2013 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射による膀胱の損傷に対する骨髄由来細胞シートを用いた膀胱再生の試み
Project/Area Number |
24592427
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
今村 哲也 信州大学, 医学部, 講師 (00467143)
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Keywords | 下部尿路再生 / 排尿障害 / 骨髄細胞 / 温度感受性培養皿 / 細胞シート / 放射線照射傷害 / ラット |
Research Abstract |
研究代表者今村は、重篤な排尿障害に対して、骨髄由来細胞移植療法により機能的な膀胱の再生を試みている。これまでに、凍結、あるいは、放射線照射によって傷害を与えた膀胱に、骨髄由来細胞を注入移植すると平滑筋層や神経細胞が再生され、排尿障害が改善することを報告した。この細胞注入移植法での欠点は、培養期間中に産生された細胞外基質により単層を形成した細胞を球状の単一細胞として回収し、移植に用いることである。本研究は、温度感受性培養皿を用いて、培養によって形成された単層を維持した細胞シートの作製を試み、さらに、傷害を与えた膀胱に細胞シートを移植することによって、機能的な膀胱が再生されるのかどうか検討した。 本年度は、ラットの大腿骨から、骨髄細胞を採取、初代培養を行い、培養皿に接着伸展した細胞を骨髄由来細胞とし、温度感受性培養皿へ継代培養を行った。継代培養を2日間行い、温度感受性培養皿を十分に低温にすることにより、培養された細胞の単層状態を維持した良質な細胞シート作製に成功した。作製した骨髄由来細胞シートを放射線照射した膀胱の前壁にパッチ移植した。対照群には、無細胞シートを用いた偽手術を行った。細胞シート移植4週間後に、膀胱内圧測定、組織学的解析、および、遺伝子解析を行った。 細胞シート移植群の排尿閾値圧、排尿間隔時間、1回排尿量、および、膀胱容量は、対照群と比較して、有意に増大し、また、残尿量が有意に低下した。組織学的解析において、細胞シート移植群では、対照群と比較して、膀胱平滑筋層、および、神経細胞の有意な増大が認められ、また、繊維化の抑制、アポトーシス細胞数の減少も認めた。さらに、細胞シート移植すると、いくつかの血管、神経、平滑筋再生因子が確認できた。本年度の研究成果から、骨髄由来細胞シートを放射線照射傷害膀胱に移植すると、機能的な膀胱が再生されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、良質な骨髄由来細胞シートの作製、および、放射線照射傷害膀胱へのパッチ移植に成功し、さらには、細胞シート移植による機能的な膀胱の再生を示唆する結果を得た。昨年度から継続してきた良質な骨髄由来細胞シートを作製するために、温度感受性培養皿へのコラーゲンコーティングなどの工夫が成功した。また、シートのパッチ移植に関しては、当初の計画通りに、問題なく遂行できた。このことから、当初の計画よりも研究を大きく進めることができた。 本年度では、細胞シート移植によって、膀胱機能が正常機能レベルまでに回復すること、膀胱組織が再生についても、組織学的解析により示すことができた。次の段階として、細胞シート移植による機能的な膀胱の再生機序について考察が必要である。現在、移植した細胞(シート)の正着を確認できており、さらに、再生を促進したと考えられる、いくつかの血管、神経、平滑筋再生因子を確認した。次年度では、これらの結果をもとに、細胞シート移植による膀胱再生の機序についての考察を進める。 本年度は、当初の計画よりも順調に進み、最終目標を達成に大きく近づいた。本研究の遂行において、順調に進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のひとつの目的に、放射線照射膀胱にさらに欠損を与え、そこに細胞シートを移植するという計画があった。しかし、欠損を与えたモデルに対しては、細胞シート移植群においては問題なく遂行できるが、対照群、つまり、無細胞シート群での遂行が困難であった。欠損を与えた部位は、何かしらの処置を行い、欠損部位を閉じなければならず、細胞シート移植群と正確な対照実験とならないため一時保留とした。そこで、欠損を与える放射線照射膀胱モデルでの細胞シート移植実験から、細胞シート移植による膀胱再生の機序解明にフォーカスを当てることにした。この変更は、将来、本研究を臨床応用するときに求められる、科学的根拠にもとづいた治療効果の予測、安全性に対する特段の配慮という視点で、非常に有用であるものと考えられる。 放射線照射傷害膀胱の組織欠損モデルにおける、細胞シート移植と正確な対照実験できる手段が確立できれば、欠損を与えた放射線照射膀胱モデルを用いて、同様な研究も遂行する。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Implantation of adipose-derived cells reconstructs functional urethral sphincters in rabbit cryo-injured urethra2014
Author(s)
Gautam S S, Imamura T, Ishizuka O, Zhang L, Yamagishi T, Yokoyama H, Minagawa T, Ogawa T, Kurizaki Y, Kato H, Nishizawa O
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Journal Title
Tissue Engineering Part A
Volume: 20
Pages: 1971-1979
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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