2012 Fiscal Year Research-status Report
着床期子宮内膜血流量の新規評価法の確立及び不育症の原因解明と治療効果判定への応用
Project/Area Number |
24592479
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
尾崎 康彦 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50254280)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 不育症 / 習慣流産 / 着床 / 抗リン脂質抗体症候群 / プロテオリシス / カルパイン / カテプシン |
Research Abstract |
今年度は妊娠初期脱落膜におけるアスパラギン酸プロテアーゼであるcathepsin E (Cat E) にフォーカスし研究を行った。Cat Eは免疫細胞に発現し腫瘍の増殖や転移を抑制することが報告されている。生殖免疫と腫瘍免疫との類似性を考慮し反復流産病態におけるCat Eの役割を検討した。 臨床検体は全て患者同意のもと実験に供した。Cat Eノックアウト(KO)マウスの平均産仔数をwild typeと比較した。cat E特異的消光性蛍光基質を用いたCat E活性測定法を確立し、反復流産患者(n = 22)の妊娠初期頸管粘液中Cat E活性とその後の妊娠帰結を検討した。流産手術時に得られた脱落膜組織におけるCat Eの存在をWestern Blot法 (以下WB法)で確認し、反復流産患者(n = 73)と対照群(n = 42)とで半定量比較した。脱落膜組織におけるCat Eの存在を免疫組織染色法(酵素法)で確認し、局在を共焦点レーザー顕微鏡及び蛍光顕微鏡を用いた多重免疫組織染色法で検討した。脱落膜組織よりマクロファージ(dMφ)を抽出しIFN-γ及びLPSと共培養しCat Eの発現をWB法で検討した(n = 5)。 Cat E KOマウスの産仔数はwild typeに比し有意に減少していた。妊娠初期頸管粘液中Cat E活性は生児獲得群に対し流産群で有意に低値であった。脱落膜中のCat Eの発現量は反復流産患者では有意に低値であった。免疫組織染色法にて脱落膜組織にCat Eの染色性を認め、Cat Eは脱落膜中のCD14及びCD68陽性細胞の細胞質に局在していた。IFN-γ及びLPS刺激によりdMφ中Cat Eの発現量は有意に抑制された。 妊娠初期ヒト子宮内にはCat Eが存在し、妊娠初期dMφのCat E産生低下が反復流産病態に重要な役割をしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度に計画した研究項目において基礎的実験に比較し、以下の臨床データの収集に遅れが認められているため、平成25年度以降にエントリ-期間を延長する。 1、不妊症・不育症患者の非妊娠時子宮内膜組織血流量(ETBF)の測定:(1)ETBF測定:インフォームドコンセントの得られた不妊症患者及び2回以上の流産歴を持つ反復流産患者を対象群に、流産歴のない健常女性を対照群とし比較検討する。基礎体温高温期5-9日目に子宮鏡下にレーザー血流計(OMEGA FLOW FLO-C1)にてETBF(子宮底、前後左右壁)を測定する。同時に採取した組織からRNA, DNA及び蛋白を抽出し保存する。非妊娠時の抗血液凝固療法(低容量アスピリンやヘパリン)や血流改善作用を有するVitamin E、L-Arginine、Sidenafil citrate(Viagra)の投与例においては、治療前後で同様の測定及び以下の検討を行う。(2)臨床検討項目:2D超音波断層法、子宮動脈血管抵抗(PI)、子宮内膜厚(EM)、子宮卵管造影法(HSG)、MRI検査、血中ホルモン値(E2, Progesterone, LH, PRL)や子宮内膜組織日付診との相関を検討する。子宮内膜体積測定はリアルタイム4D超音波Voluson 730 expertを用いたVirtual Organ Computer-aided Analysis (VOCAL)を使用する。(3)実験方法:以下の方法を用いて代表的なシステインプロテアーゼであるカルパインファミリー、カルパスタチンとカルパインの剪定分解基質の蛋白の発現を比較検討する。 2、一般臨床検査項目との比較検討:不妊症・不育症患者の臨床検査項目(子宮形態学的検査、内分泌学的検査、免疫学的検査、血液凝固学的検査、自己抗体検査等)と、上記研究計画1、2の結果との相関を比較検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究計画を症例数を増やし実験を継続するとともに、有意差の認められたプロテアーゼ及び関連分子(特にカテプシン、カルパイン、カルパスタチン及びそれらのプロテアーゼが剪定分解する基質)に焦点を絞り以下の実験を計画する。 1、子宮内膜間質細胞の脱落膜化培養実験:インフォームドコンセントの元に手術にて摘出された子宮内膜組織から接着性を利用し子宮内膜間質細胞を純化分離し培養実験に用いる。プロゲステロンを添加し培養上清中のプロラクチン産生能を脱落膜化の指標とする。低酸素培養やカルシウムイオノフォア等によりカルパインを活性化させ種々のカルパインインヒビター(calpain inhibitor-I, IIやZ-Leu-Leu-H等)を添加することで脱落膜化現象へのカルパインの関与を以下の方法で検討する。またASAやヘパリン添加によりその脱落化やカルパインへの作用を検討する。(1)免疫細胞染色法、(2)SDS-PAGE, W-B法、(3)ELISA法、(4)プロテアーゼ活性測定法 2、絨毛細胞(Extravillous trophoblast:EVT)のinvasion assay:流産時にインフォームドコンセントの元に得られた子宮内組織から純化したEVTやcell line (HTR8/SV40, JEG3等)を用いMatrigel invasion assayで絨毛細胞の子宮内膜への浸潤機構(着床モデル)へのカルパインの関与及びASAやヘパリンの作用を検討する。カルパイン及び関連物質の動態は上記計画1に準じ検討する。 3、臨床検査項目として子宮鏡を用いたレーザー血流計による高温期子宮内膜血流量の測定を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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Research Products
(4 results)