2012 Fiscal Year Research-status Report
敗血症における硫化水素吸入による治療効果に関する研究―分子細胞学的検討―
Project/Area Number |
24592348
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
照屋 孝二 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50437985)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大城 匡勝 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (00315483)
渕上 竜也 琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (10381211)
神里 興太 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (10554454)
垣花 学 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20274897)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 敗血症 / 硫化水素 / アポトーシス / 肝臓 |
Research Abstract |
硫化水素は生体内ガス分子として様々な生理学的機能を発揮しているが、特にその抗炎症効果は強力で様々な病態に影響を及ぼすと考えられている。今回は、マウスの腹腔内にグラム陰性桿菌の外膜にあるリポポリサッカライド(LPS)を投与することによる敗血症モデルを用い、その生存率、肝臓でのオートファジー発現ならびにアポトーシスに対する硫化水素吸入療法の効果を検討した。<方法>マウス(雄性B57/BL6、8週齢)の腹腔内にLPSを投与し、その直後から硫化水素80ppmを5時間吸入させる硫化水素吸入群と対照群(吸入なし)とに分け比較検討した。さらに、硫化水素吸入から12時間後にマウスの肝臓を採取し、パラフィン切片を作成しオートファジーに関わる蛋白であるLC3ならびにアポトーシスに関わる活性型カスパーゼ3を免疫染色し、両群間で比較検討した。<結果>LPS投与後の生存率では、対照群ではLPS投与後48時間目に15%であったが、硫化水素吸入群で95%であった。さらに肝臓におけるLC3の発現は、硫化水素吸入群で多く発現する傾向が認められたが、有意な差ではなかった。また、活性型カスパーゼ3の発現では、対照群と比較して硫化水素吸入群で有意に活性型カスパーゼ3陽性細胞が少なかった。<結論>以上のことから、LPS腹腔内投与により肝臓でのカスパーゼの活性が増加し、肝障害が発症するが、硫化水素の吸入によりカスパーゼの活性化が抑えられた。その結果、LPS投与後48時間目の生存率は、硫化水素吸入群で高くなったかもしれないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス敗血症モデルを用いその生存率に及ぼす硫化水素吸入療法の効果について検討した結果、当初の予測のごとく生存率を改善させた。そのメカニズムを検討する目的で、まず肝臓でのアポトーシスの発現を比較し、その有意さも確認できた。さらに新たな発見として、肝臓でもオートファジーが硫化水素群で微増していたことから、肝臓の再生にも多少影響を及ぼしていた可能性がある。これらの結果から、当初の計画が概ね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウス敗血症モデルにおいて、硫化水素吸入がその生存率を上げたことならびに肝臓におけるカスパーゼ3活性を抑えたことを示した。今後は、肝臓のみならず、LPS投与後の肺、心臓および脳におけるカスパーゼ3活性の変化ならびに硫化水素吸入によりどのように修飾されるか検討する。さらにカスパーゼ3活性化の抑制効果について、分子生物学的検討(カスパーゼ3の翻訳後修飾)を行い、その分子的メカニズムにアプローチする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスLPSモデル作成における動物購入および飼育費、肺、心臓および脳におけるカスパーゼ活性の測定、カスパーゼ発現の免疫染色における薬物、器具などの購入、ならびにカスパーゼの翻訳後修飾の検討に用いる器具などの購入に使用する。
|