2013 Fiscal Year Research-status Report
ポリコーム複合体による卵巣癌幹細胞のエピジェネティクな遺伝子制御機構の解明
Project/Area Number |
24592502
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
須藤 毅 山形大学, 医学部, 助教 (70466605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊文 山形大学, 医学部, 講師 (20302292)
倉智 博久 山形大学, 医学部, 教授 (40153366)
太田 剛 山形大学, 医学部, 助教 (50375341)
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Keywords | 卵巣癌 / 癌幹細胞 / ポリコーム複合体 / エピジェネティク / ハニカム膜 |
Research Abstract |
昨年度から引き続き、均一な多孔性膜であるハニカム膜 (honey-comb film)を用いて、卵巣癌幹細胞の樹立を行っている。ハニカム膜は様々な生体素材から合成することが可能であり、また孔径により細胞に対する作用が異なる。そのため癌幹細胞樹立に最適な生体素材と孔径を確立させることが重要となる。今年度我々は、耐熱性・伸縮性に優れたPU (polyurethane)を用いて様々な孔径のハニカム膜を21枚作成し、実験を行った。4種類の卵巣癌細胞株を用いた(漿液性腺癌由来細胞株(SKOV3), 明細胞腺癌由来細胞株(TOV21G), 粘液性腺癌由来細胞株(Caov3), 未分化癌由来細胞株(A2780))。12 well plateの組織培養プレート(TC; tissue culture)とプレート上にコントロール膜(平膜)またはハニカム膜を貼付し、各細胞(1×104cells/cm2)をまき、FBS(+)の細胞培養液内で48時間培養後、DAPI核染色を行い、蛍光顕微鏡100倍率でランダムに5視野をとり、細胞数をカウントした。組織培養プレート、コントロール膜上で培養した細胞数とハニカム膜上で培養した細胞数を比較し、増殖抑制効果を検討した。SKOV3は21枚中8枚の膜で、Caov3は21枚中10枚の膜で、TOV21は21枚中20枚の膜で、A2780は21枚中12枚の膜でTCと比較して有意に増殖抑制効果を示した。現在、細胞増殖を抑制したハニカム膜の表面観察と膜断面観察を電子顕微鏡で行い、多孔構造(孔径、規則性、膜厚、空効率)と各卵巣癌細胞の増殖抑制率の比較を行っている。さらに増殖を抑制したハニカム膜上で培養した細胞が、幹細胞の特徴ともいえるsphereを形成するか、また幹細胞マーカーの発現とポリコーム複合体(PcG)との関連を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PU素材で作成したハニカム膜は、PCL(Poly(ε-caprolactone))素材で作成したハニカム膜より、卵巣癌細胞における増殖抑制効果が高いことを見出した。この増殖抑制効果は、これまでのpreliminaryなデータでは、アポトーシスの誘導ではなく、細胞周期の遅延が影響しているのではないかと予測している。幹細胞の増殖速度が緩徐であることを考えると、ハニカム膜による癌幹細胞の樹立の可能性が示唆される。しかしながら現在まで幹細胞に特徴的なsphere形成などの形態的な変化や幹細胞マーカー(Nanog, Oct4, Sox-2, Klf4, c-Myc, BMI1, nestin, ABCG2)の発現、幹細胞の自己複製能(腫瘍産生能)については検討中の段階であり、本研究の目的である癌幹細胞におけるエピジェネティクな制御を行うポリコーム複合体(PcG; Polycomb Group)の関連についての検討には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
U素材で作成したハニカム膜は、卵巣癌細胞における増殖抑制効果が高いことが明らかになった。この細胞抑制効果のメカニズムを検討するため次の実験を行う。最も増殖抑制効果が高いハニカム膜と組織培養プレートで培養した細胞におけるアポトーシス、細胞接着、細胞外マトリックス、細胞周期に関連した遺伝子の発現をマイクロアレイで網羅的に解析し、ハニカム膜の癌細胞増殖抑制機序を検討する。 癌幹細胞は増殖速度が緩徐であり、sphereを形成するという特徴を持つ。そのためハニカム膜の増殖抑制実験で細胞増殖が最も抑制された細胞株を走査電子顕微鏡で観察し、sphereの形成の有無をみる。sphereの形成を認めた細胞を回収し、幹細胞マーカー(Nanog, Oct3/4, SOX2, Nestin)の発現とsphere形成細胞をマウスに注入し、腫瘍産生能を検討し、幹細胞性質を持ちうるか評価する。当初、本研究ではヒト卵巣癌幹細胞の樹立は卵巣癌細胞をstem cell culture medium (Cancer Res 2008)を用いて培養することで樹立する予定であった。この樹立方法も現在確立されつつあるので、ハニカム膜を用いた卵巣癌幹細胞の樹立と平行して実験を行う予定である。 卵巣癌幹細胞樹立後、PcG関連遺伝子であるPolycomb repressive complex 1(PRC1)とPRC2の癌幹細胞における発現を検討する。
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