2012 Fiscal Year Research-status Report
天然物リガンドDNTによる特異的な前立腺癌増殖阻害の作用機序解明
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24592417
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
山崎 洋子 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 研究員 (80342690)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アンドロゲンレセプター |
Research Abstract |
実験に使用するDNT(N-Deoxynortryptoquivaline)生産菌の大量培養を行い、精製を行った。DNT生産菌を静置培養し、アセトン抽出液10リットルから酢酸エチルで活性物質を抽出した。その後、シリカゲルクロマトグラフィーおよびLH-20クロマトグラフィーを行い、HPLCで最終精製を行った。最終精製物は、NMR、質量分析を行い、純度98%以上のDNT 200 mgを得た。 DNTが前立腺癌細胞に及ぼす影響を網羅的に解析するためのDNAマイクロアレイを行うにあたり、予備実験を行った。DNTがAR下流遺伝子であるPSAを抑制するにはReal-time PCRおよびレポーターアッセイによる解析から48時間が必要なことがわかっている。そこで、ARアンタゴニストであり現在臨床で使用されているビカルタミドと合成アンドロゲンを細胞に添加し、マイクロアレイで48時間後にAR下流遺伝子の抑制が網羅的に観察できるか否かを確認した。その結果、48時間後でも代表的なAR下流遺伝子の変化が24時間後と比較しておおよそ同じように観察できることが判明した。 DNTのAR転写の及ぼす影響の解析は、これまでstable cloneで行っており、コントロールとしてSV40プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を挿入した細胞を別にコントロールとして使用していた。しかし、より正確な解析のため、dualルシフェラーゼアッセイを行いインターナルコントロールによりAR転写活性を補正した。その結果、ビカルタミドのAR転写抑制活性はdualルシフェラーゼアッセイの方が感度よく測定できることが明らかになり、DNTのAR転写抑制もstable cloneよりはっきりと検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に使用するDNTの確保においては、培養、精製を行い、十分な量のDNTを得ることができた。 ARを核内へ輸送する核内輸送受容体はimportin-αであるとされている。免疫沈降法によりimportin-αや輸送担体であるimportin-βとARの結合におけるDNTの影響を調べたが、免疫沈降法では解析が困難であった。また、ARのシャペロン因子であるHSPファミリーについてウェスタンブロット法と免疫沈降法で解析したが、DNTはHSPファミリーの発現に影響を及ぼさなかった。このようにDNTがARの核内移行を阻害するメカニズムについての解析は進んでいない。 DNTが前立腺癌細胞に与える影響を網羅的に解析するためのDNAマイクロアレイを行うにあたりビカルタミドの抗アンドロゲン作用をアレイで解析した予備実験は、AR誘導遺伝子の抑制がビカルタミドおよび合成アンドロゲン添加48時間後にも観察できることが確認できた。マイクロアレイを行うための予備実験は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
実験に使用するDNTの確保においては、今後も必要に応じて培養、精製を行なう。 DNTがARの核内移行を阻害するメカニズムについての解析を推進させるために、アフィニティービーズを用いてDNTが結合するターゲットタンパクの同定を行う。ネガティブコントロールとしてDNTの類縁体であり活性を持たないtryptoquivalineを用いる。この化合物はDNT精製の際に最終精製のHPLCで単離された物質で、NMR、質量分析を行い、活性がないことも確認した。 DNTが前立腺癌に及ぼす影響を網羅的に解析するためにDNAマイクロアレイを使用してDNT添加時の遺伝子の発現の変化を解析する。DNAマイクロアレイによる解析は非常に経費が高額になるため、なるべく少ない実験で解析を可能にする必要がある。このためベストな条件で解析を行うために、Real-time PCRを用いて前立腺癌のPSA発現を指標とし、DNT添加濃度や接触時間の条件検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、DNAマイクロアレイのためのアレイ及び試薬を購入する。マイクロアレイのための予備実験としてReal-time PCRを行うので、Real-time PCR用の試薬の購入を行う。また、LNCaP以外の前立腺癌細胞でdualルシフェラーゼアッセイを行う予定であるので、トランスフェクション用試薬、レポーターアッセイ用の試薬を購入する。さらに細胞培養、生化学試薬などの消耗品の購入も予定している。 その他として、日本癌学会、がん分子標的治療学会に参加する為の旅費および論文校正や別刷り代を予定している。
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Research Products
(2 results)