2012 Fiscal Year Research-status Report
男性不妊症に対する内分泌療法開発についての基礎研究
Project/Area Number |
24592447
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
白石 晃司 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (00535255)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 無精子症 / 内分泌療法 / ライディッヒ細胞 |
Research Abstract |
非閉塞性無精子症患者(以下、NOA)についてのゴナドトロピン(LHおよびFSH)の日内変動の検討を行っている。現在11名(目標20名)のNOA患者において2時間に1回のパルス状分泌を確かに確認したが、ゴナドトロピンの基礎値が高いため相対的にそれらの標的細胞(SertoliおよびLeydig細胞)に与える刺激は小さくなり、NOA患者においては高ゴナドトロピン状態であっても十分に刺激されていないことが判明した。この結果より高ゴナドトロピン状態においては内分泌療法が無いわけではなく、外因性に高用量のゴナドトロピン製剤(hCG製剤およびリコンビナントFSH製剤)を投与することによりそれらの作用が発揮できるという根拠が得られそうである。 In vitroでLeydig細胞のcell line(MA-10細胞)を用いた実験にてhCG投与によりLeydig細胞からテストステロンのみでなくEGF-like growth factorが分泌されることをELISAにて解析したところ、heparin binding EGF, amphiregulinおよびTGF-αの分泌を確認した。一方、NOA患者から得られた精巣生検サンプルを用いて、内分泌療法(hCG療法)前後の精粗細胞のDNA合成能を評価するためにproliferating cell nuclear antigen (PCNA)による免疫染色を行ったところ、内分泌療法により明らかに精粗細胞におけるPCNAの発現は亢進した。hCGによりLeydig細胞が刺激されテストステロン分泌が亢進するが、精粗細胞のDNA合成についてはテストステロンは関与しないと報告されている。つまりin vitroの実験結果から得られたEGF-like growth factorなどが精粗細胞のDNA合成を促進し、精子形成を促進していると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内分泌療法の適応患者は限られているが本治療法を求め遠方からの受診者が増加し、24時間ゴナドトロピン分泌の解析については順調に症例数が増えている。In vitroの実験については大学院生の休学等にてやや遅れているが、EGF-like growth factorの分泌の証明など予想通りの結果が得られ着実に進捗していると考えている。また精粗細胞におけるPCNA発現の検討については比較的短時間に結果が得られ、かつin vitroの実験結果を支持できるデータとなりえたため、今後hCGによるLeydig細胞刺激による精子形成への影響という観点から発展性のある結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載したように、NOA患者における24時間ゴナドトロピン分泌について症例数を増やし解析を行う。In vitroの実験については大学院生の協力も得て、hCG刺激によるLeydig細胞からのEGF-like growth factor分泌の細胞内シグナルトランスダクションについてインヒビターやdominant-negative mutantおよびsiRNAを用いた検討を継続する予定である。さらに内分泌療法に伴う精粗細胞におけるPCNAの発現と精子形成という観点からヒト精巣生検サンプルを用いた検討を免疫組織染色を主に行っていく予定である。具体的には精巣内アンドロゲンレセプターやEGFレセプターの発現の検討、精巣内テストステロン濃度の測定(精巣内精子採取術時に得られた精巣内fluidを用いる)などを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定であった遠心器(45万円)およびインキュベーター(11万円)については実験の推進上、次年度の購入に変更したことから未使用額が生じた。 Leydig細胞を用いたin vitroの実験においては、遺伝子導入薬剤(リポフェクタミン)が研究室の在庫の薬剤としてストックがあったたことと、特に高額であるELISAを用いた実験の検討が1回のみであったので未使用額が生じた。次年度はELISAを用いた実験を繰り返すこと(20万円)や新規にリポフェクタミンを購入する必要があるので(16万円)繰り越し分を次年度に使用する予定である。 更に免疫染色も実験計画の大きなウェイトを占めるため、抗体の購入額が増える予定である。また精巣内fluidの測定結果によりテストステロン測定キットのみならず他のステロイドホルモン測定キットを購入する可能性がある。 またデータの公表に際し、学会発表や論文投稿も行うため、これらの諸費用として使用する予定である。
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