2014 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠高血圧症候群における胎盤の脂質代謝バランスとその意義の解明
Project/Area Number |
24592469
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
巽 啓司 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (10324633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 英治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10544950)
小西 郁生 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90192062)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 妊娠高血圧腎症 / statin / 酸化ストレス / Nrf2 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠高血圧腎症(Preeclampsia=PE)は妊娠20週以降に生じる高血圧と蛋白尿を主徴とする疾患で、全妊娠の2-8%に合併し、周産期領域における母体の主要な死亡原因となる。その原因としては、母体血中の酸化ストレスや炎症が関与していると推測されている。 また、PEの母体においては正常妊娠にもまして母体の血中脂質が高値となることが知られている。近年高脂血症治療薬であるpravastatinによって、実験動物のPE様症状を改善したことが報告されている(Kumasawa et al. 2011)が、その作用機序の詳細については明らかでない。 そこで本研究では、PEに対するstatinの治療的役割を模索することを目的とした。 PEの胎盤においては、抗酸化遺伝子群の発現を統一的に制御している重要な転写因子nuclear factor erythroid 2-related factor2(Nrf2)活性が低下していた。ヒト由来絨毛癌細胞株を用いた実験では、低酸素環境下でNrf2活性が低下するが、simvastatinによりNrf2活性が増加した。Nrf2をknock downした状態で酸化ストレスを加えると、抗酸化遺伝子群の発現は低下したが、simvastatinの添加によりそれらの発現は増加した。また、ヒト不死化絨毛細胞株を用いた実験において、酸化ストレスを加えると活性酸素種(ROS)の増加が認められたが、simvastatinにより減弱した。これらの結果から、以下のことが示唆された。①Nrf2活性抑制する因子に関しては、今日までほとんど知られていないが、低酸素はNrf2活性の重要な抑制性制御因子の1つである。②simvastatinは絨毛細胞において、Nrf2シグナルの活性を通して酸化ストレスを阻害し、preeclampsiaに対するstatinの潜在的な治療的役割を担う。
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