2013 Fiscal Year Research-status Report
乳頭状腎癌関連因子pCAMによる新たな分子病理学的分類と分化誘導療法の確立
Project/Area Number |
24592396
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
辛島 尚 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (60304672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
執印 太郎 高知大学, 医歯学系, 教授 (70128601)
鎌田 雅行 高知大学, 医歯学系, 講師 (90304683)
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Keywords | 腎癌 / 乳頭状腎癌 |
Research Abstract |
乳頭状細胞接着分子 papillary cell adhesion molecule(pCAM)は、主に内分泌組織や神経に分布し、細胞間接着や細胞・細胞外基質間接着を担う因子として報告されている。我々は、腎癌における網羅的解析においてpCAM発現の差異に注目した。pCAMの発現制御により、未分化な淡明細胞癌が乳頭状腎癌に分化することを確認した。 本研究の目的は、pCAMが、乳頭状腎癌における分子病理学的な腫瘍構築因子であるとともに、腫瘍の分化や悪性度を決定するキーファクターであることを証明することである 。さらに、pCAM発現をコントロールすることで、腎癌の分化誘導療法を確立することをめざす。 これまでに、pCAMの発現抑制(786-O-pCAM-KO細胞)により、未分化な淡明細胞癌が高分化な乳頭状腎癌に形態変化をすることが確認できている。 Site-directed mutagenesis法により、再度pCAMを高発現させた786-O-pCAM-mut-1、mut-2のふたつの発現程度に差のある安定株を樹立した。本細胞株を用いた、動物実験モデルにおいて、高分化な乳頭状腎癌が再び未分化な淡明細胞癌に回帰したことを確認した。このことより、pCAMは腎癌において、乳頭状構築ならびに分化を調節する重要な因子であることが明確となった。 また、臨床検体を用いたpCAMの発現解析において、現時点では組織構築における発現の差異は確認できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
pCAM発現のOFFにより、未分化な腎淡明細胞癌が分化した乳頭状腎癌に変化した。さらに、再びONにした際に、元の未分化な腎淡明細胞癌に回帰した。この現象は、pCAM発現程度に依存した構築変化であった。これらのことより、当初の仮説である「pCAMは、乳頭状腎癌における分子病理学的な腫瘍構築因子であるとともに、腫瘍の分化や悪性度を決定するキーファクターである」ことが証明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
分子病理学的基礎実験において、「pCAMは、乳頭状腎癌における分子病理学的な腫瘍構築因子であるとともに、腫瘍の分化や悪性度を決定するキーファクターである」ことは明確になったが、臨床検体においてはpCAMの発現と病理組織型との間に、有意な差が認められなかった。そこで今後は、pCAMの機能調節を行うであろう、ポリシアル酸化の程度を検討し、これによる機能調節を解析する。 また、本現象はまさに上皮間葉転換(EMT)もしくは間葉上皮転換(MET)と考えられる。pCAM発現に依存して、調節されるEMTもしくはMET関連因子をPCR arrayにて、網羅的に解析を行う計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度中、臨床検体において、免疫染色によるpCAMの発現と病理組織型との間に、一定の傾向が見いだせなかった。さらに症例数を増やして検討を行うにあたり、【次年度使用額が生じた】。 また、上皮間葉転換(EMT)もしくは間葉上皮転換(MET)の現象をとらえるべく、これらを網羅的に解析する必要性が、あらたに生じたために、【次年度使用額が生じた】。 症例数を増やして、pCAMの発現と病理組織型との関連性を検討するとともに、pCAMの機能調節を行うであろう、ポリシアル酸化の程度を検討する。さらに、EMTもしくはMET現象の分子生物学的網羅的解析を行う。主に免疫組織学的ならびに分子生物学的解析に、次年度予算の使用を計画する。
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