2012 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射による膀胱の損傷に対する骨髄由来細胞シートを用いた膀胱再生の試み
Project/Area Number |
24592427
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
今村 哲也 信州大学, 医学部, 助教 (00467143)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生医療研究 / 骨髄由来細胞 / 放射線照射 / 細胞シート / 膀胱 / 排尿障害 |
Research Abstract |
われわれは、重篤な排尿障害に対して、骨髄由来細胞移植療法により機能的な膀胱の再生を試みている。特に、本研究で対象としているのは、放射線療法により生じた重度の排尿障害である。これまでに、放射線照射によって傷害を与えた膀胱に、骨髄由来細胞を注入移植すると排尿障害が改善することを報告した。臨床において、深刻な問題となるのは、放射線照射によって膀胱穿孔など組織が欠損した場合である。このような欠損をともなう膀胱に対しては、細胞を直接注入移植することが困難であるとともに、十分な効果を得られない。したがって、組織欠損が生じた膀胱への細胞移植は、細胞の足場となるような構造体との組み合わせが要求される。本研究は、骨髄由来細胞とその足場となるシートを組み合わせた細胞シートを作製し、組織を欠損させた放射線照射傷害膀胱モデルにパッチ移植する。この細胞シート移植によって機能的な膀胱が再生されるのかどうか検討する。 本研究は、生命危機にさらされるような病態を想定し、骨髄由来細胞移植による機能的な膀胱再生を目指したものである。本研究によって、放射線照射療法における高レベル放射線照射による治療効果の向上、あるいは、治療後の膀胱機能低下にともなう排尿障害の回避による生活の質の向上などが期待できる。さらに、再生医療研究の最終目標である、生活の質の向上を目指した一人ひとりに即した質の高い医療の提供という命題に対して真摯に応え、再生医療の将来に対して新たな展開が期待できる。 本年度は、良質な細胞シート作製、および、組織欠損を与えない放射線照射傷害膀胱へのパッチ移植を実施した。細胞シート作製における、初代培養した骨髄由来細胞の温度感受性培養皿への継代培養技術の改良を行ったことにより良質な細胞シート作製に成功した。また、欠損組織へのパッチ移植との比較検討するための欠損を与えない膀胱への移植を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、最終目的である骨髄由来細胞シートのパッチ移植による機能的な膀胱再生を遂行するための予備実験を中心に行った。まず、精度の高いパッチ移植を行うには、良質な細胞シートの作製が必須となる。初代培養を終えた骨髄由来細胞のシート作製するために、温度感受性培養皿に継代培養するが、このとき培養皿に対する細胞の接着性が脆弱であり、良質なシート作製が困難であった。そこで、温度感受性培養皿に細胞外マトリックスの一つであるコラーゲンをコーティングすることで、細胞の接着性を高めることに成功した。この結果、良質な細胞シート作製に成功した。 本研究を遂行する上で、欠損を与えない放射線照射膀胱への細胞シート移植というものが、欠損部位への移植する群との対照群となる。したがって、本年は、それらの対照データを得ることに専念した。既に、確立した放射線照射傷害膀胱を作製し、先に述べた、良質な細胞シートをパッチ移植した。現在、パッチ移植した効果についての解析を進行中である。 本年度は、最終目標を達成するために必要なデータ、あるいは、手技の改善などを行った。本研究の遂行において、順調に進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、当初の研究計画の大きな変更の必要はないと考えている。昨年度から進めている欠損を与えない放射線照射膀胱への細胞シート移植の効果の解析を継続する。その解析が終わった段階で、欠損を与えた放射線照射膀胱への骨髄由来細胞シートのパッチ移植を行う予定である。 もし、研究遂行に支障をきたすようなことが生じた場合は、適宜、最適かつ最善な方法によって、克服していくつもりである。 研究遂行に懸念材料があるとすれば、細胞シート移植群と対照となる無細胞シート移植群の作製である。この対照群では、細胞シートを使わないため、動物の生存率などに大きく低下することが懸念される。したがって、この対照群を作製し、経過観察を行う。そのうえで、遂行が困難な場合は、欠損部位の対処について熟慮する。 いずれにおいても、研究が遂行できるよう、様々な工夫を施す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、欠損を与えた放射線照射膀胱への骨髄由来細胞シートのパッチ移植を行う予定である。細胞シート作製のための培養消耗品と実験動物の購入に対して、研究費を使用する。さらに、昨年から継続している組織解析のための染色等の消耗品購入に当てる予定である。
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Research Products
(9 results)