2013 Fiscal Year Research-status Report
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24592318
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
坂本 篤裕 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30196084)
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Keywords | マイクロRNA / 遺伝子発現 / 全身麻酔薬 / 神経障害性疼痛 |
Research Abstract |
平成25年度は24年度の研究成果である各臓器でTaqMan Low-density Array (TLDA) studyにより包括的にmiRNA発現が捉えられたことを基に、臨床応用できる血液を試料として全身麻酔施行によるmiRNA変化を包括的に検討した。また、中枢神経系の部位によるmRNAならびにmiRNA発現変化が認められるのかを中心に検討を行い、4つの知見を得ることができ、それぞれ学術論文にまとめた。いずれも既知の373種類のmiRNAをTLDA分析により発現変化を測定した。1)セボフルラン麻酔による時計遺伝子Per2の発現抑制は、メチル化ではなく、ヒストンアセチル化を介して行われる。2)セボフルランとプロポフォールでは海馬におけるmiRNA発現修飾パターンが異なる。3)同じ疼痛行動を示す、慢性炎症性疼痛モデルと座骨神経慢性絞扼性障害では、海馬におけるmiRNA発現変化が異なっているが、いずれのモデルでも海馬における発現の左右差は認めない。4)セボフルランによる全身麻酔は、筋組織から血中への放出を抑制する機序により、血漿中の心筋を含めた筋肉特異的miRNAを持続的に低下させる。以上の結果は、麻酔により血液を含めた各臓器におけるmiRNA発現に影響を及ぼすこと、麻酔薬の違いによりその発現変化に相違があること、心筋保護作用にも関連する血液中のmiRNA変動の基礎データを示した。さらに、中枢神経系の病態変化によりmiRNA発現変動をTLDA分析で求められることを明らかにし、海馬におけるmiRNA発現変動を慢性疼痛モデルと比較することにより麻酔薬の影響を確実に把握する基本的データを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の一つである全身麻酔による遺伝子発現変動の検討、特にmiRNA変動に関してはおおむね主要な臓器での変化を確認し、さらに、臨床応用できる血液での基礎データ取得は、本研究のさらなる飛躍につながるものである。一方で、当初の目的より大きく飛躍した範疇へと研究の方向性が変化しており、期間内に目的を達成するためには、実験内容を絞って検討することが重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終目標は、全身麻酔薬の機序解明の基礎データを得ることであり、現時点で大きな広がりを見せている研究成果をまとめる方向に進めたい。海馬における麻酔薬の影響ならびに慢性疼痛モデルでの結果を基に、antisense投与モデルの作成に取り組んでおり、麻酔薬により変動した代表的miRNAのantisense持続投与モデルにおける全身麻酔の効果を調べ、全身麻酔機序解明の礎にしたい。また、手術患者の血液データから、麻酔器所とともに、患者管理に応用できるデータの取得に繋げたい。
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Research Products
(8 results)