2012 Fiscal Year Research-status Report
腎移植拒絶反応におけるHSP90の関与についての研究
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24592448
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
田中 俊明 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50398327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 保明 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80322329)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 免疫制御・移植免疫 / 腎移植 |
Research Abstract |
腎移植患者16例の患者血清90検体を収集した。急性抗体関連型拒絶反応を5例で発症しており、発症時の血清HSP90濃度は、拒絶反応非発症時に比べ、有意に高値であった。またこれらの症例では、拒絶反応治療後に血清HSP90濃度が減少する傾向を示した。血清HSP90濃度が抗体関連型拒絶反応の発症に関与している可能性が示唆された。 次に、ヒト血管内皮細胞とヒトIgGを用いたin vitro同種抗体関連型拒絶反応モデルを作成した。血管内皮細胞のHLAタイピングをおこない、これに特異的な抗HLA抗体陽性の患者血清よりIgGを抽出した。このIgGの結合により、血管内皮細胞の増殖は促進することが認められ、モデルが適切であることを確認した。このモデルにおいて、細胞内HSP90が有意に誘導されることを確認した。また、HSP90阻害剤であるgeldanamycin誘導体・17DMAGの添加により、細胞増殖が抑制されることを確認した。抗HLA IgGの結合による血管内皮細胞の増殖促進には、HSP90が関与することが明らかとなった。このことは平成25年3月に開催された欧州泌尿器科会議にて発表した。 また血管内皮細胞に抗HLA IgGおよび補体を添加し、補体依存性細胞溶解をおこない、培養上清中のHSP90濃度を測定した。結果、抗HLA IgG結合による補体依存性細胞融解では、培養上清中のHSP90濃度が上昇していた。このことは、急性抗体関連型急性拒絶反応発症腎移植患者血清においてHSP90濃度が上昇することの機序の一つと考えられた。また、HSP90阻害剤17DMAGの添加により、補体依存性細胞融解が抑制された。 以上のことから、抗体関連型拒絶反応の発症にはHSP90が重要な役割を持っており、これを阻害することで発症・進行を抑制する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者検体の収集がスムーズにおこなえ、アッセイでも想定された結果が得られた。また実験モデルの作成も期待した通りの結果が得られ、これを元に研究を進めることが出来た。研究器具の準備において資金面で苦慮することがなかったため、効率よく実験をおこなうことが可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitro同種抗体関連型拒絶反応モデルにおいて、細胞増殖シグナルの変化、eNOSの変化を確認する。 また、マウス組織・臓器移植モデルにおいて、血清および免疫細胞におけるHSP90の変化を評価し、またHSP90阻害剤の拒絶反応抑制効果を検証する。さらに、高感作マウス組織・臓器移植モデルを作成し、HSP90阻害剤の抗体関連型拒絶反応抑制効果を検証する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
in vitroモデルでの実験においては、培養液、抗体などの試薬を購入する。マウス移植実験では、マウス、手術器具、試薬を購入する。また、研究成果の発表および実験方法・手技の講習のため、米国移植学会に参加する。 平成24年度は、購入したマスターサイクラーの納入価が見込みより安価であったこと、旅費において割引航空券を使用したことから、253,596円の残高が生じた。
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