2014 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内膜症による骨盤内炎症が卵巣予備能に及ぼす影響に関する研究
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24592475
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
北島 道夫 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (50380845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
カーン カレク 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60336162)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 子宮内膜症 / 卵巣チョコレート嚢胞 / 卵巣予備能 / 妊孕性温存 / 卵巣皮質組織 / 卵胞発育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,卵巣チョコレート嚢胞に対して一期的あるいは薬物療法を併用して二期的腹腔鏡下手術を行った例を対象に,骨盤内炎症と卵巣予備能との関連を解析した.子宮内膜症では有意に 腹水中IL-6濃度が高く,それらはプロゲスチン療法により有意に低下した.血中AMHは術後3-6ヶ月まで一旦有意に低下し,その後12ヶ月ごろまでに一定の回復を示す傾向が認められた.卵巣組織でのAMHの発現は一次卵胞から前胞状卵胞の顆粒膜細胞で最も強い発現が認められた.これらの知見は,手術による炎症や組織ストレスにより,AMHの主な産生源である初期発育卵胞が一過性に消失したのち,原始卵胞の選択・発育機構が再構築されることを示唆している.また,AMHの回復と子宮内膜症の重症度に関連が認められ,骨盤内炎症が強い例では卵巣予備能が低下し,さらに手術操作での原始卵胞の消失が著しく,術後に卵巣機能が低下することが推察された. 本年度および前年度までに得られた本研究での知見をまとめる.卵巣の表層性子宮内膜症では,マクロファージの浸潤と炎症性サイトカイン産生により,周囲正常皮質の炎症・線維化ならびに表層上皮の陥入と化生変化を促進し,チョコレート嚢胞の発生・進展とともに原始卵胞の恒常性維持機構が破綻する.その機序として,原始卵胞のリクルートメントと初期発育卵胞の閉鎖が同時に亢進して卵巣予備能の低下が進行する病態(burn-out)を明らかにした.子宮内膜症と手術侵襲は原始卵胞ならびに初期卵胞の発育調節に影響を与え,骨盤内炎症の重症度は術後の卵巣予備能の回復に影響を与える.これらの知見は,骨盤での局所炎症が女性の生殖機能維持に持続的な影響を与えており,医療的な介入により卵巣予備能の低下を予防できる可能性を示唆している.一方で,炎症が原始卵胞の維持にどのような分子生物学的機序により関与しているかは不明な点が多く,今後の更なる解析が必要である.
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