2013 Fiscal Year Research-status Report
着床期子宮内膜血流量の新規評価法の確立及び不育症の原因解明と治療効果判定への応用
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24592479
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
尾崎 康彦 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50254280)
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Keywords | 不育症 / 習慣流産 / 胎盤 / 抗リン脂質抗体症候群 / 子宮内胎児発育遅延 / カルパイン / カルパスタチン / 妊娠高血圧症候群 |
Research Abstract |
本年度は不育症のひとつである子宮内胎児発育遅延(FGR)の胎盤におけるカルパインの存在及び病態への関与を検討した。当科にて陣痛発来前に帝王切開術を施行されたFGR症例(17例)と対照(28例)の胎盤を患者同意のもと実験に供した。 免疫組織化学染色法にてヒト胎盤栄養膜細胞に不活性前駆体型及び活性型のμ- / m-カルパイン、カルパイン6及びカルパスタチン抗体の染色性が認められた。不活性前駆体型μ- / m-カルパインは細胞質に存在し、活性型μ- / m-カルパインは細胞質及び細胞膜近傍に、カルパスタチンは細胞質に局在していた。SDS-PAGE, W-B法にて不活性前駆体型μ-カルパイン、 不活性前駆体型m-カルパインはFGR胎盤で有意に高値であった(p<0.01, p<0.05)。カルパイン6及びカルパスタチンはFGR胎盤で有意に低値であった(p<0.05)。またFGR胎盤では不活性前駆体型(80kDa)カルパインの発現が有意に高値であり(p<0.01)、活性型(76kDa)カルパインの発現は有意に低値であった(p<0.05)。FGR群において、胎盤に梗塞を認めた症例では不活性前駆体型m-カルパインの発現が有意に低値であり(p<0.05)、PIH(妊娠高血圧症候群)合併例ではカルパスタチンの発現が有意に低値であった(p<0.01)。 ヒト胎盤において各種カルパイン、カルパスタチンの染色性が認められ、 カルパインの活性化状態による細胞内局在の変化が示唆された。FGR胎盤においてはカルパイン (特にμ-カルパイン)の活性化が抑制されており、低酸素状態におけるカルパイン活性化による細胞障害とは別の機構がFGR病態に関与している可能性が示唆された。また胎盤組織特異的カルパイン6がFGR病態において何らかの働きをしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度に計画した研究項目において臨床データの収集に遅延が認められているため、平成26年度以降に臨床被験者のエントリ-期間を延長する。 1、不妊症・不育症患者の非妊娠時子宮内膜組織血流量(ETBF)の測定:(1)ETBF測定:インフォームドコンセントの得られた不妊症患者及び2回以上の流産歴を持つ反復流産患者を対象群に、流産歴のない健常女性を対照群とし比較検討する。基礎体温高温期5-9日目に子宮鏡下にレーザー血流計(OMEGA FLOW FLO-C1)にてETBF(子宮底、前後左右壁)を測定する。同時に採取した組織からRNA,DNA及び蛋白を抽出し保存する。非妊娠時の抗血液凝固療法(低容量アスピリンやヘパリン)や血流改善作用を有するVitamin E、L-Arginine、Sidenafil citrate(Viagra)の投与例においては、治療前後で同様の測定及び以下の検討を行う。(2)臨床検討項目:2D超音波断層法、子宮動脈血管抵抗(PI)、子宮内膜厚(EM)、子宮卵管造影法(HSG)、MRI検査、血中ホルモン値(E2, Progesterone,LH, PRL)や子宮内膜組織日付診との相関を検討する。子宮内膜体積測定はリアルタイム4D超音波Voluson 730 expertを用いたVirtual Organ Computer-aided Analysis (VOCAL)を使用する。(3)実験方法:以下の方法を用いて代表的なシステインプロテアーゼであるカルパインファミリー、カルパスタチンとカルパインの剪定分解基質の蛋白の発現を比較検討する。 2、一般臨床検査項目との比較検討:不妊症・不育症患者の臨床検査項目(子宮形態学的検査、内分泌学的検査、免疫学的検査、血液凝固学的検査、自己抗体検査等)と、上記研究計画1、2の結果との相関を比較検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画を症例数を増やし実験を継続するとともに、有意差の認められたプロテアーゼ及び関連分子(特にカテプシン、カルパイン、カルパスタチン及びそれらのプロテアーゼが剪定分解する基質)に焦点を絞り以下の実験を計画する。 1、子宮内膜間質細胞の脱落膜化培養実験:インフォームドコンセントの元に手術にて摘出された子宮内膜組織から接着性を利用し子宮内膜間質細胞を純化分離し培養実験に用いる。プロゲステロンを添加し培養上清中のプロラクチン産生能を脱落膜化の指標とする。低酸素培養やカルシウムイオノフォア等によりカルパインを活性化させ種々のカルパインインヒビター(calpain inhibitor-I, IIやZ-Leu-Leu-H等)を添加することで脱落膜化現象へのカルパインの関与を以下の方法で検討する。またASAやヘパリン添加によりその脱落化やカルパインへの作用を検討する。(1)免疫細胞染色法、(2)SDS-PAGE, W-B法、(3)ELISA法、(4)プロテアーゼ活性測定法 2、絨毛細胞(Extravillous trophoblast:EVT)のinvasion assay:流産時にインフォームドコンセントの元に得られた子宮内組織から純化したEVTやcell line (HTR8/SV40, JEG3等)を用いMatrigel invasion assayで絨毛細胞の子宮内膜への浸潤機構(着床モデル)へのカルパインの関与及びASAやヘパリンの作用を検討する。カルパイン及び関連物質の動態は上記計画1に準じ検討する。 3、臨床検査項目として子宮鏡を用いたレーザー血流計による高温期子宮内膜血流量の測定を確立する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Repression of cathepsin E expression increases the risk of mammary carcinogenesis and links to poor prognosis in breast cancer2014
Author(s)
Kawakubo T, Yasukochi A, Toyama T, Takahashi S, Okamoto K, Tsukuba T, Nakamura S, Ozaki Y, Nishigaki K, Yamashita H, Yamamoto K
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Journal Title
Carcinogenesis
Volume: 35
Pages: 714-726
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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