助にするために、最近本邦で使用が開始された揮発性麻酔薬であるデスフルランと従来薬であるセボフルランとの間に保護効果の差異があるかを検討する。 <肝保護作用に関して> 揮発性吸入麻酔薬の低酸素に対する肝保護効果は、保護効果を有する傾向は見出している。実験数を積み重ね、結果を再検証する。さらに、そのメカニズムについて、昨年度までの腎臓の研究と同様にミトコンドリアの電子伝達系への影響から考察する。
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Causes of Carryover |
造影剤腎症の保護効果に関しては、文献を検討したうえで研究をおこなったが、仮説とは異なる結果が得られたため、数回にわたり具体的な実験方法の検証を行った。さらに、測定に耐えうる肝臓ミトコンドリアの分離方法にも難渋した。これらの理由から、実際の測定を行うという研究遂行が停滞したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
停滞した研究については、方針変換を行い、また不安定であった肝臓ミトコンドリア分離方法も改善策を策定した。今年度は実際の研究実施数を増加させるために消耗品購入に使用するとともに、学会発表・校閲といった結果発表にも使用する予定とする。
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