2013 Fiscal Year Research-status Report
天然物リガンドDNTによる特異的な前立腺癌増殖阻害の作用機序解明
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24592417
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
山崎 洋子 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 研究員 (80342690)
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Keywords | アンドロゲンレセプター / 前立腺癌 |
Research Abstract |
申請者らは、新しい作用機序の抗前立腺癌物質の発見を目指して、微生物代謝産物から探索研究を行い、低分子化合物であるN-deoxynortryptoquivaline (DNT)を発見した。DNTは、アンドロゲンレセプター(AR)の核内移行を抑制することによって細胞毒性を示さずヒト前立腺癌細胞株LNCaPの増殖を特異的に抑制した。 DNTがARのアンタゴニストとして機能する可能性は、間接的な証拠によりないとしてきたが、これまでダイレクトな証明がされていなかった。そこで、ARのcompetitor assayを行いDNTがARに直接作用しているかどうかを確認した。実験は、蛍光リガンドとリコンビナントARを用いて蛍光偏光を測定することにより、ARとDNTの相対的親和性を測定した。その結果、DHTがIC50=1.1 nM、bicalutamideがIC50= 490 nMで蛍光リガンドに対して競合的に作用したのに対し、DNTは0.5 mg/mlでも蛍光リガンドに対して競合的に作用しなかった。以上の結果から、DNTはARに対しアンタゴニストとして作用しているのではなく、ARの核内移行を阻害していることが明らかになった。 DNTの標的タンパクを特定するためにアフィティービーズを採用した。アフィティービーズの使用は初めてだったので、準備段階として標的のわかっているメトトレキセートをFGビーズに結合させ、標的タンパクであるジヒドロ葉酸レダクターゼが同定できるかどうかを確認した。各ステップにおける条件検討が必要であることがわかり、最適条件であれば標的タンパクの同定が可能であることを体得した。 DNTの作用機序の解明の手がかりとして免疫不全マウスにアンドロゲン依存性ヒト前立腺癌VCaPを移植し、マウスを去勢しても再増殖するアンドロゲン非依存性を獲得したVCaPを細胞株化することを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ARを核内へ輸送する核内輸送受容体であるimportin-αに対するDNTの作用を引き続き様々な条件の免疫沈降法で解析したが、よい結果が得られなかった。これまでアンドロゲン依存性ヒト前立腺癌LNCaPで解析を行ってきたが、VCaPにおいてもDNTはARの核内を阻害していることが明らかになったので、細胞種を変えて解析を試みる。 アフィニティービーズを用いた解析の準備は順調に進んでいる。試薬や器具の準備も整い、DNTの標的タンパクの同定を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験に必要なDNTの確保においては今後も必要に応じて培養、精製を行う。 アフィニティービーズを用いた標的タンパクの同定に関しては準備が整ったので、ビーズに結合させるDNTの量、アフィニティービーズの洗浄バッファーの種類など条件検討を開始する。また、標的タンパクの同定がスムーズに進まなかった場合、使用するライゼートの細胞種や分画した方がよいのかなどの条件検討も必要である。複数の標的タンパクの候補が選出されることが予想されるのでノックインやノックダウンの実験を行って標的タンパクの同定が必要になる。 DNAマイクロアレイを使用したDNTの前立腺癌に対する網羅的解析は、PSAを指標としたReal-time PCRにより添加濃度、接触時間等の条件を決定したので本実験を開始する。 VCaPからのアンドロゲン非依存性細胞株の樹立に関してはVCaPを1000 mm3になるまでヌードマウスの皮下で30日間増殖させ、マウスを去勢した。VCaPは去勢後15日間に渡って退縮したが、その後徐々に増殖を開始し、90日後におよそ2500 mm3に達した時点で腫瘍を切除し、細胞株化することに成功してる。以後、クローニングを行い、アンドロゲン感受性の変化、抗アンドロゲン剤への感受性の変化を試験する予定である。その後、DNTが作成した細胞に与える影響を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に実験を行う予定だったマイクロアレイの実験が人員の都合で行うことができなかったため、マイクロアレイのための費用が余ってしまったため。 本年度にマイクロアレイ実験を行うので、アレイやマイクロアレイラベル化試薬の購入にあてる。
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Research Products
(2 results)