2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592477
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
古川 誠志 宮崎大学, 医学部, 准教授 (10347073)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 周産期脳障害 / 低酸素虚血 / ラット / 迷走神経 / 炎症 |
Research Abstract |
脳内アセチルコリン受容体遮断による交感神経優位な状況での易脳障害性を検証することを主な目標とした;7生日のWistarラットを用い、左側の頸動脈を結紮した後に33℃の環境下で1時間の8%低酸素負荷を行う実験モデル(Levine-Riceモデル)を作成した。このモデルでは通常1時間の低酸素負荷で通常脳障害は観察されない。神経遮断薬にはメカミラミン(非選択的ニコチン受容体遮断; 5 ,10mg/kg、皮下注)、メチルリカコニチン(α7選択的ニコチン受容体遮断;5, 10mg/kg、皮下注)、アトロピン(ムスカリン受容体遮断;10mg/kg、皮下注)を使用した。実験から7日目に脳障害の程度を観察した。また酸素負荷後のマイクログリア集簇が迷走神経刺激薬であるカルバコール(0.1mg/kg、皮下注)投与で抑制されるかどうかも検討した。 結果:重篤な障害の程度は対照群では10%以下だった。一方、メカミラミンとメチルリカコニチン投与群では軽度の低酸素負荷にも関わらず量依存性に重篤な障害を残した(30~40%, p=0.02)。特にメカミラミン投与群は障害が顕著だった(70%が重篤な障害、p<0.01)。アトロピン投与群での障害は軽度だった。2時間の低酸素負荷では脳内マイクログリア集簇はカルバコール投与で対照群の1/6に減少した。 考察:先に行った迷走神経刺激実験とも併せて、迷走神経系の脳保護作用が示された。マイクログリアの集簇を抑制することから脳内迷走神経系の炎症反応抑制への関与が示唆された。(関連業績:Furukawa S, et al. Activation of acetylcholine receptors and microglia in hypoxic-ischemic brain damage in newborn rats. Brain Dev. 2012 Nov 7.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実験課題1は脳内アセチルコリン受容体遮断による交感神経優位な状況での易脳障害性を検証することだった。当初の予定通り、各種迷走神経受容体阻害薬で脳障害が増悪する事が実証できた。特にメカミラミン(非選択的ニコチン受容体遮断)投与群は皮質において障害が顕著だった(70%が重篤な障害、p<0.01)。一方アトロピン投与での皮質障害は軽度で、海馬のCA1領域のみに重篤な障害を残した(40%, p=0.04)。アセチルコリン受容体の分布は大脳皮質や海馬領域では異なるが、各部位で遮断薬に対応した脳障害の程度の差が認められ、感受性の違いも証明できた。 実験課題2は迷走神経刺激で低酸素虚血後の炎症抑制効果の実証をおこなうことだった。カルバコール投与で低酸素虚血後のマイクログリアの集簇抑制に関する知見を得ながら組織サイトカインの測定を行えなかった点は目標達成できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
迷走神経系の炎症反応抑制効果の検討;炎症抑制効果の実証は脳内ミクログリアや脳組織のTNFαの発現で確認し、カルバコールやその他のアセチルコリン受容体刺激薬投与下の炎症抑制効果を検証する。 副交感神経系薬物の脳障害治療の応用についての検討:中枢神経への移行性と胎盤通過性の良いアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるガランタミン(Galantamine)を用い、その脳障害抑制効果を検証する。また薬剤の循環に及ぼす影響も検討する。
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