2012 Fiscal Year Research-status Report
ポリコーム複合体による卵巣癌幹細胞のエピジェネティクな遺伝子制御機構の解明
Project/Area Number |
24592502
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
須藤 毅 山形大学, 医学部, 助教 (70466605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊文 山形大学, 医学部, 講師 (20302292)
倉智 博久 山形大学, 医学部, 教授 (40153366)
太田 剛 山形大学, 医学部, 助教 (50375341)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 癌幹細胞 / ポリコーム複合体 / エピジェネティク / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
当初、我々の実験計画では、ヒト卵巣癌幹細胞の樹立は卵巣癌細胞をstem cell culture medium (Cancer Res 2008)を用いて培養することで樹立する予定であった。現在我々はハニカム膜(honey-comb film)を用いて卵巣癌幹細胞の樹立が可能であるか検討している。ハニカム膜とは、均一な多孔性膜であり、様々な生体親和性素材から合成することが可能である(Hollister SJ, et al. Nat. Mater 2005)。ハニカム膜は、3D porous scaffoldとも言われ、細胞が接着、増殖していく上での足場となり、さらに孔径を変えることで神経幹細胞が、神経細胞に分化すること、または幹細胞の性質を保持したまま増殖することが報告されている。 漿液性腺癌由来細胞株(SKOV3), 明細胞腺癌由来細胞株(TOV21G, RMG1), 粘液性腺癌由来細胞株(Caov3), 未分化癌由来細胞株(A2780, A2780CP)をハニカム膜上で培養したところ、統計学的に有意に増殖抑制効果を示したのは、粘液性腺癌由来細胞株Caov3のみであった。その他の細胞株は有意な増殖抑制効果は示さなかったが、抑制する傾向にあり、卵巣癌の組織型によって、ハニカム膜の細胞増殖抑制効果が異なることがわかった。幹細胞がslow growthであることを考えるとこのハニカム膜上に発育したCaov3が癌幹細胞の性質を持っている可能性があると予測される。さらに培養液中に浮遊した細胞は、幹細胞の特徴ともいえるsphereを形成しており、培養液中の細胞も癌幹細胞の性質を持つ可能性があると考えられた。今後これらの細胞を分離し、幹細胞マーカーの発現とポリコーム複合体(PcG)との関連を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、本研究ではヒト卵巣癌幹細胞の樹立は卵巣癌細胞をstem cell culture medium (Cancer Res 2008)を用いて培養することで樹立する予定であったが、この樹立方法は、非常に時間がかかり、困難であった。現在我々は、ハニカム膜(honey-comb film)を用いて卵巣癌幹細胞の樹立を目指している。 ハニカム膜上で粘液性腺癌由来卵巣癌細胞株であるCaov3を培養すると、増殖が抑制され、さらにその培養液中の浮遊細胞がsphereを形成することから、ハニカム膜上の細胞と浮遊液中の細胞とも癌幹細胞の性質を持っている可能性がある。癌幹細胞の性質を持っているか否かについては、幹細胞マーカー(Nanog, Oct4, Sox-2, Klf4, c-Myc, BMI1, nestin, ABCG2)の発現と形態学的な変化で検討する予定である。この両細胞より癌幹細胞が樹立できれば、ポリコーム複合体(PcG)の発現と癌幹細胞における機能解析を行うことは比較的容易であり、おおむね順調に進展していると自己評価する根拠である。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で卵巣癌細胞株Caov3をハニカム膜上で培養すると、ハニカム膜内に発育した細胞の増殖が抑制されること、培養液中の細胞がsphereを形成することがわかった。そこでこの両細胞を用いて次の実験を計画している。1. 癌幹細胞の性質を持つか否かの検討:両細胞における幹細胞マーカー(Nanog, Oct4, Sox-2, Klf4, c-Myc, BMI1, nestin, ABCG2)の発現をreal-time PCR法とimmunoblotting法で検討する。さらに形態学的変化を電子顕微鏡で検討し、さらにactinまたはphospho-FAK(focal-adhesion kinase)抗体を用いて、蛍光免疫染色法で細胞骨格、細胞接着の変化を検討する。2. 卵巣癌幹細胞におけるPcGの発現の検討:ハニカム膜を用いて樹立した卵巣癌幹細胞におけるPcGの発現をimmunoblotting, real-time PCR法にて検討する。PcGはPolycomb repressive complex 1(PRC1)とPRC2からなり、PRC1の重要なコンポーネントであるBMI1とPRC2の重要なコンポーネントである Enhance of Zeste 2(EZH2), Suppressor of Zeste 12 (SUZ12)の発現を検討する。3.ヒト卵巣癌幹細胞におけるPcGの機能解析、薬剤耐性化機序への関与についての検討:樹立した卵巣癌幹細胞を用いて、卵巣癌化学療法の1st lineのレジメンであるシスプラチンとタキソールを投与し、細胞増殖とアポトーシスに対する影響を検討する。さらに卵巣癌幹細胞にBMI1, EZH2, SUZ12のsiRNAを導入し、上記①、②の実験を行い、の薬剤耐性が解除されるか否かを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、細胞培養用の培養液やディッシュ類、immunoblottingによる蛋白発現やPCRによる遺伝子発現の解析のための抗体や測定用キット購入に使用する。特定の遺伝子をknockdownするsiRNA(1遺伝子あたり、60,000円)の購入にも使用する。さらに直接的な研究経費以外に、情報収集、あるいは各国の研究者との交流、さらには、本課題の研究成果を発表するためにも、学会出席は必須であり、米国癌治療学会、米国癌学会、日本がん治療学会、日本癌学会、婦人科腫瘍学会などのがん関連学会、さらには、日本産科婦人科学会などの産科婦人科学会への出席が必要であり、これらの経費に研究費を使用する予定である。
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