2013 Fiscal Year Research-status Report
BDNFエクソンをターゲットとする痛みの評価と遺伝子療法
Project/Area Number |
24592339
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
横山 正尚 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (20158380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 崇 高知大学, 医歯学系, 講師 (40380076)
矢田部 智昭 高知大学, 医歯学系, 助教 (60437720)
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Keywords | BDNF / 痛み / 遺伝子療法 / 痛み評価 |
Research Abstract |
本研究の主眼は、痛みのニューロモジュレータとして機能する脳由来神経栄養因子(BDNF)を痛みのマーカーとして利用する。その上で、BDNFをターゲットとした痛みの遺伝子療法を目指すものである。具体的に、当初の平成25年度の予定は(1)BDNFデコイの作成と(2)BDNFのノックダウンの確認であった。 我々も目指していた「脊髄レベル」でのBDNFのデコイによるノックダウンを以前所属していた施設で共同研究していたObataらが我々に先駆けて報告したが、その鎮痛効果は臨床で応用するには、はるかに弱いものであった。 そこで、本年度は当初の予定を遂行しながら、ターゲットを「脊髄レベル」から「脳レベル」でのBDNFの変化に標的を絞って研究を実施した。 その結果、当初の予定通り、その基礎となる脊髄および脳でのBDNFでの測定を可能とした。神経障害性痛モデルのラットでは脳内のBDNF量の変化が見られ、その変化が痛みと同様にうつ様行動に関係していることを見いだした(Effects of Intervention With Multisensory Rehabilitation in a Rat Model of Neuropathic Pain. American Society of Anesthesiologists 2013 Annual Meeting)。また、急性痛では術後痛モデルを作成し、脳における手術侵襲後の痛み関連物質の変化につき、報告した(創傷治癒過程での中枢神経の変化 ―術後痛と認知機能の関係-:日本麻酔科学会 第60回学術集会)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の予定は(1)BDNFデコイの作成と「脊髄レベル」での(2)BDNFのノックダウンの確認であった。しかし、前年度の研究結果や他家の報告から、脊髄レベルでのBDNFのノックダウンの鎮痛効果は限界があり、ターゲットを「脳レベル」に絞り、研究を継続した。 上記を受け、脳でのBDNFでの測定を可能とした。その結果、神経障害性痛モデルのラットでは脳内のBDNF量の変化が見られ、その変化が痛みと同様にうつ様行動に関係していることを見いだした。また、急性痛では術後痛モデルを作成し、脳における手術侵襲後の痛み関連物質の変化につき報告した。炎症の抑制が急性痛および慢性痛モデルでも脳内のBDNFの発現に大きく関与していることが示唆され、今後脳内のBDNF発現抑制介入が痛み治療として期待される結果を得た。上記の結果は内外の学会で発表した。 以上の如く、ターゲットを脊髄から脳レベルへ移行したが、研究計画は概ね予定通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の主な研究は、動物モデルにおけるBDNFの発現抑制介入の痛み治療の確立である。今までの研究で、BDNFの脊髄レベルでの遺伝子的ノックダウンの鎮痛効果は限界があることが判明した。さらに、慢性痛でうつ様行動と脳内BDNFレベルの関係が判明しており、最終年度では、さらに動物における脳内BDNFの発現メカニズムを詳しく調べるとともに、うつと同様にヒトにおける痛みとBDNFの関連を明らかにすることである。 研究資金はほぼ、予算通りの執行で前年度の繰り越しもない。 本年度もターゲットは脊髄レベルから脳レベルに移行するが、予定通りの執行を見込んである。
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