2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性疼痛治療の新規分子標的候補であるグリシン受容体α3サブユニットの役割の解明
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24592326
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高澤 知規 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (30400766)
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Keywords | 疼痛管理 |
Research Abstract |
慢性疼痛の治療のターゲットとして、オピオイド受容体やカルシウムチャネル等の様々な分子が提唱され、それらに対する作動薬が臨床で用いられている。しかし、これまでに開発された鎮痛薬には副作用が少なからずあるうえ、効果を示さない例も多かった。我々は、脊髄後角の浅層にしか発現していないため、仮にその機能を抑制しても呼吸や循環などに重篤な副作用を起こさないことが期待されるグリシン受容体のα3サブユニットに注目した。グリシン受容体α3サブユニットは慢性疼痛の治療のターゲットとなる可能性を秘めている。そこで、脊髄におけるα3サブユニットを含むグリシン受容体の機能を調べるため、その機能をin vivoで抑制する実験を行った。α3サブユニットのノックアウトマウスを用いた研究が既に報告されているが、他の抑制システムが代償性変化を起こす可能性が考えられるため、我々の方法にアドバンテージがあると考えている。受容体の機能を抑制するために作成したsiRNAの有効性を確認するため、マウスのくも膜下腔(腰部)にsiRNAを注入し免疫染色およびウエスタンブロッティングによってグリシン受容体α1ならびにα3サブユニットの発現量の計時的変化を調べた。HVJ(hemagglutinating virus of the Japan)エンベロープベクターシステムを用いて、siRNAがin vivo条件下で安定して効果を発揮できるように工夫している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グリシン受容体α3サブユニットの機能解析ツールの確立に時間がかかっている。現段階ではin vivoでα3サブユニットの発現を安定的に低下させるsiRNAを得られていない。脊髄のくも膜下腔に挿入したカテーテルからのsiRNA投与実験を繰り返し行って、α3サブユニットを含むグリシン受容体の発現量をウエスタンブロッティング法で確認する作業を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
機能解析の手法を早期に確立させ、炎症性疼痛モデル動物の脊髄後角におけるグリシン受容体の挙動を調べる。我々は炎症性疼痛の発症時にα3サブユニットが増加するという仮説を立てており、その仮説を証明するための実験を行う。この実験の成果により、α3サブユニットに特異的な作用を示す薬の開発が進むことを期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
グリシン受容体の発現量の変化を調べる手法が確立できていないので、モデル動物を用いた実験を開始しておらず、実験動物の購入・維持のための費用が発生しなかった。また、電気生理学的実験のための費用も生じなかった。 実験動物の購入・維持や、分子生物学的実験、免疫組織学的実験、電気生理学的実験のための消耗品の購入に充てる予定である。
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